2020年5月17日日曜日

#ふらくた連句10

ふらくた連句「今宵は雨に」の巻

照屋沙流堂・・・沙流
野原豆・・・豆
袴田朱夏・・・朱夏
くらげただよう・・・洋
寿々多実果・・・多実果
小澤ほのか・・・ほのか
石川聡・・・聡

1 おぼろなり今宵は雨に散るさくら
沙流

2 涙を拭い踏み出す一歩

3 帽子は忘れたけどくれてやる
沙流

4 しゃらしゃらと葉を揺らす雨嫋やかに

5 また来年も春に逢いたい

6 狼は丘に立ちて、のち去る
沙流

7 蝙蝠の群れて一家は夕焼けに
朱夏

8 シチューのような窓の明るさ
沙流

9 回さずにじっと眺める月球儀

10 あなたの見ているほうが裏です
朱夏

11 着るときに表にしろと畳む服
多実果

12 雨ふるまえの部屋のしずけさ
沙流

13 夏燕飛びゆく空に雲はなく
ほのか

14 アスファルトより黒々と影

15 すりむいたひざの分だけ少年は
朱夏

16 濤乱刃なる小刀かくす

17 「おいそこの顔を見せない配送員!」
沙流

18 「これが素顔」とのっぺらぼうは

19 ペッパー君が甲高い声であやまって
沙流

20 繰り返されるオンライン飲み

21 白いマスクにU字への字の口を書き
多実果

22 同僚の死を占っている
朱夏

23 77度の焼酎売りだされ春暖

24 チューリップらは首を失う

25 拾うのは薔薇の援軍赤母衣衆

26 足りぬ足りぬと九尾の狐

27 心臓がいくつあっても死は一度
沙流

28 銀の弾丸込めてかまえる

29 座禅する師匠の背中壁のごとく
沙流

30 崩されるのは無実の豆腐

31 祖母山も切羽も詰まる頃なれど

32 実家暮らしの姫の退屈
沙流

33 手すさびにレースなんかを編んでみる
ほのか

34 終焉までの橙の日々
朱夏

35 もうリンゴ食べ飽きたなとアダム、エヴァ

36 あばら骨から矢じりをつくる

37 マンモスの倒れた時の地の響き
沙流

38 かき消してゆくヒトの雄叫び

39 本日も正義の感染者が増えて
沙流

40 日が沈んでくインカ帝国

41 ものうげなアルパカの耳が笛を聞き
沙流

42 長いまつげが微かに揺れる
多実果

43 五月雨の檻に囲まれ夜が来る

44 置き時計には横顔の月
沙流

45 豆苗の二度萌え激し月眠る

46 白南風の尾を掴めぬままで

47 狐には化かされまくりのお爺さん
ほのか

48 宇宙に向かってひとりにこにこ
沙流

49 素麺が流れ続ける天の川

50 誰にも見えぬむらさきの糸
朱夏

51 ひっぱってくれたらついていきたいよ
沙流

52 くじ引き引いて残念賞を

53 君と会うさだめにあった僕たちは
ほのか

54 季節の中で殴りあってる

55 夕焼けに響き渡った笑い声

56 砂はねてゆく濡れたサンダル
沙流

57 思い出はテトラポットの向こう側
沙流

58 未練の砂を時計に詰める

59 白髪でも伸びていきますあなたまで
朱夏

60 浦島太郎の眉の小筆で

61 筆ペンのインクが切れて墨を磨り
多実果

62 試し書きほど上手いあるある
沙流

63 話すことはないし切れない長電話
沙流

64 地球の裏はいつもブラジル
沙流

65 翻訳を関西弁にしたき顔
沙流

66 げに柔らかきたこ焼きソース
沙流

67 小麦粉がなく片栗粉買い占める

68 とろみが足りぬ世論のために
沙流

69 固まってネイルアートになる光
朱夏

70 ホタル捉える合掌の手で

71 お勤めのりんの響きが消えてから
多実果

72 開眼すれば脳漿の澄む
朱夏

73 去年今年繋ぐ棒きれ百八つ

74 PPAPのおれはどのP
沙流

75 ドロンパの視線の先にふわふわと

76 ペロリンキャンディのぐるぐるピンク
沙流

77 点Pが仲間を呼んで合体し
朱夏

78 海わたる蝶のはるばる紙ふぶき
沙流

79 天を数える単位を問えばもう冬で
朱夏

80 ベテルギウスが燃え尽きてゆく

81 恒星の起こす爆発予想して
ほのか

82 ロングシュートをねらうキャプテン
沙流

83 翼があれば岬までゆく

84 それまでは顔面ブロック石の崎にて
朱夏

85 日向の道を行ったり来たり

86 すれ違う長い渡り廊下で
沙流

87 友達にパロスペシャルをかけられて
沙流

88 「悪かったよ」と牛丼店へ
ほのか

89 我がスネに七つの傷がきざまれる

90 世紀末まであと八十年
朱夏

91 その頃はほぼほぼすでに死んでいる
沙流

92 百トンハンマー振り回されて

93 XYZと書き込むSNS
朱夏

94 伝言板を探す毎日
ほのか

95 お宝は三人姉妹の予告状
沙流

96 猫の瞳は夜中にひかる

97 いつまでもカリオストロの城にいて
朱夏

98 散る花びらは心を盗む

99 夕闇に花ぬすびとを見逃して
多実果

100 願い叶える星を集める

2020年5月8日金曜日

ふらくた連句#9

ふらくた連句「今宵は雨に」の巻

照屋沙流堂・・・沙流
野原豆・・・豆
袴田朱夏・・・朱夏
くらげただよう・・・洋
寿々多実果・・・多実果
小澤ほのか・・・ほのか
石川聡・・・聡
おふうちゃん・・・ふう
珈琲と俳句・・・珈俳
瓦すずめ・・・すずめ

