2020年12月26日土曜日

土曜の牛の日第0回「牛の文学」

 今年も残りわずかとなりました。テルヤです。

今年最後の土曜なので、第0回の「土曜の牛の日」を、ノープランではじめることにします。


来年からは何をやろうかなと考えて、来年の干支は丑なので(いつから干支にこだわりだしたのかしらん)、学生の頃に一度友人たちと読書会を起ち上げたときの名前「牛の文学」を思い出し、やっぱりこの名前でなにかやりたい気が持ち上がってきたのです。

それから、「土用の丑」という言葉があるので、これは夏目漱石の「木曜会」のように、土曜を何か書く日と決めて「土曜の牛の日」とすることにした。

そうすると今日は今年最後の土曜なので、第0回、というわけです。


さてこの土曜の牛の日になにをするか、というまえに、今年は何をしたか。今年は、短歌と俳句と、短歌の題詠を、毎日作ったくらいだ。あと、ウイルスの脅威に言葉で立ち向かうべく、変則的なルールの連句(ふらくた連句、ふらくた連枝)をおこなったりした。

今年は。

かつて友人とはじめた「牛の文学」は、ただの小説の読書会で、数回しか実際はやらなかった。大きな主語だなあと思うよね。牛の文学。文学って、いまもあるのだろうか。

ひとまず、短歌を作ろう。7首連作を作ろうと思っている。それから、短詩型表現についての本も読んで感想が書けるとよいなと思う。これくらいかな。

書いてみるとたしかにノープランだな。続くんかいな。


  七首連作「牛の文学」

文学は牛のごとくに、ちかよれば近寄りがたきよだれのひかり

スプーンをよだれのようにカスピ海ヨーグルトつーつーつと垂れて

ヨーグルトが菌で出来てるなんていう既成事実で生きて腸まで

起きるたびアメーバ状で始まって会社に着くころまでに人間

理不尽ははたらく僕にちくちくと胸ポケットにウニ棲むように

帰り道をパトカーが通り過ぎてゆく手錠かけられうつむく誰か

差し出した手首に手錠、グーのまま、それは祈りのかたちの手前


2020年9月12日土曜日

2017年06月の自選と雑感。

久しぶりに自分の短歌をまとめる作業を再開した。といっても、まだ3年前のあたりの歌をふらふらさまよっている。

この2017年6月は、だいたい10日ほどかけて、不自由律短歌というあそびをやった時期だった。
これは単純に、57577の韻律が、アプリオリ(生得的)に心地よい、必然的なものではないよ、という基本的な考えを試してみた体験だった、と説明できるだろう。

しかし同時に、デファクトスタンダード(業界標準)であるこの韻律は、とても気楽で簡単なものだという再発見ができた体験でもあったし、歴史を経ていることで、とても技巧が整備された形式であることもわかった。

アプリオリな韻律を持っていない人こそ、短歌は可能なのかもしれない。

詩人は、自分の韻律を見つけ出さなければならない。が、定型詩人は、自分の韻律がないから定型詩である人と、自分の韻律が定型詩と同じだった、という場合の、2種類があることになる。

しかしそもそも、アプリオリな韻律は、存在するのだろうか。

たとえば現在のジェンダー論では、こころの性という言葉があって、こころに性があるというのが前提の事実として語られているが、こころにまで性を設定することは、ジェンダー論にとって将来的に本当によいことなのだろうか、と私は考えたりしている。

がそれは置いといて、人は、アプリオリに、韻律をもっているのだろうか。

それを持っているのが詩人だ、という答えはあるだろう。そしたら、持っていないのは、詩作人、かもしれない。

私はどうだろうか。私は、詩人と思ったことはなくて、散文家と規定したいと考えていた。しかし現在では散文家も名乗れそうにはない。

かつてはある程度短歌作品を作って、それなりに評価されたならば、歌人と自称してもよいのではないかと期待したこともあった。
そのときの自分の定型詩人のポジションは、定型に違和を感じ続けているがゆえの歌人、というポジションであった。

  理屈では未来決定論は正し、理屈では今日はまったく正し  沙流堂




自選。
言うほどに悪くはないと道脇のツツジが咲けり、そう悪くない

お徳用サイズのサツマイモ天を大人になってもわれに勧める

先のことが分からぬ鳥が愛しくて、(その理屈だとオレも愛しい)

ほっぺたが少したるんだわが妻よこれからも妻でいてくれますか

我慢して人間50年、以上、無限のごとき後悔夢幻

酒呑んでポジティブ上戸、昼頃に希望も喉も渇いて起きる

人間は笑った時に言うなれば骨を見せちゃう生き物である

ポケベルのような使い方であるよ空メール送る母に電話す

精神の健康はついに得られずき顔を洗ったまま顔を覆う

怖い話ネットで深夜楽しんで歯を磨くときのつくづく鏡

さよならは引き止められずわっはっは、わっはっはぼくは笑っているの?

一貫性ある人生のたとうならジャベルの見たるセーヌの流れ

人間をわしづかみして貪り食う神のつかいの神々しいか

ぼくたちは年老いてきっと閉じてゆくそしたら今日のことを話そう

実存と虚無と無意味と不合理のさわやかな青空の真下

日本語は抵抗もせず滅びるかgrandchildはyouと話せず

フェイゲンの曲が流れたCMのThinkPadが欲しい今でも

種に貴賎ありせば今日もナマケモノ賎なる者の「怠け」をなせり

ギザギザの歯でにんまりと笑ってたさっちゃん、転校してそれっきり

給湯室で歯を磨きいるおっさんが人生はつらいなあとつぶやく

ウイルスに君のOSはむしばまれ泣く泣く君をリカバリーする

おばさんになったのだなあ、おばあさんになってもぼくは驚くだろう

今回も失敗だった、ぼくの詩でその心臓をひと突きならず


俳句
役割のひとつ終わって夏の風邪

実梅摘む天職に遇える人わずか

忘れすぎてくれてもうれし柿の花

白日傘小学校が投票所

花南瓜あとはまわりが決めてくれ

葛切やマイナスからの一歩です

何に似て麦藁帽を漏るひかり

2017年06月の74首と、その他もろもろ。

本にして世に問うこともなき言葉、大波くれば瓦礫にもならむ

言うほどに悪くはないと道脇のツツジが咲けり、そう悪くない

ここはそういう言葉は何もありません言葉にならない声のみどうぞ

お徳用サイズのサツマイモ天を大人になってもわれに勧める

心によって心は心になるであろ、やさしさはきみをみちびくであろ

自由とか不自由じゃなく言うならば復興律を唱うリーダー

先のことが分からぬ鳥が愛しくて、(その理屈だとオレも愛しい)

ほっぺたが少したるんだわが妻よこれからも妻でいてくれますか

我慢して人間50年、以上、無限のごとき後悔夢幻

忘れられた詩歌句は第四倉庫、零時を越えたらひらく扉の

酒呑んでポジティブ上戸、昼頃に希望も喉も渇いて起きる

やがて卒業そして忘れてゆく歌がたくさんあってこれでよいのだ

人間は笑った時に言うなれば骨を見せちゃう生き物である

形あるものでなくても壊れるしガラスのような音も聞こえる

ポケベルのような使い方であるよ空メール送る母に電話す

精神の健康はついに得られずき顔を洗ったまま顔を覆う

ネズミ色のクレヨンでこの耳大き動物は象かそれともネズミ

ZIMAみたいな香りの女といるけれど帰りたいけどネタになるけど

ファウストはオレファーストの物語と言えなくもない水無月湿る

文学の権化みたいな顔してさ、遅刻もしたことない人なのに

マツコやせてマツコスラックスなどと言いたいだけの昼休みなり

怖い話ネットで深夜楽しんで歯を磨くときのつくづく鏡

少年をきみは貴方と表記する女は三世をどっかと座る

スヌーピーの乳首透けT着ていると少し気まずい(全員男)

悲しみが極まるときに巨大なる球はブルンとふるえにけりな

さよならは引き止められずわっはっは、わっはっはぼくは笑っているの?

