2019年9月8日日曜日

「『降る雪』抄』10首。2009年

「降る雪」抄     2009.1.4


2009年に降る雪に我も降られつつ額(ひたい)の熱は水を垂らすも

故郷(ふるさと)に降る雪これが染みとおり流れる頃に男はおらず

日本海に降る雪はまさに次々と消えてゆく、かく夢は厳しき

杉に降る雪の斜めに積もりゆく春の噴射の養分として

水田に降る雪しんと美しかり、菱形群の向こうにお前

子と犬に降る雪、犬は驚いて子は喜んで我は寂しくて

女に降る雪の明かりのほの白く瞳(ひとみ)と言葉が違う顔なり

雪に降る雪の真白は閉ざされてそのような君の本音ではある

町に降る雪? ああ、蕪村の楼台図その一軒の資格は遠し

空に降る雪は私を持ち上げて宇宙すなわち此処へと運ぶ

2019年6月29日土曜日

2017年04月の自選。


自選。
またひとつ場所奪われて生き物は死ぬか逃げるか隠れるかする

現地人も神を信じるのだろうか蝋燭の火に揺れるラス・カサス

文字なんか残すものかとアンデスの文明は謎がニヤリとひかる

どの道も棲み分け論にいたる朝、公園の鳩がおこぼれを待つ

さかづきに桜と雪が落ちてきて、あれからやはり余生であった

手を汚したくないだけの反戦と好戦の二人気まずくなりぬ

茂吉翁の丸い背中の半纏(はんてん)に問う短歌また国家に資すや

排泄と喜怒哀楽がある限り人間平和の希望は捨てぬ

明るいが感情の起伏大きくてアン・シャーリーがこだわる綴(つづ)り

23時も新宿駅はうじゃうじゃでふたつめのじゃのあたりにわたし

内心の自由それから外心の不自由はとても笑顔がやさし

職場では「はい喜んで」「喜んで!」仕事終わったもう喜ばぬ

スワンボート人の少ないそれゆえに桜の少ない方へ切る舵

思い出にご笑納下さいってか上着を脱げばひとつ花びら

野良猫のような心を抱(いだ)こうとする野良猫のように逃げらる

桜より華やいで君ら若者が外側にあるもの愛でやすき

満員電車をエンジョイしてる白人の「ゴメンナサーイ」がほんといい顔

等身よりすこし大きい化け物と戦うときの人は舞うなり

天国の暮らしもここと変わらんよファミマもあるし金持ちもいる

AIに君のデータを流し込み人権が付与される日を待つ

テロリストもその被害者も運ばれてテロリストを先に助けてよいか

終わりまで楽しむことが知性だと生を叱られ泣いている夢

演歌だと君は心地もよさそうに「あなたについて行くわ」と唄う

強烈な破壊のあとに、ゆっくりとあなたを見つめる時間が出来た

争闘性を引けと鑑三記せるも流されざれば日蓮成るや

ほんとうにこの詰め将棋の詰まるのかわからぬままにそれではあばよ

人間がもっとけものになるまでを象は待ちおり鼻長くして

クレヨンに貼り付いた紙の内側でコクっと折れるような失恋

わたくしの知らない世界を調べよう、知らない単語で検索するだけ

産屋での座位分娩でひりだされおんならに見下ろされて命は

舌鋒の甘い男でいいじゃないか意見を求められるなき世に

夜のライトに我が目がぎらり、いつまでも平和にならぬ世界睨(ね)めつけ

人生が眠いと君が言っているつらいとき僕もそう言い換えた

君がいるのを待っていたような夕方のやっぱりカレーの匂いする路地
#中本速生誕祭

青空が爽やかだから寝転がりたんぽぽ指ではじく失踪

食べ物に霊位を与え食べる世にあらぬ、すなわちすべて食べ物

ああどうも八重桜さん昨年は醜い修羅場を見せちゃいました

原水協、核禁会議、原水禁、10年で分裂した願い

感動的な紋切り型でぼくたちはけっこう寒い海をみている

いい女が通りゆくまで道路工事のおっさんら目で見送る時間

馬の目のうるうるうると透明の涙の膜ぞ今から走る

社会学がかたっぱしから名付けゆく現象に名前ついてないのか?