1 おぼろなり今宵は雨に散るさくら
沙流

2 涙を拭い踏み出す一歩

3 帽子は忘れたけどくれてやる
沙流

4 しゃらしゃらと葉を揺らす雨嫋やかに

5 また来年も春に逢いたい

6 狼は丘に立ちて、のち去る
沙流

7 蝙蝠の群れて一家は夕焼けに
朱夏

8 シチューのような窓の明るさ
沙流

9 回さずにじっと眺める月球儀

10 あなたの見ているほうが裏です
朱夏

11 着るときに表にしろと畳む服
多実果

12 雨ふるまえの部屋のしずけさ
沙流

13 夏燕飛びゆく空に雲はなく
ほのか

14 アスファルトより黒々と影

15 すりむいたひざの分だけ少年は
朱夏

16 濤乱刃なる小刀かくす

17 「おいそこの顔を見せない配送員!」
沙流

18 「これが素顔」とのっぺらぼうは

19 ペッパー君が甲高い声であやまって
沙流

20 繰り返されるオンライン飲み

21 白いマスクにU字への字の口を書き
多実果

22 同僚の死を占っている
朱夏

23 77度の焼酎売りだされ春暖

24 チューリップらは首を失う

25 拾うのは薔薇の援軍赤母衣衆

26 足りぬ足りぬと九尾の狐

27 心臓がいくつあっても死は一度
沙流

28 銀の弾丸込めてかまえる

29 座禅する師匠の背中壁のごとく
沙流

30 崩されるのは無実の豆腐

31 祖母山も切羽も詰まる頃なれど

32 実家暮らしの姫の退屈
沙流

33 手すさびにレースなんかを編んでみる
ほのか

34 終焉までの橙の日々
朱夏

35 もうリンゴ食べ飽きたなとアダム、エヴァ

36 あばら骨から矢じりをつくる

37 マンモスの倒れた時の地の響き
沙流

38 かき消してゆくヒトの雄叫び

39 本日も正義の感染者が増えて
沙流

40 日が沈んでくインカ帝国

41 ものうげなアルパカの耳が笛を聞き
沙流

42 長いまつげが微かに揺れる
多実果

43 五月雨の檻に囲まれ夜が来る

44 置き時計には横顔の月
沙流

45 豆苗の二度萌え激し月眠る

46 白南風の尾を掴めぬままで

47 狐には化かされまくりのお爺さん
ほのか

48 宇宙に向かってひとりにこにこ
沙流

49 素麺が流れ続ける天の川

50 誰にも見えぬむらさきの糸
朱夏

51 ひっぱってくれたらついていきたいよ
沙流

52 くじ引き引いて残念賞を

53 虚しさは仕舞い忘れた夜に降る

54 ひきだしの奥にわずかな希望
沙流

55 ドラえもん色につま先染めて

56 サンダル買いにスキップでいく
多実果

57 ひとめぼれこれはおそらく両想い
沙流

58 米を買うならコシヒカリだな

59 握り飯なかへひとつぶ愛をうめ

60 交わす言葉に花がほころぶ

61 あちこちで蛙合戦
ふう
🐸始まりぬ
62 つはものどもが水掻きの跡

63 空っぽになったカレー皿をどけ

64 これがお目当てセットの珈琲
珈俳

65 早起きをすればポチ鳴く裏の畑
ふう

66 フードをかぶった男あやしき
沙流

67 情報を得るならばあの地下喫茶
珈俳

68 ブルーの角砂糖が合図だ
朱夏

69 颯爽とジェイムズ・ボンド美女と行く

70 英国紳士で珈琲党で
珈俳

71 あの鳥はいったい誰が殺したの
ふう