友人に玉をたやすく追い込まれ負けず嫌いの「ず」までが憎い

ぼくはきみを生まれる前から知っているけどきもいので知らないそぶり

断崖は前でも後ろでもなくて横にあることを見ているあなた

なにか人のためにならねばならないと思う夜道を疲れておれば

ドッグフードが一個先にもまた一個、これは、犬用の罠ではないか

ストレージにその情報を詰めたまま彼も一つの情報となる

ハードディスクがたぶんいくつか死んでいるそこにいるのにもう動かない

物語ひと山いくら高いのと安いのどちらを君に贈ろう

一貫性ある人生のたとうならジャベルの見たるセーヌの流れ

短歌最後の日、の一首われは読むあたわずそんなに優れた歌にあらざらむ

これでもかこれでもかってこの人の内よりきたる悲しみを吸う

不死がまだうらやましい世を眠らせてある時は羊飼いなる男

人間をわしづかみして貪り食う神のつかいの神々しいか

涙ながれるほど正義なる君といて熱き血潮がやや冷めるなり

ひそやかでダメな願いでありましょう伴食大臣おけぬ時代に

親指を進化させ笹を掴まねば生きられなかった地獄をおもう

どうしようもない夜を座るひとつ心をそのままにして寝るのも大人

手続きで負けてしまった正しさが呪いの蛇になってうごめく

ぼくたちは年老いてきっと閉じてゆくそしたら今日のことを話そう

15歳でメディアをひとつ与えられ5次元人のようなまなざし

実存と虚無と無意味と不合理のさわやかな青空の真下

方言の説明は歯切れ悪くして同語反復するばかりなり

やや上を眺めてスピーチするきみの、未来はそういう見方がよろし

日本語は抵抗もせず滅びるかgrandchildはyouと話せず

6月に年越しそばを食べている今年もいろんなことがあったな

魂が可算名詞になるまえのオレタチに幸も不幸もないよ

親権がとれず女に戻るのを喜ぶ一瞬を子と父は見る

溜飲を下げる娯楽に神々の渇きは続く、次はお前だ

フェイゲンの曲が流れたCMのThinkPadが欲しい今でも

種に貴賎ありせば今日もナマケモノ賎なる者の「怠け」をなせり

つくだ煮は好きだけれどもつくだ煮の匂いの君を好きになれない

ギザギザの歯でにんまりと笑ってたさっちゃん、転校してそれっきり

給湯室で歯を磨きいるおっさんが人生はつらいなあとつぶやく

健診で異常がなくて安堵する範囲内ならちがってていい

ぼくたちは星にてあればここからは異なる軌跡、楽しかったと

闘争が終わったらまるで何事もなかったように一句をひねる

フロッギー(カエル星人)と名付けたあとで肌の色で差別をしない法律が成る

淡水湖のややなまぐさき香りして海に還らぬ男女抱き合う

ツチノコはいるしツチノオヤもいる命の母をよく飲んでいる

この人は指をひらひらさせながら目を凝らしたる仕事で生きる

ウイルスに君のOSはむしばまれ泣く泣く君をリカバリーする

将棋には性別を示す駒がなくて命拾いだね再ブーム

夜になると銅像がうごく七不思議どこにでもあるという不可思議の

使命感なければただの野次馬を担いでるのはまあ、鹿だよな

おばさんになったのだなあ、おばあさんになってもぼくは驚くだろう

ノスタルジーを右に左に動かして魔王を倒せば現実がくる

今回も失敗だった、ぼくの詩でその心臓をひと突きならず

大変なことになったと思いつつトップ記事にはならなかったか


俳句
役割のひとつ終わって夏の風邪

罪いくつかぞえたとして鴉の子

実梅摘む天職に遇える人わずか

梅雨鯰呆れられても大あくび

一発アウトのトラップありて夏至なかば

忘れすぎてくれてもうれし柿の花

正念場ここで去年の藺座布団

君にうたう、君は知らない藺座布団

白日傘小学校が投票所

花南瓜あとはまわりが決めてくれ

憂いひとつ五月雨にも濡れさせず

葛切やマイナスからの一歩です

何に似て麦藁帽を漏るひかり

梅天や握るゼリーの味均一

飲み込めぬサイズにしてよマイ鵜匠


パロディ俳句
◯♬や〓⌘は遠くなりにけり

ひりあくも おろじてばけみ まじねえて
IBM→HAL変換編

去年今年啜れるそばの如きもの


パロディ自由律俳句
ちねいっぺろぴねみっけろまないたわ


#うんの日風
採用をがまんしているまひるまのとんがりコーン指から食べる




































2020年6月17日水曜日

ふらくた連枝6「透明人間の」の巻

ふらくた連枝6「透明人間の」の巻

寿々多実果・・・多実果
照屋沙流堂・・・沙流
くらげただよう・・・洋
袴田朱夏・・・朱夏
小澤ほのか・・・ほのか

1 砂が浮かび上がらせる透明人間の輪郭
多実果

2 泣いていたのは誰も知らない
沙流

3 ここだけは雨の降らない日曜日

4 探偵事務所のある古いビル
沙流

5 浮気調査をしに行く俺も浮気して
朱夏

6 ゾロゾロのゴロゴロのボロボロ
沙流

7 どんぐりはいつでもコロコロ転がって
ほのか

8 だまし絵みたいに終わりがこない
多実果

9 エッシャーの展覧会に行けなくて

10 タイムマシンを拾って帰る
沙流

11 恐竜の絶滅した日知りたくて

12 ハンドボールで弾丸シュート
沙流

13 キーパーは止めた記憶をなくしても
朱夏

14 差別にみえれば怒る観客
沙流

15 首の皮一枚多い首相には
朱夏

16 俺より本物っぽい影武者
沙流

17 キャッツアイにアイシャドウつけ燃え上がる
朱夏

18 きれいなままじゃ愛になれない
沙流

19 正義とは離れたところに愛はあり
多実果

20 ふたり足跡浜辺に残す

ふらくた連枝5「あなたに贈る」の巻

ふらくた連枝5「あなたに贈る」の巻

小澤ほのか・・・ほのか
袴田朱夏・・・朱夏
照屋沙流堂・・・沙流
寿々多実果・・・多実果
くらげただよう・・・洋

1 ネズミ花火をあなたに贈る
ほのか

2 お気持ちだけいただきますと紳士は去る
朱夏

3 カラダ目当ての流れだったよねお互いに
沙流

4 愛に気づくのはずっとあとから
多実果

5 暖炉の火弱まりながら夜しずか
沙流

6 冬のお日様寝坊続いて

7 雪道には幾本の自転車のすじ元気
沙流

8 右の手袋生き別れても

9 5年後の春ひょっこりと照れ笑い
沙流

10 デロリアンには頼らなくても
朱夏

11 ここではないどこかではない抱きしめる
沙流

12 写真の色があせては来たが思い出だけは譲れない

13 盆踊り 振り返るまでのきみの気配
沙流

14 夏の香りをまとって宵に

15 馬跳びタイヤに座ってファンタ回し飲み
沙流

16 ぶどう色に染まった舌であかんべー
多実果

17 本当に言いたいことは言葉にならず

18 子供じゃないって言って、終わった
沙流

19 はくちょう座いっしょに探す人を探して

20 知っていますかおしりにデネブ
朱夏

2020年6月9日火曜日

ふらくた連枝4「さびしさはいつも」の巻

ふらくた連枝4「さびしさはいつも」の巻

照屋沙流堂・・・沙流
袴田朱夏・・・朱夏
くらげただよう・・・洋
寿々多実果・・・多実果
小澤ほのか・・・ほのか

1 さびしさはいつも字足らずなのに
沙流

2 押しつぶすタイプの正義が闊歩
朱夏

3 ごめんなさいの大安売りで

4 ありがとうが言えなくなっていく
多実果

5 これ以上世界が正しくなっちゃって
沙流

6 真夏をふさぐ白マスク

7 街にはフリー素材のイラストばかり
多実果

8 顔があるようでない人の体温
朱夏

9 社会的距離取って取られて君の背中を追いかける

10 横目で見ながら食べるあんみつ
ほのか

11 人前で怒るのを見るの懐かしいね
沙流

12 雷神様の太鼓を鳴らす

13 豆の木を雲から下りて手がみどり
沙流

14 樹を叩き切るチェーンソーとは
ほのか

15 13日の金曜日しか動かない

16 コインランドリーの一番奥の
朱夏

17 花火特集の雑誌にいまだ胸いたみ
沙流

ほのか

19 使ったら無くなるものが使えない
沙流

20 暫定のゴールテープを追い抜いて

2020年6月5日金曜日

ふらくた連枝3「大事です」の巻

ふらくた連枝3「大事です」の巻

袴田朱夏・・・朱夏
くらげただよう・・・洋
照屋沙流堂・・・沙流
寿々多実果・・・多実果
小澤ほのか・・・ほのか

1 インプットよりアウトプットが大事です
朱夏

2 どうしても五七五に収まらぬ

沙流