石なげて人を追いやる思い出をこの村は忘れ春の夜昏し

狭いせまい空間で子と暮らしてるきみを連れ出す花一匁

大きくも小さくもなるが男とはやっぱりどこか丸大ハムだ

一行のよくわからないテキストをいつも書いてる人だ、あれなに?

僕の中に永遠をひとつ飼っていて僕が逝くとき笑ってみてる

異国語でわが感情を抱くことの月があり犬がいてわれいずこ

強い風をつよい気持ちで進みゆく目はモザイクを見るときにして

生きる気力のないのに生きるロジックはよ、国が生かしておくロジックはよ

なんとでも短歌にするよ悲しみも裏返したりやや逸らしたり

キジバトが窓の外では鳴いている彼らには人間をも自然

#自由律
花の盛りをほったらかして仕事

#無季を強引に季語化する
味噌汁が落ち着いてゆき春宇宙

#尻子玉俳句
第二ボタンください、それと尻子玉

おじいちゃんと二度目の別れ尻子玉

火にかけると一応あばれる尻子玉

#言うべきことはほかにあるのに
僕の方があなたのことを好きだった言うべきことはほかにあるのに

#今日もすてきな一日でした
ゴミ、たから、ゴミ、ゴミ、たから、たから、たから、今日もすてきな一日でした

生贄の美女に今年も選ばれず今日もすてきな一日でした

2019年6月23日日曜日

2017年04月の114首と、その他もろもろ。

この土偶の性別であるが胸か尻か腹が大きくあるなら女

永遠の命がなんと八千円激安過ぎてちょっと心配

塩胡椒かけつつあどけない話、東京には節操が無いという

前髪がちょろんの赤子、人類のカイロス(機会)となるか我の亡き世に

ふた回り上の奴らに馬鹿にされ彼女は仕事の出来ない女

その「脳」は人類の道を示したり人類はそれを紐解いて生く

続ければ優れた歌人になるだろうけれども恋を選ぶのだろう

またひとつ場所奪われて生き物は死ぬか逃げるか隠れるかする

現地人も神を信じるのだろうか蝋燭の火に揺れるラス・カサス

文字なんか残すものかとアンデスの文明は謎がニヤリとひかる

戦いの前線にいて役に立つ気持ちはなんとうれしくかなし

どの道も棲み分け論にいたる朝、公園の鳩がおこぼれを待つ

種の掟にて引き裂かれたる動物のオーナメントで次に進めず

さかづきに桜と雪が落ちてきて、あれからやはり余生であった

手を汚したくないだけの反戦と好戦の二人気まずくなりぬ

ダッカにはダッカの秩序、ナインボールの一打目のごときリキシャのわれも

茂吉翁の丸い背中の半纏(はんてん)に問う短歌また国家に資すや

カレー食べてる時に謝らないでくれ謝れば見立てられゆくカレー

排泄と喜怒哀楽がある限り人間平和の希望は捨てぬ

ティファールの湯の沸く音に包まれて週末は40度あったよ

救いなどない、教室の午後もまた僕無しで進むのを見る時間

明るいが感情の起伏大きくてアン・シャーリーがこだわる綴(つづ)り

23時も新宿駅はうじゃうじゃでふたつめのじゃのあたりにわたし

夢だった、ツイッターなんてまだ無くてすべてが妄想だったのだという

むすぶのかちぎるのかどちらでもよくてこの糸の先にまた、あなたか

春だから男もスカートどうだろう、剃る剃らないに迷うなオレよ

内心の自由それから外心の不自由はとても笑顔がやさし

職場では「はい喜んで」「喜んで!」仕事終わったもう喜ばぬ

可能性を残すのは気持ちいいけれど天才はただ量産をする