72 名探偵のお手を拝借

73 マライヒの淹れる珈琲は苦い
珈俳

74 この橋を渡りきれば埼玉
沙流

75 ゴリゴリと観測船が割りゆけば
朱夏

76 部屋でギャン弾きするエアギター
沙流

77 「あんた何やってるのん」と母は問う
ほのか

78 青春以外立ち入り禁止!
沙流

79 若き日を楽しんできたオトナたち
ほのか

80 老いても事を仕損じている
沙流

81 年齢を乱数表で指定する
朱夏

82 社長室には女子高生が

83 地球儀を回すましろくながい指
沙流

84 日付変更線に逆らい

85 遊星の軌道たのしく鳴るパチカ
朱夏

86 修正できぬ検事法案

87 灰色の砂消しゴムですぐ破れ
沙流

88 青い砂漠の夜の後悔
沙流

89 もう二度と会えないことを知りながら
沙流

90 詩集を借りる雨傘を貸す
多実果

91 飲み込んだ言葉の行き先はどこか

92 山羊さんの胃袋の中へと
ほのか

93 初夏のコロポックルのペンライト
すずめ

94 きみを待ってるきのこの椅子で

95 笑茸かもしれないと毒味して
多実果

96 ぐねぐねしたる子の握り飯
すずめ

97 わがままな幼い神は電池切れ
沙流

98 夢でもすぐに遊びのつづき
沙流

99 思い出す粘土細工に遊びし日
ほのか

100 その要領で明日の手づくり
沙流

2020年5月6日水曜日

ふらくた連句#8

ふらくた連句「今宵は雨に」の巻

照屋沙流堂・・・沙流
くらげただよう・・・洋
小澤ほのか・・・ほのか
袴田朱夏・・・朱夏
寿々多実果・・・多実果
藍笹キミコ・・・竹林堂
珈琲と俳句・・・珈俳

1 おぼろなり今宵は雨に散るさくら
沙流

2 液晶からは笑みがこぼれる

3 ドローンを無事に野生に帰す日よ
沙流

4 個人情報回収はして
ほのか

5 コレクションルームに横たえるパスタ
朱夏

6 ソムリエールは月光浴す

7 脱ぐごとにかたちは不定形となり
沙流

8 洗濯ものにアイロンかける
ほのか

9 ひまわりと背比べする園児達

10 かざした腕は雲をかくして
朱夏

11 ドーナツの輪っかを風は吹き抜ける

12 輪っかでないところも吹き抜ける
朱夏

13 北風が南風へと移りゆく
ほのか

14 知らない国の地図を広げる

15 赤えんぴつを耳に挟んだ先生は
沙流

16 ぼくの未来に印をつける
朱夏

17 耳たぶに小鳥のピアス羽ばたいて

18 とても桜が、さくら色です
沙流

19 ちゃんと読むつもりで開くマニュアルに
朱夏

20 生き急がねば使わぬ機能
沙流

21 高い木の人に届かぬ柑橘の
沙流

22 月に届かぬさみしさばかり

23 初雪のガラス細工が終わらずに
朱夏

24 ショーケースには林檎を並べ
多実果

25 引力からは逃れぬふたり

26 連星となって回れば宇宙の輪舞
朱夏

27 踊りつつソーシャルディスタンスは保つ
多実果

28 水平線に届くため息

29 いつまでも壊れたままの幽霊船
沙流

30 霧のむこうは16世紀
沙流

31 一粒を眉間で受けて雨と知り
朱夏

32 あなたのいない場所へと向かう

33 フルートの音色が未来から聞こえ
沙流

34 児らは空き地に並んで座る
ほのか

35 缶蹴りの缶だけ残る午後六時