4 ホコリ飛ばしスプレーの缶の中は風
沙流

多実果

6 人格だけは彼にもあって
ほのか

7 バーチャルな結婚式場予約する

8 社会学者は仕事のために
朱夏

9 なんとかペイばかりで財布を持たぬまま
多実果

10 画面一面派手なアイコン

11 太陽系第三惑星はまだぶくぶくとうるさいし
沙流

12 しかし宇宙は泡構造で
朱夏

13 ディスコの中でバブル弾ける

14 飛沫はすべて踏み付けられてもうたまりません
朱夏

15 振り下ろされた鞭は風切りデフレという名のスパイラル

16 「全員が貧しい社会」主義を夢みて
沙流

17 革命しないマルクス主義に

18 月明かりに屋上で振る20面ダイス
沙流

19 丁でも半でも答えはひとつ

20 アウトプットが多すぎた日に
沙流

ふらくた連枝2「堕天の薔薇」の巻

ふらくた連枝2「堕天の薔薇」の巻

くらげただよう・・・洋
袴田朱夏・・・朱夏
照屋沙流堂・・・沙流
小澤ほのか・・・ほのか

1 にじむ血で書く答案用紙

2 どこにも着地できない言葉で述べよ
朱夏

3 空に落ちそうなほどのブランコ
沙流

4 アルプスに少女の声がこだまする

5 UPSIDE-DOWN 雨が押しのけた記憶
朱夏

6 落ちゆく月は堕天使の血に染められて

7 その日のうちに丁寧に洗う器具も余韻も
沙流

8 卯の花腐しは全てを洗い流す
ほのか

9 一面の青空には夏が広がる

10 昼下がりくずきり餅の大脱出(エクソダス)
沙流

11 宇宙食くらいにはなりたい
朱夏

12 たけのこのご飯を食べるかぐや姫

13 「私はアジアバージョンなので」
沙流

14 炊かれたおこげは外せないです
ほのか

15 レモン色の丸いやかんの麦茶冷たくうれしくて
沙流

16 あてたおでこが白くなりけり
朱夏

17 熱はないから起きてゼリーを食べてもいい?
沙流

18 殺害予告の地図のあぶりだし
沙流

19 マッチしかない、いや、スルメイカはある
朱夏

20 つかのまミスチル聴く祖国にて
沙流

ふらくた連枝1「薔薇のとげ」の巻

ふらくた連枝1「薔薇のとげ」の巻

照屋沙流堂・・・沙流
くらげただよう・・・洋
寿々多実果・・・多実果
袴田朱夏・・・朱夏
小澤ほのか・・・ほのか

1 薔薇のとげ愛してからの人類史
沙流


3 正解に辿り着くのは枠のそと
多実果

4 二馬身半を差し込んでくる
沙流

5 春風と橋をくぐった先にある
朱夏

6 金のオブジェをうんち?と訊いた
多実果

朱夏

8 オレオレ詐欺の優しい電話
沙流

9 タカシくん私の話に付き合って
ほのか

10 ひなげしの赤はらりと散って

11 バイパス道路がこの町の時を止めてゆく
沙流

12 不思議な車に追い越されながら
朱夏

13 「赤ちゃんがのっています」の車の後ろで
多実果

14 蝶々の舞うキャベツ畑は

15 旅人が手を合わせてからかぶりつく
沙流

16 桃の中から太郎の悲鳴
ほのか

17 太陽の塔と都庁が光りだし
沙流

18 奈良の大仏無言貫く夜つづく

19 おにぎりが落ちた穴には入れない
朱夏

20 外の世界は夏そして夏

2020年5月17日日曜日

#ふらくた連句10

ふらくた連句「今宵は雨に」の巻

照屋沙流堂・・・沙流
野原豆・・・豆
袴田朱夏・・・朱夏
くらげただよう・・・洋
寿々多実果・・・多実果
小澤ほのか・・・ほのか
石川聡・・・聡

1 おぼろなり今宵は雨に散るさくら
沙流

2 涙を拭い踏み出す一歩

3 帽子は忘れたけどくれてやる
沙流

4 しゃらしゃらと葉を揺らす雨嫋やかに

5 また来年も春に逢いたい

6 狼は丘に立ちて、のち去る
沙流

7 蝙蝠の群れて一家は夕焼けに
朱夏

8 シチューのような窓の明るさ
沙流

9 回さずにじっと眺める月球儀

10 あなたの見ているほうが裏です
朱夏

11 着るときに表にしろと畳む服
多実果

12 雨ふるまえの部屋のしずけさ
沙流

13 夏燕飛びゆく空に雲はなく
ほのか

14 アスファルトより黒々と影

15 すりむいたひざの分だけ少年は
朱夏

16 濤乱刃なる小刀かくす

17 「おいそこの顔を見せない配送員!」
沙流

18 「これが素顔」とのっぺらぼうは

19 ペッパー君が甲高い声であやまって
沙流

20 繰り返されるオンライン飲み

21 白いマスクにU字への字の口を書き
多実果

22 同僚の死を占っている
朱夏

23 77度の焼酎売りだされ春暖

24 チューリップらは首を失う

25 拾うのは薔薇の援軍赤母衣衆

26 足りぬ足りぬと九尾の狐

27 心臓がいくつあっても死は一度
沙流

28 銀の弾丸込めてかまえる

29 座禅する師匠の背中壁のごとく
沙流

30 崩されるのは無実の豆腐

31 祖母山も切羽も詰まる頃なれど

32 実家暮らしの姫の退屈
沙流

33 手すさびにレースなんかを編んでみる
ほのか

34 終焉までの橙の日々
朱夏

35 もうリンゴ食べ飽きたなとアダム、エヴァ

36 あばら骨から矢じりをつくる

37 マンモスの倒れた時の地の響き
沙流

38 かき消してゆくヒトの雄叫び

39 本日も正義の感染者が増えて
沙流

40 日が沈んでくインカ帝国

41 ものうげなアルパカの耳が笛を聞き
沙流

42 長いまつげが微かに揺れる
多実果

43 五月雨の檻に囲まれ夜が来る

44 置き時計には横顔の月
沙流

45 豆苗の二度萌え激し月眠る

46 白南風の尾を掴めぬままで

47 狐には化かされまくりのお爺さん
ほのか

48 宇宙に向かってひとりにこにこ
沙流

49 素麺が流れ続ける天の川

50 誰にも見えぬむらさきの糸
朱夏

51 ひっぱってくれたらついていきたいよ
沙流

52 くじ引き引いて残念賞を

53 君と会うさだめにあった僕たちは
ほのか

54 季節の中で殴りあってる

55 夕焼けに響き渡った笑い声

56 砂はねてゆく濡れたサンダル
沙流

57 思い出はテトラポットの向こう側
沙流

58 未練の砂を時計に詰める

59 白髪でも伸びていきますあなたまで
朱夏

60 浦島太郎の眉の小筆で

61 筆ペンのインクが切れて墨を磨り
多実果

62 試し書きほど上手いあるある
沙流

63 話すことはないし切れない長電話
沙流

64 地球の裏はいつもブラジル
沙流

65 翻訳を関西弁にしたき顔
沙流

66 げに柔らかきたこ焼きソース
沙流

67 小麦粉がなく片栗粉買い占める

68 とろみが足りぬ世論のために
沙流

69 固まってネイルアートになる光
朱夏

70 ホタル捉える合掌の手で

71 お勤めのりんの響きが消えてから
多実果

72 開眼すれば脳漿の澄む
朱夏

73 去年今年繋ぐ棒きれ百八つ

74 PPAPのおれはどのP
沙流

75 ドロンパの視線の先にふわふわと

76 ペロリンキャンディのぐるぐるピンク
沙流

77 点Pが仲間を呼んで合体し
朱夏

78 海わたる蝶のはるばる紙ふぶき
沙流

79 天を数える単位を問えばもう冬で
朱夏

80 ベテルギウスが燃え尽きてゆく

81 恒星の起こす爆発予想して
ほのか

82 ロングシュートをねらうキャプテン
沙流

83 翼があれば岬までゆく

84 それまでは顔面ブロック石の崎にて
朱夏

85 日向の道を行ったり来たり

86 すれ違う長い渡り廊下で
沙流

87 友達にパロスペシャルをかけられて
沙流

88 「悪かったよ」と牛丼店へ
ほのか

89 我がスネに七つの傷がきざまれる

90 世紀末まであと八十年
朱夏

91 その頃はほぼほぼすでに死んでいる
沙流

92 百トンハンマー振り回されて

93 XYZと書き込むSNS
朱夏

94 伝言板を探す毎日
ほのか

95 お宝は三人姉妹の予告状
沙流

96 猫の瞳は夜中にひかる

97 いつまでもカリオストロの城にいて
朱夏

98 散る花びらは心を盗む

99 夕闇に花ぬすびとを見逃して
多実果

100 願い叶える星を集める

2020年5月8日金曜日

ふらくた連句#9

ふらくた連句「今宵は雨に」の巻

照屋沙流堂・・・沙流
野原豆・・・豆
袴田朱夏・・・朱夏
くらげただよう・・・洋
寿々多実果・・・多実果
小澤ほのか・・・ほのか
石川聡・・・聡
おふうちゃん・・・ふう
珈琲と俳句・・・珈俳
瓦すずめ・・・すずめ

