2018年10月13日土曜日

2016年12月の自選。

自選。

京橋で君と別れて片町線さびしき、今は違う名前か

気を抜けばクリスマスソング流れたる受付できみが気を抜いている

クラスタの涯まできみを連れてゆくつもりが行けど行けど中心

ポジフィルムと同じ情報量であるネガフィルムで今日のあなたは

まっすぐの飛行機雲もだんだんとほどかれてゆく文明もかく

悪意でもみどりに芽吹くことがあるこの雨でそれが元気にふたば

笑いあり涙ありの物語にて新参なのでぎこちないです

会うときはいつも飛行機が飛んでいてそういう土地ときみにさよなら

泣くときに鼻も流れる生き物としてある限り鼻垂らし泣く

鍋の中に昨夜のおでんが残ってて貨幣価値ではいくらよこのちくわ

三上寛と山下達郎が交互にてかかるスマホに悪意を感じ

「ガンバロー」から「バカヤロー」になるまでをたしかに頑張っていた柊(ひいらぎ)

プライドは猫背のように、治ったら自分でなくなるようにもみえて

天才の主人の苦悩を眺めたる犬のバンクオー長き舌をしまう

生命は生まれやすくて逝きやすい波なき湯舟をずばりとあがる

精神の住所は近いようなるに肉体のそれが二人を分かつ

ありがたい疲れたぼくに満月が死の銀色をわれに届かす

それはまるで奥田民生のカバー曲でみんな民生っぽくなるような

何色の字で惜別を書きましょう時代は口開けるだけで過ぎゆく

頑固なる汚れになってこびりつく恋と呼びいし黒いかたまり

一週間がこんなに早いということは世界が〆に入りたるかも

善ということではなくてわれならぬ命を守るとき生きている

何もかも投げ出したいと思う日のスープレックス、空が無窮だ

神の世を説きし約翰(ヨハネ)のはるかのち天国はないと歌いいし約翰(ジョン)

何も考えず歩こう何も考えず、考えぬとはどういうことか

軽自動車でふたりで眠るあの時が一番友情がやばかった

レトリーバーのドヤ顔、飼い主との散歩たぷたぷときみの満足つづけ

情報の商材として短歌とは一首5円になかなかならぬ

この家の寒天のようなかなしさとよそよそしさよ外で息する

5回くらい大きくぶつかることにより丁度良くなる、星の話ね

伸びるかもしれぬ心よ、伸びるならどこまで大きくなるものなるか

ブルターニュは島根みたいなとこだよと言われて分かったような分からん

意志がつよいことはさびしも鋭くも陽(ひ)に喜んでしたたる氷柱

どの神に従いたれば醜(しこ)となり賤(しず)となること望みて人は

我が内にギブミーチョコレイティズムとう心理のありて師走の夜寒

六時には百分待ちの回る寿司御用納めに消えるエビたち

あの世とのあいだに深い森があり行きたがる子は長生きしない

背景にさびしさ満ちている男、話しかけたらややこしそうだ

縁側に二匹の白い芝犬が足踏みしつつ散歩を待てり

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