多実果

36 秋刀魚を焼いたにおいを辿る

37 絵巻物の雲に隠れて盗み食い
沙流

38 遠くにヤコブのエスカレーター
沙流

39 堕天使は輪っかを外し羽根を脱ぎ
多実果

40 悪魔は拾い集めて回り

41 洗濯物外には干せず部屋干しで
ほのか

42 手縫いのマスクぶら下げている
多実果

43 沈黙は金か銀かと将棋盤

44 と金ははしゃいでも捨て駒だ
朱夏

45 一円をみなから集めて元気玉
沙流

46 返礼品は2枚のマスク
朱夏

47 笛吹きが笛を鳴らせず一人去る

48 蛇は壺からなぞって逃げる
沙流

49 カレーにも味噌汁なんてと思うだろ?
沙流

50 「スープスープ!」と叫ぶインド人
ほのか

51 スマイルで首を左右に揺らし来て
沙流

52 線香のけむり迷いつつ消ゆ
沙流

53 校庭のイチョウのそばに埋めました
沙流

54 連休にどう緩んだかのメモ
朱夏

55 青ばかり減る絵日記をよしとして
沙流

56 工作の指の棘がとれない
沙流

57 友達は異性の話で盛りあがり
沙流

58 そのあとわたしにキスなどする
朱夏

59 一切はじゃんけんだ、なんてうそぶいて
沙流

60 鋏じゃなくて鉄砲のチョキ
多実果

61 ひび割れたきみのスマホはなおせない
沙流

62 繰り返してる留守番電話
ほのか

63 失踪の部屋の壁に画鋲だけで
朱夏

64 失意に至るあこがれの跡
沙流

65 展示中の旧ソ連圏のデザイン画
沙流

66 「空か海かで揉めろ」と題は
朱夏

67 ペンギンよ飛ぶのも泳ぐのも同じ
沙流

68 笑うのも泣くのも同じこと
沙流

69 厄災をにげて岬のいきどまり
沙流

70 追いつめられたことに気づかず
多実果

71 壁を背にしたら何かにくすぐられ
朱夏

72 どん兵衛一年分の崩壊
沙流

73 五百年夢見続けた座礁船
朱夏

74 甲板でけさもラジオ体操
沙流

75 蟹といっしょに泣き戯れて

76 蠍とはあまり話をしないけど
ほのか

77 隠し持ってるのりピー語録

78 証拠を前にただ黙秘権
沙流

79 タピオカが吸えぬ細さのストローで
沙流

80 品定めする姫の目ぢから
沙流

81 マスカラ落とすパンダの母に

82 閉口をするもしないもあたたかなりき
朱夏

83 真実の口にひとつぶチョコを置き
沙流

84 舌が出るのを朝まで待って
多実果

85 金網のひるがおゆっくりとひらく
沙流

86 仕事無き日はアラーム鳴らぬ

87 眠そうな顔でいつまでいれるやら
沙流

88 連休明けは仕事がこわい
多実果

89 窓開けてピーター・パンを待つ夜に

90 ブンブブ ブンブブ ブンブン うるせー
沙流

91 蚊を潰す快感に似た死生観
竹林堂

92 吸血鬼たち献血へ行き

93 朱い息朝に間に合わない湿り
朱夏

94 エスプレッソをぐいと一飲み
珈俳

95 マスク中の後味のこと考えて
沙流

96 ペパーミントを縫い込んでいる
朱夏

97 いつの日かきみに孤独をあげるため
沙流

98 枯れてく花の名を教えよう

99 生きていく使命感とはあるもので
ほのか

100 夕日と交わす約束がある

ふらくた連句#7

ふらくた連句「今宵は雨に」の巻

照屋沙流堂・・・沙流