マシュマロというより白子あの日からもう膨らまぬメンタルの絵は

スワンボート人の少ないそれゆえに桜の少ない方へ切る舵

スワンボートで前線へ行け、もっと漕げ、形勢不利の革命のため

思い出にご笑納下さいってか上着を脱げばひとつ花びら

人間の浅ければかくも浅からんレイヤを超えんとする決意さて

野良猫のような心を抱(いだ)こうとする野良猫のように逃げらる

落研の合宿のあの殺伐と過酷と悲壮が生む面白さ

桜より華やいで君ら若者が外側にあるもの愛でやすき

タイムラインズの向こうで君がいるけれど君もこちらを気にするうわさ

シャットアウト機能で避けたほんとうは強く見つめた方が正解

人間は目に見えぬものに死にもする両の手をびしょびしょに濡らしつ

満員電車をエンジョイしてる白人の「ゴメンナサーイ」がほんといい顔

等身よりすこし大きい化け物と戦うときの人は舞うなり

下の句が午後にはけっこう降っていてビニール傘でしのぐ定型

無条件に尊いために必要な思想とその他、その他はあるか

天国の暮らしもここと変わらんよファミマもあるし金持ちもいる

人道も正義も措いて人間がこの地上にて描く地獄絵図

まだ食べてないなら少し遅いけど行こうよぼくもおなかすいたい

沈黙の多い電話が切れたんだ電波を見たら圏外のわれ

AIに君のデータを流し込み人権が付与される日を待つ

テロリストもその被害者も運ばれてテロリストを先に助けてよいか

終わりまで楽しむことが知性だと生を叱られ泣いている夢

演歌だと君は心地もよさそうに「あなたについて行くわ」と唄う

マストドンに君も行くのかミクシィのような廃墟でボットとわれは

強烈な破壊のあとに、ゆっくりとあなたを見つめる時間が出来た

争闘性を引けと鑑三記せるも流されざれば日蓮成るや

ほんとうにこの詰め将棋の詰まるのかわからぬままにそれではあばよ

新宿のビルの小さい一室に空想の象が定員を超ゆ

人間がもっとけものになるまでを象は待ちおり鼻長くして

クレヨンに貼り付いた紙の内側でコクっと折れるような失恋

きみに注ぐ愛もわずかに回しおり粉コーヒーに湯を注ぐごと

表現に上限おけばこの一首でほんとによいか迷ういちにち

わたくしの知らない世界を調べよう、知らない単語で検索するだけ

われのその後同じうするべき山阿などあるであろうか五柳先生

一万首めがその人の初段とかそういう時代の歌人の歌会

産屋での座位分娩でひりだされおんならに見下ろされて命は

舌鋒の甘い男でいいじゃないか意見を求められるなき世に

宇宙から現れたのに端末から「地球外から失礼します」って

縄文の遺伝子ふいに発芽して一万年をやり直そうか

このカバに「カバスケ」と名を付けている動物園よ次はどうする 「バスケ」

夜のライトに我が目がぎらり、いつまでも平和にならぬ世界睨(ね)めつけ

人生が眠いと君が言っているつらいとき僕もそう言い換えた

君がいるのを待っていたような夕方のやっぱりカレーの匂いする路地
#中本速生誕祭

青空が爽やかだから寝転がりたんぽぽ指ではじく失踪

食べ物に霊位を与え食べる世にあらぬ、すなわちすべて食べ物

ああどうも八重桜さん昨年は醜い修羅場を見せちゃいました

ポラロイドにはピースが似合うと言ったのにピースしないのかよ、これ欲しい

ルビはおまえルビなんだから並走はしてもいいけどこっちに来んな

縦書きと横書きの本が攻めてきて真ん中あたりにピラフ(猫)の居場所

