2018年6月9日土曜日

2018年05月うたの日自作品31首。

「名」
花の名も分からぬようになりたるにふたりで立ち止まって、眺めおり

「翡翠」
その白い首にひとつぶ光らせてずいぶん時が過ぎたよ翡翠

「邦」
わが裸体のジャーン! 本邦初公開! と言いおわる前にがっつくんかい

「タンポポ」
たんぽぽがぼくの背丈を越えるとき先に行くよと声がしたんだ

「呼」
ヒップホップもフォークソングになってゆく短歌も呼ばれるところへゆくか

「皐月」
久しぶりにまた会えました頭上には皐月の晴れの満面の青

「粉」
しっとりと甘みの染みた欲望に思想の粉末をまぶしてわたし

「展」
間違った立方体の展開図の余りのようにきみは重なるね

「戦後」
「5年だよ、戦後5年」と笑ってるお前の離婚、どうよ平和は

「自由詠」
夜空では星がまたたくはすかいのアパートでは親が子をまたたたく

「原チャリ」
原チャリが大破したときクルクルクルッスタッと着地したる思い出

「香」
悲しみと怒りでオレはテーブルをムグとかかじった、すこしかうばし

「百合」
百合という言葉で括ってしまいたくない思い出がある(とても百合)

「相」
ぼくだってつとめて明るい顔してる相談相手になれないからね

「ソーダ」
初夏だからまぶしい恋もいいだろう甘いばかりの、ソーダ、ソーダ!

「新しい色名を考えてください」
就職が決まった彼女を労(ねぎら)って切ったスマホの黒真顔色

「雷」
暴風雨にわざわざ宝くじを買う雷避けの意味なんだって

「かばん」
いざという時に備えて三冊はかばんに入れてスマホ見ている

「著」
白秋ちょ、龍之介ちょ、あとこれは高橋なんとかちょが揃ってる

「パソコン」
「パソコンで作ってくれた案内状評判よかったよ」「(エへへ)」

「舎」
日暮里で傘さしてバスを待つ夜ぞ横に立つのは舎人のトトロ

「漬」
あちゃら漬け甘く食いいて豊かさが砂糖でありし歴史の記憶

「森」
塾の帰りにあの森をチャリで抜けるとき君らがいたのをぼくは見てない

「濁」
かきまぜて濁ったままが少しずつ澄みながら落ち着いてやがては

「煙草」
ぷかぷかとのんびり煙草やってたら舌打ちされて小さくぷくり

「紐」
どの色で結ばれているオレたちか「赤だけじゃなく結構あるね」

「実家」
先輩の実家の部屋はなにもなくでも屈託の匂いがあった

「くちばし」
言える時に伝えておけばよかったとくちばしでつついて痛がられ

「ポスト」
少年の将来の夢はポストマン、とても漢字が好きだったから

「起」
起きたのか起きていたのか問わないがすぐに「いいね」が来る朝まだき

「自転車」
駐輪場で白く眠っているのですかつてあんなに走った初夏を

0 件のコメント:

コメントを投稿