野原豆・・・豆
袴田朱夏・・・朱夏
くらげただよう・・・洋
寿々多実果・・・多実果
小澤ほのか・・・ほのか
石川聡・・・聡

1 おぼろなり今宵は雨に散るさくら
沙流

2 涙を拭い踏み出す一歩

3 帽子は忘れたけどくれてやる
沙流

4 しゃらしゃらと葉を揺らす雨嫋やかに

5 また来年も春に逢いたい

6 狼は丘に立ちて、のち去る
沙流

7 蝙蝠の群れて一家は夕焼けに
朱夏

8 シチューのような窓の明るさ
沙流

9 回さずにじっと眺める月球儀

10 あなたの見ているほうが裏です
朱夏

11 着るときに表にしろと畳む服
多実果

12 雨ふるまえの部屋のしずけさ
沙流

13 夏燕飛びゆく空に雲はなく
ほのか

14 アスファルトより黒々と影

15 すりむいたひざの分だけ少年は
朱夏

16 濤乱刃なる小刀かくす

17 「おいそこの顔を見せない配送員!」
沙流

18 「これが素顔」とのっぺらぼうは

19 ペッパー君が甲高い声であやまって
沙流

20 繰り返されるオンライン飲み

21 白いマスクにU字への字の口を書き
多実果

22 同僚の死を占っている
朱夏

23 77度の焼酎売りだされ春暖

24 チューリップらは首を失う

25 拾うのは薔薇の援軍赤母衣衆

26 足りぬ足りぬと九尾の狐

27 心臓がいくつあっても死は一度
沙流

28 銀の弾丸込めてかまえる

29 座禅する師匠の背中壁のごとく
沙流

30 崩されるのは無実の豆腐

31 祖母山も切羽も詰まる頃なれど

32 実家暮らしの姫の退屈
沙流

33 手すさびにレースなんかを編んでみる
ほのか

34 終焉までの橙の日々
朱夏

35 もうリンゴ食べ飽きたなとアダム、エヴァ

36 あばら骨から矢じりをつくる

37 マンモスの倒れた時の地の響き
沙流

38 かき消してゆくヒトの雄叫び

39 本日も正義の感染者が増えて
沙流

40 日が沈んでくインカ帝国

41 ものうげなアルパカの耳が笛を聞き
沙流

42 長いまつげが微かに揺れる
多実果

43 五月雨の檻に囲まれ夜が来る

44 置き時計には横顔の月
沙流

45 豆苗の二度萌え激し月眠る

46 白南風の尾を掴めぬままで

47 狐には化かされまくりのお爺さん
ほのか

48 宇宙に向かってひとりにこにこ
沙流

49 素麺が流れ続ける天の川

50 誰にも見えぬむらさきの糸
朱夏

51 ひっぱってくれたらついていきたいよ
沙流

52 くじ引き引いて残念賞を

53 君と会うさだめにあった僕たちは
ほのか

54 季節の中で殴りあってる

55 夕焼けに響き渡った笑い声

56 砂はねてゆく濡れたサンダル
沙流

57 思い出はテトラポットの向こう側
沙流

58 未練の砂を時計に詰める

59 白髪でも伸びていきますあなたまで
朱夏

60 浦島太郎の眉の小筆で

61 筆ペンのインクが切れて墨を磨り
多実果

62 試し書きほど上手いあるある
沙流

63 話すことはないし切れない長電話
沙流

64 地球の裏はいつもブラジル
沙流

65 翻訳を関西弁にしたき顔
沙流

66 げに柔らかきたこ焼きソース
沙流

67 小麦粉がなく片栗粉買い占める

68 とろみが足りぬ世論のために
沙流