1 おぼろなり今宵は雨に散るさくら
沙流

2 涙を拭い踏み出す一歩

3 帽子は忘れたけどくれてやる
沙流

4 しゃらしゃらと葉を揺らす雨嫋やかに

5 また来年も春に逢いたい

6 狼は丘に立ちて、のち去る
沙流

7 蝙蝠の群れて一家は夕焼けに
朱夏

8 シチューのような窓の明るさ
沙流

9 回さずにじっと眺める月球儀

10 あなたの見ているほうが裏です
朱夏

11 着るときに表にしろと畳む服
多実果

12 雨ふるまえの部屋のしずけさ
沙流

13 夏燕飛びゆく空に雲はなく
ほのか

14 アスファルトより黒々と影

15 すりむいたひざの分だけ少年は
朱夏

16 濤乱刃なる小刀かくす

17 「おいそこの顔を見せない配送員!」
沙流

18 「これが素顔」とのっぺらぼうは

19 ペッパー君が甲高い声であやまって
沙流

20 繰り返されるオンライン飲み

21 白いマスクにU字への字の口を書き
多実果

22 同僚の死を占っている
朱夏

23 77度の焼酎売りだされ春暖

24 チューリップらは首を失う

25 拾うのは薔薇の援軍赤母衣衆

26 足りぬ足りぬと九尾の狐

27 心臓がいくつあっても死は一度
沙流

28 銀の弾丸込めてかまえる

29 座禅する師匠の背中壁のごとく
沙流

30 崩されるのは無実の豆腐

31 祖母山も切羽も詰まる頃なれど

32 実家暮らしの姫の退屈
沙流

33 手すさびにレースなんかを編んでみる
ほのか

34 終焉までの橙の日々
朱夏

35 もうリンゴ食べ飽きたなとアダム、エヴァ

36 あばら骨から矢じりをつくる

37 マンモスの倒れた時の地の響き
沙流

38 かき消してゆくヒトの雄叫び

39 本日も正義の感染者が増えて
沙流

40 日が沈んでくインカ帝国

41 ものうげなアルパカの耳が笛を聞き
沙流

42 長いまつげが微かに揺れる
多実果

43 五月雨の檻に囲まれ夜が来る

44 置き時計には横顔の月
沙流

45 豆苗の二度萌え激し月眠る

46 白南風の尾を掴めぬままで

47 狐には化かされまくりのお爺さん
ほのか

48 宇宙に向かってひとりにこにこ
沙流

49 素麺が流れ続ける天の川

50 誰にも見えぬむらさきの糸
朱夏

51 ひっぱってくれたらついていきたいよ
沙流

52 くじ引き引いて残念賞を

53 虚しさは仕舞い忘れた夜に降る

54 ひきだしの奥にわずかな希望
沙流

55 ドラえもん色につま先染めて

56 サンダル買いにスキップでいく
多実果

57 ひとめぼれこれはおそらく両想い
沙流

58 米を買うならコシヒカリだな

59 握り飯なかへひとつぶ愛をうめ

60 交わす言葉に花がほころぶ

61 あちこちで蛙合戦
ふう
🐸始まりぬ
62 つはものどもが水掻きの跡

63 空っぽになったカレー皿をどけ

64 これがお目当てセットの珈琲
珈俳

65 早起きをすればポチ鳴く裏の畑
ふう

66 フードをかぶった男あやしき
沙流

67 情報を得るならばあの地下喫茶
珈俳

68 ブルーの角砂糖が合図だ
朱夏

69 颯爽とジェイムズ・ボンド美女と行く

70 英国紳士で珈琲党で
珈俳

71 あの鳥はいったい誰が殺したの
ふう

72 名探偵のお手を拝借

73 マライヒの淹れる珈琲は苦い
珈俳

74 この橋を渡りきれば埼玉
沙流

75 ゴリゴリと観測船が割りゆけば
朱夏

76 部屋でギャン弾きするエアギター
沙流

77 「あんた何やってるのん」と母は問う
ほのか

78 青春以外立ち入り禁止!
沙流

79 若き日を楽しんできたオトナたち
ほのか

80 老いても事を仕損じている
沙流

81 年齢を乱数表で指定する
朱夏

82 社長室には女子高生が

83 地球儀を回すましろくながい指
沙流

84 日付変更線に逆らい

85 遊星の軌道たのしく鳴るパチカ
朱夏

86 修正できぬ検事法案

87 灰色の砂消しゴムですぐ破れ
沙流

88 青い砂漠の夜の後悔
沙流

89 もう二度と会えないことを知りながら
沙流

90 詩集を借りる雨傘を貸す
多実果

91 飲み込んだ言葉の行き先はどこか

92 山羊さんの胃袋の中へと
ほのか

93 初夏のコロポックルのペンライト
すずめ

94 きみを待ってるきのこの椅子で

95 笑茸かもしれないと毒味して
多実果

96 ぐねぐねしたる子の握り飯
すずめ

97 わがままな幼い神は電池切れ
沙流

98 夢でもすぐに遊びのつづき
沙流

99 思い出す粘土細工に遊びし日
ほのか

100 その要領で明日の手づくり
沙流

2020年5月6日水曜日

ふらくた連句#8

ふらくた連句「今宵は雨に」の巻

照屋沙流堂・・・沙流
くらげただよう・・・洋
小澤ほのか・・・ほのか
袴田朱夏・・・朱夏
寿々多実果・・・多実果
藍笹キミコ・・・竹林堂
珈琲と俳句・・・珈俳

1 おぼろなり今宵は雨に散るさくら
沙流

2 液晶からは笑みがこぼれる

3 ドローンを無事に野生に帰す日よ
沙流

4 個人情報回収はして
ほのか

5 コレクションルームに横たえるパスタ
朱夏

6 ソムリエールは月光浴す

7 脱ぐごとにかたちは不定形となり
沙流

8 洗濯ものにアイロンかける
ほのか

9 ひまわりと背比べする園児達

10 かざした腕は雲をかくして
朱夏

11 ドーナツの輪っかを風は吹き抜ける

12 輪っかでないところも吹き抜ける
朱夏

13 北風が南風へと移りゆく
ほのか

14 知らない国の地図を広げる

15 赤えんぴつを耳に挟んだ先生は
沙流

16 ぼくの未来に印をつける
朱夏

17 耳たぶに小鳥のピアス羽ばたいて

18 とても桜が、さくら色です
沙流

19 ちゃんと読むつもりで開くマニュアルに
朱夏

20 生き急がねば使わぬ機能
沙流

21 高い木の人に届かぬ柑橘の
沙流

22 月に届かぬさみしさばかり

23 初雪のガラス細工が終わらずに
朱夏

24 ショーケースには林檎を並べ
多実果

25 引力からは逃れぬふたり

26 連星となって回れば宇宙の輪舞
朱夏

27 踊りつつソーシャルディスタンスは保つ
多実果

28 水平線に届くため息

29 いつまでも壊れたままの幽霊船
沙流

30 霧のむこうは16世紀
沙流

31 一粒を眉間で受けて雨と知り
朱夏

32 あなたのいない場所へと向かう

33 フルートの音色が未来から聞こえ
沙流

34 児らは空き地に並んで座る
ほのか

35 缶蹴りの缶だけ残る午後六時
多実果

36 秋刀魚を焼いたにおいを辿る

37 絵巻物の雲に隠れて盗み食い
沙流

