2015年11月1日日曜日

2012年9月11日〜30日の49首

一年半原発の文字を追いつつも半減したる手応えもあり

21世紀初日の如くして911は燃え上がりけり

言論に述志の気風消えうせて発電所の煙たなびくごとし

我の為に広告さえも選ばれてネットワークの外堀深し

「述志とかカッコつけてるだけよねえ」マックで女子高生らが笑う

病む友のおそらくは命からがらの明るいメールを息とめて見る

カクパトリックの貨幣石圏の熱の夢、可視化されねば今は無きごとし

カンブリア紀の大爆発と大虐殺の豊かで殺伐たる悲しみの

新宿駅の石もて追わるる貨物車両、車両なきあとも石は投げたし

魅惑とは"わからない"こと、また君がひとつベールを脱いでしまえり

類似とは"べつべつ"のこと、やがて君とも類似の未来を歩むと思えば

崩壊を感じつつ父は父として崩壊するか、百日紅まだ

大げさに空の青さを驚いてかつて歌人は見神の職

ルーチンという語の忌まわしさ、生命は終わる時こそ一瞬と知れば

同世代の活躍がちらほら見えてポッキー三本まとめてかじる

陰謀という名の君の世界への善側にいたい願いのかたち

「弱肉強食福祉社会」の到来に備えんとしてどちらか迷う

大丈夫すぐ降る雨はすぐに止む、永い悲しみのひとときに言う

さめやらぬ地表に少し水落ちて最期は水で満ちると思う

深淵で怪物に目を見らるごと端末は我を端末とせり

文学は救うと思うな、足跡に頬を付けたき心はあれど

咆吼にかたちがあらわ、勇敢より卑怯に依って生きたいのちの

髪をほどいて帰りを待つと思いしが帰らぬ、クリック音が響けり

孤独とは耳から糸を垂らしつつ誰のことをも思わぬ時間

私のは中心のない自由です、なんでもありでなんにもなしの

人間界に風がそよめき、このような嬉しさをメールには入れられず

たしかに死が解放であるならば苦楽の釣り合わぬ茜雲

消費の覚めないような夢に居て充実は指をこぼれるモーラ

天才に噛み付いて若き青年は中年となり、甘美もありぬ

生きがいのない日々となり小人は閑居するなり文明生活

昏き夜に船と船とがゆるやかに行き交うように君を思うよ

ドードーの最後の一羽の眠る時の夢を悲しむほどの感傷

人類と合わぬ種は弱小とされ、アスファルトにコアラの死のマーチ

生き物は心拍とともにドメインを渡る、誰かの呼ぶ声がする

世界とは心拍のこと、自分とは違うリズムに耳を付けたり

サルトルは文学に飢えた俺たちに何をくれたか考える朝

いっせいに磁石の赤は北を指しもう北について議論は出来ず

紫外線や磁性や超音波の国で衆生を度する仏もあらむ

五十億年後の膨張しきったる太陽は豚のように笑うか

思い出に十年ぶりに追記する夜のドライブ、奇跡を走る

ウェブ上で"友達"となりもうこれで関係は固定されて動かぬ

お祭りがあるのであろう神社から少し離れてあくびする猫

人生に弾圧もなく、眼前に入道雲が消えぬドライブ

去り際に少しく膝を曲げたのはご褒美なのか疑うトマス

脳みそが永遠を理解する頃にもう一度君に逢えると思う

夕方にリビングでひとり泣くような老後もありぬ、涙があれば

一日の終わりの終わり、休息が希望とならば死とはあるいは

知をかさね遂には信に至らずば掌(て)の一滴を二文字と知れり

肝心要は最初か最後、君だけが最後であればおおかたはよし

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