原水協、核禁会議、原水禁、10年で分裂した願い

人間は縦になれなくなったならもう覚悟しておこうじゃないか

天才は無差別に殺人しつつオレだって頑張ってると言う

音楽を今でも耳に転送しでもこのメディアはそう長くない

渡鬼にキムタクが出る夢だけどキムタク全然ゆずらなかった

感動的な紋切り型でぼくたちはけっこう寒い海をみている

いい女が通りゆくまで道路工事のおっさんら目で見送る時間

お湯割の梅干しは箸の一本でつつき破れて政治の喩え

うふふあはは海辺でゾンビに追われたるこの絵は何か間違っている

馬の目のうるうるうると透明の涙の膜ぞ今から走る

サイモンとガーファンクルのサイモンは俺がやるからガーは任せた

社会学がかたっぱしから名付けゆく現象に名前ついてないのか?

方向音痴なんかじゃなくて大山が西にない東京がおかしい

石なげて人を追いやる思い出をこの村は忘れ春の夜昏し

狭いせまい空間で子と暮らしてるきみを連れ出す花一匁

大きくも小さくもなるが男とはやっぱりどこか丸大ハムだ

シャウティーなベイビーがいる車両にて生のかなしみ行き渡りゆく

道端に名札が一つ落ちていて伊藤をやめた彼はいずこへ

ジュテームモアノンプリュを二人で聴いている興奮しても笑っても負け

一行のよくわからないテキストをいつも書いてる人だ、あれなに?

僕の中に永遠をひとつ飼っていて僕が逝くとき笑ってみてる

異国語でわが感情を抱くことの月があり犬がいてわれいずこ

強い風をつよい気持ちで進みゆく目はモザイクを見るときにして

生クリームとブロッコリーはやめたから! 彼女は普通に目覚めたという

シトロニーナにするべきだよと思いつつレモンジーナで割るトリス呑む

生きる気力のないのに生きるロジックはよ、国が生かしておくロジックはよ

引っ越しの食器のダンボールが鳴って満員電車のようにかちゃかちゃ

ルマンドを連れて行こうか関西へルマンドが逢いたがっているのだ

春菊と生姜の香り混ぜながらブリ大根はじゅるじゅる美味し

公園のサクラのとなりで咲いている桜でない木の桜でない花

宝くじの使い道など悩むように俺ならどんながんがいいかな

なんとでも短歌にするよ悲しみも裏返したりやや逸らしたり

チャイナ風のメロディはわりと春の曲、日本の歌はいつの季節か

平和とはその象徴の鳩たちに常にパン屑落ちてる世界

キジバトが窓の外では鳴いている彼らには人間をも自然


#爪楊枝短歌
びっしりと容器に詰めて爪楊枝、出撃の覚悟あるが出にくい
爪楊枝みたいに箸がびっしりと詰められエコノミークラス吉野家
びっしりと箸、びっしりと爪楊枝、お前らも俺を拒むつもりか
あの中に父さんがいる、爪楊枝が箸を見るけどプラスチックだ


#自由律
指折りかぞえて自由律

自由律であらねばならぬ不自由

自己表出してるから自由律

花の盛りをほったらかして仕事

歌を作らなくていい花見

タイムラインがまずい海嘯


#パロディ短歌
日本脱出オーケー! 全肯定ペンギンも全肯定ペンギン飼育係も

ひむがしの野にかぎろいの立つはずで返りみたけど、どっちがひがし?

吸ひさしの煙草で北を指すときの北違ければどこよ望郷

馬鈴薯が小さいくせに店先でえっへんおっほん値上がりしてる

長ぐつにカブで大根運びきたる老後、ないか、今は新橋


#パロディ自由律
すごい咳をしても一人

咳をすると? 二人!