69 固まってネイルアートになる光
朱夏

70 ホタル捉える合掌の手で

71 お勤めのりんの響きが消えてから
多実果

72 開眼すれば脳漿の澄む
朱夏

73 去年今年繋ぐ棒きれ百八つ

74 PPAPのおれはどのP
沙流

75 ドロンパの視線の先にふわふわと

76 ペロリンキャンディのぐるぐるピンク
沙流

77 点Pが仲間を呼んで合体し
朱夏

78 海わたる蝶のはるばる紙ふぶき
沙流

79 天を数える単位を問えばもう冬で
朱夏

80 ベテルギウスが燃え尽きてゆく

81 恒星の起こす爆発予想して
ほのか

82 ロングシュートをねらうキャプテン
沙流

83 翼があれば岬までゆく

84 それまでは顔面ブロック石の崎にて
朱夏

85 咳をして一人が消える海沿いの
朱夏

86 低い霧笛がひびく空腹
沙流

87 マドロスに憧れて横縞のシャツ
沙流

88 幼な児は言う「ウォーリーがいる」
ほのか

89 赤いメガネの度が合わなくて

90 月はもう朧というか貴方と一緒
朱夏

91 謝ってくるだろうから許さない
沙流

92 背中に書いてあるかのように
朱夏

93 そのむかし男は無口だったとか
沙流

94 チャックがこわれはみ出して

95 このあとは地図の要らない時間です
朱夏

96 今夜の君は北極星で

97 見上げれば空いっぱいのことばたち
沙流

98 祈りであったことを湛えて
朱夏

99 壺のインクは静かに揺れる

100 言の葉を螺旋に孕むガラスペン
多実果

2020年5月3日日曜日

ふらくた連句#6

ふらくた連句「今宵は雨に」の巻

照屋沙流堂・・・沙流
くらげただよう・・・洋
小澤ほのか・・・ほのか
袴田朱夏・・・朱夏
寿々多実果・・・多実果

1 おぼろなり今宵は雨に散るさくら
沙流

2 液晶からは笑みがこぼれる

3 ドローンを無事に野生に帰す日よ
沙流

4 個人情報回収はして
ほのか

5 コレクションルームに横たえるパスタ
朱夏

6 ソムリエールは月光浴す

7 脱ぐごとにかたちは不定形となり
沙流

8 洗濯ものにアイロンかける
ほのか

9 ひまわりと背比べする園児達

10 かざした腕は雲をかくして
朱夏

11 ドーナツの輪っかを風は吹き抜ける

12 輪っかでないところも吹き抜ける
朱夏

13 北風が南風へと移りゆく
ほのか

14 知らない国の地図を広げる

15 赤えんぴつを耳に挟んだ先生は
沙流

16 ぼくの未来に印をつける
朱夏

17 耳たぶに小鳥のピアス羽ばたいて

18 とても桜が、さくら色です
沙流

19 ちゃんと読むつもりで開くマニュアルに
朱夏

20 生き急がねば使わぬ機能
沙流

21 高い木の人に届かぬ柑橘の
沙流

22 月に届かぬさみしさばかり

23 初雪のガラス細工が終わらずに
朱夏

24 ショーケースには林檎を並べ
多実果

25 引力からは逃れぬふたり

26 連星となって回れば宇宙の輪舞
朱夏

27 踊りつつソーシャルディスタンスは保つ
多実果

28 水平線に届くため息

29 いつまでも壊れたままの幽霊船
沙流

30 霧のむこうは16世紀
沙流

31 一粒を眉間で受けて雨と知り
朱夏

32 あなたのいない場所へと向かう