38 遠くにヤコブのエスカレーター
沙流

39 堕天使は輪っかを外し羽根を脱ぎ
多実果

40 悪魔は拾い集めて回り

41 洗濯物外には干せず部屋干しで
ほのか

42 手縫いのマスクぶら下げている
多実果

43 沈黙は金か銀かと将棋盤

44 と金ははしゃいでも捨て駒だ
朱夏

45 一円をみなから集めて元気玉
沙流

46 返礼品は2枚のマスク
朱夏

47 笛吹きが笛を鳴らせず一人去る

48 蛇は壺からなぞって逃げる
沙流

49 カレーにも味噌汁なんてと思うだろ?
沙流

50 「スープスープ!」と叫ぶインド人
ほのか

51 スマイルで首を左右に揺らし来て
沙流

52 線香のけむり迷いつつ消ゆ
沙流

53 校庭のイチョウのそばに埋めました
沙流

54 連休にどう緩んだかのメモ
朱夏

55 青ばかり減る絵日記をよしとして
沙流

56 工作の指の棘がとれない
沙流

57 友達は異性の話で盛りあがり
沙流

58 そのあとわたしにキスなどする
朱夏

59 一切はじゃんけんだ、なんてうそぶいて
沙流

60 鋏じゃなくて鉄砲のチョキ
多実果

61 ひび割れたきみのスマホはなおせない
沙流

62 繰り返してる留守番電話
ほのか

63 失踪の部屋の壁に画鋲だけで
朱夏

64 失意に至るあこがれの跡
沙流

65 展示中の旧ソ連圏のデザイン画
沙流

66 「空か海かで揉めろ」と題は
朱夏

67 ペンギンよ飛ぶのも泳ぐのも同じ
沙流

68 笑うのも泣くのも同じこと
沙流

69 厄災をにげて岬のいきどまり
沙流

70 追いつめられたことに気づかず
多実果

71 壁を背にしたら何かにくすぐられ
朱夏

72 どん兵衛一年分の崩壊
沙流

73 五百年夢見続けた座礁船
朱夏

74 甲板でけさもラジオ体操
沙流

75 蟹といっしょに泣き戯れて

76 蠍とはあまり話をしないけど
ほのか

77 隠し持ってるのりピー語録

78 証拠を前にただ黙秘権
沙流

79 タピオカが吸えぬ細さのストローで
沙流

80 品定めする姫の目ぢから
沙流

81 マスカラ落とすパンダの母に

82 閉口をするもしないもあたたかなりき
朱夏

83 真実の口にひとつぶチョコを置き
沙流

84 舌が出るのを朝まで待って
多実果

85 金網のひるがおゆっくりとひらく
沙流

86 仕事無き日はアラーム鳴らぬ

87 眠そうな顔でいつまでいれるやら
沙流

88 連休明けは仕事がこわい
多実果

89 窓開けてピーター・パンを待つ夜に

90 ブンブブ ブンブブ ブンブン うるせー
沙流

91 蚊を潰す快感に似た死生観
竹林堂

92 吸血鬼たち献血へ行き

93 朱い息朝に間に合わない湿り
朱夏

94 エスプレッソをぐいと一飲み
珈俳

95 マスク中の後味のこと考えて
沙流

96 ペパーミントを縫い込んでいる
朱夏

97 いつの日かきみに孤独をあげるため
沙流

98 枯れてく花の名を教えよう

99 生きていく使命感とはあるもので
ほのか

100 夕日と交わす約束がある

ふらくた連句#7

ふらくた連句「今宵は雨に」の巻

照屋沙流堂・・・沙流
野原豆・・・豆
袴田朱夏・・・朱夏
くらげただよう・・・洋
寿々多実果・・・多実果
小澤ほのか・・・ほのか
石川聡・・・聡

1 おぼろなり今宵は雨に散るさくら
沙流

2 涙を拭い踏み出す一歩

3 帽子は忘れたけどくれてやる
沙流

4 しゃらしゃらと葉を揺らす雨嫋やかに

5 また来年も春に逢いたい

6 狼は丘に立ちて、のち去る
沙流

7 蝙蝠の群れて一家は夕焼けに
朱夏

8 シチューのような窓の明るさ
沙流

9 回さずにじっと眺める月球儀

10 あなたの見ているほうが裏です
朱夏

11 着るときに表にしろと畳む服
多実果

12 雨ふるまえの部屋のしずけさ
沙流

13 夏燕飛びゆく空に雲はなく
ほのか

14 アスファルトより黒々と影

15 すりむいたひざの分だけ少年は
朱夏

16 濤乱刃なる小刀かくす

17 「おいそこの顔を見せない配送員!」
沙流

18 「これが素顔」とのっぺらぼうは

19 ペッパー君が甲高い声であやまって
沙流

20 繰り返されるオンライン飲み

21 白いマスクにU字への字の口を書き
多実果

22 同僚の死を占っている
朱夏

23 77度の焼酎売りだされ春暖

24 チューリップらは首を失う

25 拾うのは薔薇の援軍赤母衣衆

26 足りぬ足りぬと九尾の狐

27 心臓がいくつあっても死は一度
沙流

28 銀の弾丸込めてかまえる

29 座禅する師匠の背中壁のごとく
沙流

30 崩されるのは無実の豆腐

31 祖母山も切羽も詰まる頃なれど

32 実家暮らしの姫の退屈
沙流

33 手すさびにレースなんかを編んでみる
ほのか

34 終焉までの橙の日々
朱夏

35 もうリンゴ食べ飽きたなとアダム、エヴァ

36 あばら骨から矢じりをつくる

37 マンモスの倒れた時の地の響き
沙流

38 かき消してゆくヒトの雄叫び

39 本日も正義の感染者が増えて
沙流

40 日が沈んでくインカ帝国

41 ものうげなアルパカの耳が笛を聞き
沙流

42 長いまつげが微かに揺れる
多実果

43 五月雨の檻に囲まれ夜が来る

44 置き時計には横顔の月
沙流

45 豆苗の二度萌え激し月眠る

46 白南風の尾を掴めぬままで

47 狐には化かされまくりのお爺さん
ほのか

48 宇宙に向かってひとりにこにこ
沙流

49 素麺が流れ続ける天の川

50 誰にも見えぬむらさきの糸
朱夏

51 ひっぱってくれたらついていきたいよ
沙流

52 くじ引き引いて残念賞を

53 君と会うさだめにあった僕たちは
ほのか

54 季節の中で殴りあってる

55 夕焼けに響き渡った笑い声

56 砂はねてゆく濡れたサンダル
沙流

57 思い出はテトラポットの向こう側
沙流

58 未練の砂を時計に詰める

59 白髪でも伸びていきますあなたまで
朱夏

60 浦島太郎の眉の小筆で

61 筆ペンのインクが切れて墨を磨り
多実果

62 試し書きほど上手いあるある
沙流

63 話すことはないし切れない長電話
沙流

64 地球の裏はいつもブラジル
沙流

65 翻訳を関西弁にしたき顔
沙流

66 げに柔らかきたこ焼きソース
沙流

67 小麦粉がなく片栗粉買い占める

68 とろみが足りぬ世論のために
沙流

69 固まってネイルアートになる光
朱夏

70 ホタル捉える合掌の手で

71 お勤めのりんの響きが消えてから
多実果

72 開眼すれば脳漿の澄む
朱夏

73 去年今年繋ぐ棒きれ百八つ