33 フルートの音色が未来から聞こえ
沙流

34 児らは空き地に並んで座る
ほのか

35 缶蹴りの缶だけ残る午後六時
多実果

36 秋刀魚を焼いたにおいを辿る

37 絵巻物の雲に隠れて盗み食い
沙流

38 遠くにヤコブのエスカレーター
沙流

39 堕天使は輪っかを外し羽根を脱ぎ
多実果

40 悪魔は拾い集めて回り

41 洗濯物外には干せず部屋干しで
ほのか

42 手縫いのマスクぶら下げている
多実果

43 沈黙は金か銀かと将棋盤

44 と金ははしゃいでも捨て駒だ
朱夏

45 一円をみなから集めて元気玉
沙流

46 返礼品は2枚のマスク
朱夏

47 笛吹きが笛を鳴らせず一人去る

48 蛇は壺からなぞって逃げる
沙流

49 カレーにも味噌汁なんてと思うだろ?
沙流

50 「スープスープ!」と叫ぶインド人
ほのか

51 スマイルで首を左右に揺らし来て
沙流

52 線香のけむり迷いつつ消ゆ
沙流

53 校庭のイチョウのそばに埋めました
沙流

54 連休にどう緩んだかのメモ
朱夏

55 青ばかり減る絵日記をよしとして
沙流

56 工作の指の棘がとれない
沙流

57 友達は異性の話で盛りあがり
沙流

58 そのあとわたしにキスなどする
朱夏

59 一切はじゃんけんだ、なんてうそぶいて
沙流

60 鋏じゃなくて鉄砲のチョキ
多実果

61 ひび割れたきみのスマホはなおせない
沙流

62 繰り返してる留守番電話
ほのか

63 失踪の部屋の壁に画鋲だけで
朱夏

64 失意に至るあこがれの跡
沙流

65 展示中の旧ソ連圏のデザイン画
沙流

66 「空か海かで揉めろ」と題は
朱夏

67 ペンギンよ飛ぶのも泳ぐのも同じ
沙流

68 笑うのも泣くのも同じこと
沙流

69 厄災をにげて岬のいきどまり
沙流

70 追いつめられたことに気づかず
多実果

71 壁を背にしたら何かにくすぐられ
朱夏

72 どん兵衛一年分の崩壊
沙流

73 スーパーの列に紛れる地縛霊

74 警備員には気づかれている
沙流

75 ど根性ガエルの理屈で進化する
朱夏

76 ガラパゴスまであと何マイル?

77 食べ物にあらざればミトコンドリア
朱夏

78 母から娘へつたう口ぐせ
沙流

79 自家製の梅干し残り少なくて
沙流

80 白米だけの弁当持って

81 水筒に実はジュースを入れてある
沙流

82 おやつ時間にバナナを剥いて

83 工場を眺めてばかりで入らない
沙流

84 月の光は不法侵入

85 ドロボーも靴はキチンと脱いでいて
ほのか

86 手洗いうがいが習慣の人
沙流

87 鳶一閃テイクアウトを急襲し
朱夏

88 すこし遅れてすごい爆音
沙流

89 遠雷に混じった別れ話聞く

90 ふたり冷たく抱きしめあえり
沙流

91 なめらかな肌あらわなる大理石
沙流

92 マグマだまりの体温を知る
朱夏

93 引き返すことを望まぬ青い鳥

94 空に海にと染まって消えた
朱夏

95 平日は酒を飲まないのも狂気
沙流

96 タロットカードの結果に不満
沙流

97 少しだけ数を間違え知らんぷり
ほのか

98 袖から旗がいつまでも出る
沙流

99 幸せをシルクハットに隠しても
朱夏

100 こぼれるほどに愛がいっぱい
多実果