74 PPAPのおれはどのP
沙流

75 ドロンパの視線の先にふわふわと

76 ペロリンキャンディのぐるぐるピンク
沙流

77 点Pが仲間を呼んで合体し
朱夏

78 海わたる蝶のはるばる紙ふぶき
沙流

79 天を数える単位を問えばもう冬で
朱夏

80 ベテルギウスが燃え尽きてゆく

81 恒星の起こす爆発予想して
ほのか

82 ロングシュートをねらうキャプテン
沙流

83 翼があれば岬までゆく

84 それまでは顔面ブロック石の崎にて
朱夏

85 咳をして一人が消える海沿いの
朱夏

86 低い霧笛がひびく空腹
沙流

87 マドロスに憧れて横縞のシャツ
沙流

88 幼な児は言う「ウォーリーがいる」
ほのか

89 赤いメガネの度が合わなくて

90 月はもう朧というか貴方と一緒
朱夏

91 謝ってくるだろうから許さない
沙流

92 背中に書いてあるかのように
朱夏

93 そのむかし男は無口だったとか
沙流

94 チャックがこわれはみ出して

95 このあとは地図の要らない時間です
朱夏

96 今夜の君は北極星で

97 見上げれば空いっぱいのことばたち
沙流

98 祈りであったことを湛えて
朱夏

99 壺のインクは静かに揺れる

100 言の葉を螺旋に孕むガラスペン
多実果

2020年5月3日日曜日

ふらくた連句#6

ふらくた連句「今宵は雨に」の巻

照屋沙流堂・・・沙流
くらげただよう・・・洋
小澤ほのか・・・ほのか
袴田朱夏・・・朱夏
寿々多実果・・・多実果

1 おぼろなり今宵は雨に散るさくら
沙流

2 液晶からは笑みがこぼれる

3 ドローンを無事に野生に帰す日よ
沙流

4 個人情報回収はして
ほのか

5 コレクションルームに横たえるパスタ
朱夏

6 ソムリエールは月光浴す

7 脱ぐごとにかたちは不定形となり
沙流

8 洗濯ものにアイロンかける
ほのか

9 ひまわりと背比べする園児達

10 かざした腕は雲をかくして
朱夏

11 ドーナツの輪っかを風は吹き抜ける

12 輪っかでないところも吹き抜ける
朱夏

13 北風が南風へと移りゆく
ほのか

14 知らない国の地図を広げる

15 赤えんぴつを耳に挟んだ先生は
沙流

16 ぼくの未来に印をつける
朱夏

17 耳たぶに小鳥のピアス羽ばたいて

18 とても桜が、さくら色です
沙流

19 ちゃんと読むつもりで開くマニュアルに
朱夏

20 生き急がねば使わぬ機能
沙流

21 高い木の人に届かぬ柑橘の
沙流

22 月に届かぬさみしさばかり

23 初雪のガラス細工が終わらずに
朱夏

24 ショーケースには林檎を並べ
多実果

25 引力からは逃れぬふたり

26 連星となって回れば宇宙の輪舞
朱夏

27 踊りつつソーシャルディスタンスは保つ
多実果

28 水平線に届くため息

29 いつまでも壊れたままの幽霊船
沙流

30 霧のむこうは16世紀
沙流

31 一粒を眉間で受けて雨と知り
朱夏

32 あなたのいない場所へと向かう

33 フルートの音色が未来から聞こえ
沙流

34 児らは空き地に並んで座る
ほのか

35 缶蹴りの缶だけ残る午後六時
多実果

36 秋刀魚を焼いたにおいを辿る

37 絵巻物の雲に隠れて盗み食い
沙流

38 遠くにヤコブのエスカレーター
沙流

39 堕天使は輪っかを外し羽根を脱ぎ
多実果

40 悪魔は拾い集めて回り

41 洗濯物外には干せず部屋干しで
ほのか

42 手縫いのマスクぶら下げている
多実果

43 沈黙は金か銀かと将棋盤

44 と金ははしゃいでも捨て駒だ
朱夏

45 一円をみなから集めて元気玉
沙流

46 返礼品は2枚のマスク
朱夏

47 笛吹きが笛を鳴らせず一人去る

48 蛇は壺からなぞって逃げる
沙流

49 カレーにも味噌汁なんてと思うだろ?
沙流

50 「スープスープ!」と叫ぶインド人
ほのか

51 スマイルで首を左右に揺らし来て
沙流

52 線香のけむり迷いつつ消ゆ
沙流

53 校庭のイチョウのそばに埋めました
沙流

54 連休にどう緩んだかのメモ
朱夏

55 青ばかり減る絵日記をよしとして
沙流

56 工作の指の棘がとれない
沙流

57 友達は異性の話で盛りあがり
沙流

58 そのあとわたしにキスなどする
朱夏

59 一切はじゃんけんだ、なんてうそぶいて
沙流

60 鋏じゃなくて鉄砲のチョキ
多実果

61 ひび割れたきみのスマホはなおせない
沙流

62 繰り返してる留守番電話
ほのか

63 失踪の部屋の壁に画鋲だけで
朱夏

64 失意に至るあこがれの跡
沙流

65 展示中の旧ソ連圏のデザイン画
沙流

66 「空か海かで揉めろ」と題は
朱夏

67 ペンギンよ飛ぶのも泳ぐのも同じ
沙流

68 笑うのも泣くのも同じこと
沙流

69 厄災をにげて岬のいきどまり
沙流

70 追いつめられたことに気づかず
多実果

71 壁を背にしたら何かにくすぐられ
朱夏

72 どん兵衛一年分の崩壊
沙流

73 スーパーの列に紛れる地縛霊

74 警備員には気づかれている
沙流

75 ど根性ガエルの理屈で進化する
朱夏

76 ガラパゴスまであと何マイル?

77 食べ物にあらざればミトコンドリア
朱夏

78 母から娘へつたう口ぐせ
沙流

79 自家製の梅干し残り少なくて
沙流

80 白米だけの弁当持って

81 水筒に実はジュースを入れてある
沙流

82 おやつ時間にバナナを剥いて

83 工場を眺めてばかりで入らない
沙流

84 月の光は不法侵入

85 ドロボーも靴はキチンと脱いでいて
ほのか

86 手洗いうがいが習慣の人
沙流

87 鳶一閃テイクアウトを急襲し
朱夏

88 すこし遅れてすごい爆音
沙流

89 遠雷に混じった別れ話聞く

90 ふたり冷たく抱きしめあえり
沙流

91 なめらかな肌あらわなる大理石
沙流

92 マグマだまりの体温を知る
朱夏

93 引き返すことを望まぬ青い鳥

94 空に海にと染まって消えた
朱夏

95 平日は酒を飲まないのも狂気
沙流

96 タロットカードの結果に不満
沙流

97 少しだけ数を間違え知らんぷり
ほのか

98 袖から旗がいつまでも出る
沙流

99 幸せをシルクハットに隠しても
朱夏

100 こぼれるほどに愛がいっぱい
多実果

2020年4月20日月曜日

ふらくた連句#5

ふらくた連句「今宵は雨に」の巻

照屋沙流堂・・・沙流
野原豆・・・豆
袴田朱夏・・・朱夏
くらげただよう・・・洋
寿々多実果・・・多実果
小澤ほのか・・・ほのか
石川聡・・・聡
おふうちゃん・・・ふう
珈琲と俳句・・・珈俳

1 おぼろなり今宵は雨に散るさくら
沙流

2 涙を拭い踏み出す一歩

3 帽子は忘れたけどくれてやる
沙流

4 しゃらしゃらと葉を揺らす雨嫋やかに

5 また来年も春に逢いたい

6 狼は丘に立ちて、のち去る
沙流

7 蝙蝠の群れて一家は夕焼けに
朱夏

8 シチューのような窓の明るさ
沙流

9 回さずにじっと眺める月球儀

10 あなたの見ているほうが裏です
朱夏

11 着るときに表にしろと畳む服
多実果

12 雨ふるまえの部屋のしずけさ
沙流

13 夏燕飛びゆく空に雲はなく
ほのか

14 アスファルトより黒々と影

15 すりむいたひざの分だけ少年は
朱夏

16 濤乱刃なる小刀かくす

17 「おいそこの顔を見せない配送員!」
沙流

18 「これが素顔」とのっぺらぼうは

19 ペッパー君が甲高い声であやまって
沙流

20 繰り返されるオンライン飲み

21 白いマスクにU字への字の口を書き
多実果

22 同僚の死を占っている
朱夏

23 77度の焼酎売りだされ春暖

24 チューリップらは首を失う

25 拾うのは薔薇の援軍赤母衣衆

26 足りぬ足りぬと九尾の狐

27 心臓がいくつあっても死は一度
沙流

28 銀の弾丸込めてかまえる

29 座禅する師匠の背中壁のごとく
沙流

30 崩されるのは無実の豆腐

31 祖母山も切羽も詰まる頃なれど

32 実家暮らしの姫の退屈
沙流

33 手すさびにレースなんかを編んでみる
ほのか

34 終焉までの橙の日々
朱夏

35 もうリンゴ食べ飽きたなとアダム、エヴァ

36 あばら骨から矢じりをつくる

37 マンモスの倒れた時の地の響き
沙流

38 かき消してゆくヒトの雄叫び

39 本日も正義の感染者が増えて
沙流

40 日が沈んでくインカ帝国

41 ものうげなアルパカの耳が笛を聞き
沙流

42 長いまつげが微かに揺れる
多実果

43 五月雨の檻に囲まれ夜が来る

44 置き時計には横顔の月
沙流

45 豆苗の二度萌え激し月眠る

46 白南風の尾を掴めぬままで

47 狐には化かされまくりのお爺さん
ほのか

48 宇宙に向かってひとりにこにこ
沙流

49 素麺が流れ続ける天の川

50 誰にも見えぬむらさきの糸
朱夏

51 ひっぱってくれたらついていきたいよ
沙流

52 くじ引き引いて残念賞を

53 虚しさは仕舞い忘れた夜に降る

54 ひきだしの奥にわずかな希望
沙流

55 ドラえもん色につま先染めて

56 サンダル買いにスキップでいく
多実果

57 ひとめぼれこれはおそらく両想い
沙流

58 米を買うならコシヒカリだな

59 握り飯なかへひとつぶ愛をうめ

60 交わす言葉に花がほころぶ

61 あちこちで蛙合戦
ふう
🐸始まりぬ
62 つはものどもが水掻きの跡

63 空っぽになったカレー皿をどけ

64 福神様がお出ましになる
ふう

65 珍客を喫茶店主は能くいなし
珈俳

66 河岸につきたる宝船から

67 焼肉かカレーか迷う餅あわい
ふう

68 体重計がお乗りなさいと

69 罪悪感洗い流してくれ珈琲
珈俳

70 そう言うわりにフレッシュ入れる
朱夏

71 ミディアムのレアーを切れば薔薇色の

72 花咲くことのエロティシズムは
沙流

73 はつ夏の珈琲店のささめごと
珈俳

74 座敷童も見て見ぬふりで
朱夏

75 物置でこそこそ話し声がする
沙流

76 雛の包みは開けられぬまま
ふう

77 床の間で埃かぶったお目出度さ
沙流

78 この掛け軸の裏から逃げて
沙流

79 雪舟の山水の河くだる漁夫

80 お日さま浴びて鼻唄混じり
ほのか

81 パラソルだ、ほんとに白いパラソルだ
沙流

82 太陽に怒られている夏
朱夏

83 朝顔としょんぼり顔でご挨拶

84 おねしょのこども、二日酔いのパパ
多実果

85 水難の相があるよと占い師

86 私もですと付け加えおり
朱夏

87 大型のキャットフィッシュが生あくび
沙流

88 やがて鳴門の大渦になり
朱夏

89 泉には鯰のごとき我が顔が

90 怒りを選べとささやいてくる
沙流

91 革命は天変地異の赤い花
沙流

92 花粉のせいで自転が止まる
朱夏

93 骨董の壺から飛び出す大魔王

94 マスクはとてもとても小さい
朱夏

95 君の目と眉が本音のかたちして
沙流

96 弁舌よりも爽やかであり
ほのか

97 てのひらでフタを開けたり梅酒瓶
沙流

98 ハンドパワーが流行らなくなり
朱夏

99 手を洗うなぜか反省する心地
沙流

100 湯気を立ててる白飯うまし

2020年4月10日金曜日

ふらくた連句#4

ふらくた連句「今宵は雨に」の巻

照屋沙流堂・・・沙流
くらげただよう・・・洋
袴田朱夏・・・朱夏
小澤ほのか・・・ほのか

1 おぼろなり今宵は雨に散るさくら
沙流

2 液晶からは笑みがこぼれる

3 ドローンを無事に野生に帰す日よ
沙流

4 風の谷には姫君おらず

5 廃墟とは王制だった頃ばかり
沙流

6 農耕の血溜まりを吸い上げ
朱夏

7 鍬たてて空はミレーの薄い赤
沙流

8 からすの寝床崩れ落ち行く

9 南口の再開発の大移動
沙流

10 TSUTAYAを墓標にせぬと爆借りす
朱夏

11 いつか見る、けど今日じゃないものばかり
沙流

12 未読の増えるLINEを閉じて

13 全方位カメラで記録した冬の
朱夏

14 立ちのぼる息みんな白くて

15 明け方に歩ける者は戻り来て
沙流

16 また去っていくひとりひとりと
ほのか

17 ひらかねば三面鏡のなかにきみ
沙流

18 耳を澄まして聞く笑い声

19 乾燥後はがすタイプの青春が
朱夏

20 日に日に膝小僧を覆って

21 ループしているかもしれぬ予感して
沙流

22 魔法少女はラベンダー嗅ぐ

23 いいねしたツイート全て消える夢
朱夏

24 オレに惚れるとヤケドをするぜ
沙流

25 勇敢で命知らずの消防士
沙流

26 花を受け取るときにかがめり
朱夏

27 言葉以上に大いに語り

28 幼子がつかまえてきたはじめての海
朱夏

29 クレヨンの、ぐりぐりの、でもいきいきと
沙流

30 胃袋を描くお医者さんごっこ
朱夏

31 クレジットカードのおもちゃでお支払い

32 枯葉で詰まっている貯金箱
沙流

33 三人でたぬきうどんをすする昼

34 ソーシャルディスタンスをしぶきがまたぐ
朱夏

35 非常時局の逢瀬ひとしお
沙流

36 伝説の松の木で待つ夕映えに

37 間違って来たウイリアムテル
朱夏

38 ニュートンの頭にりんご落ちてきて

39 そうか俺にも引力はある
朱夏

40 磁力もあるよと砂場に入れる棒磁石

41 距離の二乗に比例する恋
朱夏

42 太陽系のようにつり合う
沙流

43 裏口も消毒してとかの医大
朱夏

44 リノリウム床でこけそうな母
沙流

45 ポケットの財布が薄い父と行く

46 乗らず眺める回転木馬
ほのか

47 来る度に変な顔する恋人を
沙流

48 心の中のアルバムに貼る

49 新星と自分で言って俺たちは
朱夏

50 椅子をまたいで座るほど暇
沙流

51 事件などない村落の駐在所
沙流

52 十円拾って得意顔する
ほのか

53 うたた寝がうたたたたた寝になるくらい
朱夏

54 苦労をさけて生きてきたのに
沙流

55 突風にぶつかるように恋がきて
沙流

56 大友克洋風のめり込み
沙流

57 IOCもアキラを読んでいたのだろう
沙流

58 月夜を行くは盗んだバイク

59 夜の校舎の消防設備の赤い光
沙流

60 から火が吹いてしまう可能性
朱夏

61 バケツにはザリガニもろ手あげており
沙流

62 負けず嫌いは拳をにぎる

63 消し方のわからぬ電子ペーパーを
朱夏

64 電池切れまで放置して秋

65 オクトーバーフェストで唄う赤ら顔
沙流

66 動画の声が響く教室
沙流

67 ざく切りのポトフの野菜切り足りぬ
沙流

68 かかってきな! と叩くまな板
沙流

69 すっぱりとご縁が切れる包丁を

70 プレゼントされて早速つかう
沙流

71 非常食グルメランキングの企画
沙流

72 賞味期限切れの乾パンは

73 一列のはてしない蟻の行列の
沙流

74 先でガンジーが殴られている
朱夏

75 足跡はいまも未来に行きたがる
沙流

76 決戦の朝にみるへんな夢
沙流

77 炭酸の破裂動画を巻き戻し
朱夏

78 誰かになってゆくユーチューバー
沙流

79 そのうちに何かで謝罪する流れ
沙流

80 昼には水になる雪だるま
沙流

81 戦いの意味も解らず子が振るう
朱夏

82 勇者の剣をもつから勇者
沙流

83 知らんけど貴方の盾になりましょう
朱夏

84 苦労がいやな天才タイプ
沙流

85 人知れず飛花落葉に涙して
沙流

86 錠剤はもう水なしで飲む
沙流

87 つながった思考回路の電圧が
朱夏

88 水に浸かってショートをおこす
ほのか

89 竹落葉そうマイペースマイペース
沙流

90 入口の札がCLOSEDのまま
沙流

91 店長は窓から街をながめては
沙流

92 いつOPENにするか占う
ほのか

93 カランコロンいつも口ずさんでいる
朱夏

94 七の段だけ暗記できずに

95 笑うときポストモダニズムの顔で
沙流

96 あなたの胸に幽閉される
朱夏

97 古典には過去世の二人記されて
沙流

98 クライマックスのシーン、散逸
沙流

99 一足先にクイとやられたさかずきを
朱夏

100 酔った拍子にいろいろのぽろり
沙流

2020年4月5日日曜日

「キャラメライゼーション」2008.11.24

  キャラメライゼーション

一粒で300メートル走りきてもろ手を挙げる川面の男

待ち合わせは橋の真ん中、不健康な逢引きなのにグリコのネオン

ご当地の菓子売る店で本当のご当地は問わず楽しむルール

食物の形に君は信じるか、ブロック状のこのプロダクト

made from かmade of かを訊きながら君の素材の変容を思う

幼子の初の快楽(けらく)はその小さき口にふふませられし立方

水平に沈む夕日を万力で押せばお前が湯気たててゆく

複雑な化学変化であるべきを欲望と君は簡単に言う

キャラメ汝のライ悲しみはゼー溶けて変容しゆく歓ション喜まで

褐色の俺が小さく固まって薄い包装をいそいそと着る

モスクワを目指さぬ我にジンギスカン風味の粒は美味ならずなり

2020年4月4日土曜日

ふらくた連句#3

ふらくた連句「今宵は雨に」の巻

照屋沙流堂・・・沙流
くらげただよう・・・洋
袴田朱夏・・・朱夏
小澤ほのか・・・ほのか
寿々多実果・・・多実果
珈琲と俳句・・・珈俳

1 おぼろなり今宵は雨に散るさくら
沙流

2 液晶からは笑みがこぼれる

3 ドローンを無事に野生に帰す日よ
沙流

4 鉄のにおいの種火はいずこ
朱夏

5 北風を追い越してゆく三輪車

6 ひとりカーネルおじさんに泣く
朱夏

7 極東の醤油の匂いする街に
沙流

8 まだ慣れなくてハナミズキ咲く
朱夏

9 君色に染める便箋買いに行き

10 売り切れていて雑草を踏む
朱夏

11 シュガーレスの平和はくせのある甘さ
沙流

12 ユニットバスですすむ宿題
沙流

13 いつまでも続かなかった夏休み

14 きみがログインしてこない町
沙流

15 コンビニの中だけまぶしき都会かな
沙流

16 誘蛾灯から遠く離れて

17 選べるのなら味覚だな死ぬときの
朱夏

18 ショートケーキを君に捧げる
ほのか

19 われの分もあるでしょうねと犬が待ち
沙流

20 なんだなんだとキリンがのぞく

21 春風にたべっ子どうぶつのくずが
朱夏

22 幼稚園児に追い抜かされる

23 幾人か裾ひるがえり春の風
沙流

24 叱るならくるぶしの下まで
朱夏

25 見て見ないふりする小鳥集まって

26 有言不実行のかしまし
沙流

27 ウグイスの声のテクニック以上の
朱夏

28 バットさばきで本塁打打つ

29 ほら俺の言ったとおりにすりゃ勝てる
沙流

30 気持ちの良さは別のはなしだ
多実果

31 朝九時に言い訳をするネクタイが
朱夏

32 空いた電車でやたらと重い

33 ついてきたウリ坊二匹まる抱え
沙流

34 恋仲だったようでひくひく
朱夏

35 モルモットのとがめるような黒い目が
沙流

36 もう死神のそれに近いし
朱夏

37 降伏の証しにならぬ赤い旗

38 洗っておけば明日は啓蟄
朱夏

39 降り止まぬ雨を眺めるヒヤシンス

40 嫉妬は愛か悩むゼピュロス
沙流

41 怒ってる顔してくれてありがとう
沙流

42 への字の口にポッキー差して
沙流

43 おっさんはだれか一人でいいだろと
朱夏

44 誰も取らないドラフト会議

45 式場の知人のいない丸テーブル
沙流

46 くしゃみをしてもひとりのままで

47 ペットボトルに詰めた草花息をして
朱夏

48 あなたのいない日々を数える

49 きみ思うゆえにわれあり夕まつり
沙流

50 塩だけで焼きとうもろこしを
朱夏

51 裏道へへっぴり腰で肝試し

52 蝋燭の火は絶やさずに居れ
ほのか

53 言葉なくも胸はたしかにあたたかき
沙流

54 オランウータンの毛を風が引く
沙流

55 ふるさとのにおいを忘れ食うバナナ

56 星の並びは自分で決めろ
朱夏

57 ビリヤード終わっても帰りたがらない
沙流

58 魔女だったけど今は猫です
朱夏

59 つぶれないように立ち寄る古本屋
朱夏

60 犯人の名を目次に書かれ

61 ポートピアの風評被害いまいずこ
沙流

62 ヤスと気安く呼んでくれるな

63 友達のゲームをついに借りたまま
沙流

64 引越し作業は進んでいった
ほのか

65 誰もいないはずの居間からカタコトと
朱夏

66 おもちゃのチャチャチャおばけのケケケ
沙流

67 猫たちが迷子になってニャンニャンニャ

68 ドラゴンレーダーに多すぎる数
沙流

69 空からはギャルのパンティ降り止まぬ

70 触って融けたけどこれは何
朱夏

71 てのひらの温もり欲しい画面越し

72 デスクトップは指紋だらけで
ほのか

73 スクロールのジェスチャー上じゃなくて下
沙流

74 遠隔操作でわれも、神も
沙流

75 混線で俺がお前で俺は俺

76 ラジオのダイヤル位置落ち着かず
沙流

77 司会者がスマホをカンペ代わりにして
朱夏

78 大々的に遠隔離婚

79 ファックスであえて手書きのご報告
沙流

80 読まずに食べる黒山羊を飼う

81 ポストペットでメールしてるのオレだけか
沙流

82 拡張子から危険な香り
沙流

83 寄越すならzipにしろと急かされて

84 Macでずれるアスキーアート
沙流

85 ギコ猫がオマエモナーと煽り出す

86 さっきほんとにД(ダー)の口した
沙流

87 ご立派な顎を持つプロレスラーが

88 車椅子でも元気ですかと
多実果

89 ぬか床に吸い込まれて立った地には
朱夏

90 すべてが生きているからめまい
沙流

91 東京の夜景が見えるレストラン
沙流

92 歯医者の待合室の雑誌に
沙流

93 一ヶ月着回しおしゃれ特集が

94 見るだけで満腹で珈琲
珈俳

95 横文字というかあくまでカタカナ化
沙流

96 うちはカフェじゃあねえよと店主
珈俳

97 古民家にパラボラアンテナ取り付けて
沙流

98 縄文の別れ話を受信す
朱夏

99 ひまわりがひっきりなしに首捻る

100 ひと足お先に迷路脱出
沙流