優勝しても一人


#パロディ詩句
自分の短歌観くらい
自分でつくれ
和歌者よ


#川柳
来世には君に会えないパピプペポ

パピプペポそこまで僕は言ってない

パピプペポ今日は納豆三個目だ

君のことパピプ好きペポ 救急車

パピ今日の君はステキだ是非プペポ

すぐきみはエッチにはしるパピプペポ

柿ピーの
禁止用語の
パピプペポ

パピプペポ? 
パピプペポ、いや、
パピプペポぅ

失礼です。
自粛ムード。の
パピプペポ


#無季を強引に季語化する
まだ少しはやいひんやり春便座

蛍光の母子ともに春クロックス

からんだら友達面(づら)の春リプライ

天気予報の通りに寒し春我慢

記号論で季語がめちゃくちゃ夏の春

なんとなくいい人みたい春変態

キジバトの昼にもなって春ホッホー

味噌汁が落ち着いてゆき春宇宙

あずきバー春の夜には硬いまま


#尻子玉俳句
春痴漢ダメここで出すべき尻子玉

透明な夏の霊そして尻子玉

299回腕立て――尻子玉。

第二ボタンください、それと尻子玉

ああ、だめだ、もう怒られる尻子玉

わたしきみの尻子玉まで愛してる

シリコダマ、ああ間違えたシリカゲル

とてたての春の最初の尻子玉

ゆうくんの方がきれいな尻子玉

抱きしめてもきみはあかるい尻子玉

おじいちゃんと二度目の別れ尻子玉

火にかけると一応あばれる尻子玉

尻子玉飛び交ってやや美しき

もしかして「「入れ替わってるー!!」」尻子玉



#言うべきことはほかにあるのに
僕の方があなたのことを好きだった言うべきことはほかにあるのに

さくらばな集めて掬(すく)って食べている言うべきことはほかにあるのに

二階の子に気兼ねしながらキュウリ食う言うべきことはほかにあるのに

育毛剤もドーピングにひっかか! る⋯⋯、って⋯⋯。(言うべきことはほかにあるのに

たぶんもう会えそうにないキスのあと言うべきことはほかにあるのに


#季重ね
ひと眠りふた眠りして春春眠(はるしゅんみん)

春のポピーポピポピ少し浮いている


#今日もすてきな一日でした
ぼくも死後もう三年は経ったかな今日もすてきな一日でした

ゴミ、たから、ゴミ、ゴミ、たから、たから、たから、今日もすてきな一日でした

プリンプールの底でカラメル啜る夢今日もすてきな一日でした

フリスクとコーヒーやはり合わぬなあ今日もすてきな一日でした

生贄の美女に今年も選ばれず今日もすてきな一日でした

マルクス=エンゲルス全集が安くない今日もすてきな一日でした

2019年5月19日日曜日

2017年03月の自選と雑感。

宮柊二だったっけ、短歌は小市民の文学というふうに規定していたような。こういう規定は、定義があいまいな上に、どこか引け目を開き直った物言いになるので、反発を受けやすい。

そもそも小市民というのはマスクス主義の言葉で、その前に市民階級というのがフランスの階級にあって、フランスの階級社会では、市民階級とは貴族階級と労働階級の間にあるものであったが、マルクス主義によると経済生産性の目から貴族階級と市民階級は同じ資本家市民階級まとめられて労働者と対立する概念になり、資本家ではないが労働階級とも言えない存在を、プチブルジョワ、つまり小市民と呼ぶようになったわけで、まずこの階級感が日本とは違うので、小市民と言われても、日本人には、嘉門達夫の、マイホーム主義な尖った表現を好まない凡庸さの謂(いい)として使われている。小市民ということが。

つぎに、文学だ。ロックンロールイズデッドじゃないが、文学は、文学とは現代において何であろうか。現代において、文学は、表現をおこなうにさいして、絵や音や形でなく、文字を選んだというだけのエンターテイメントなのではないか。エンタメでなければ、自己表現、あるいは、新しい物語創作。

文学って、なんなんだっけ。目の構造が、「見える」ということを規定するように、文学は、なにを規定するんだっけ。

文学は、まだ、生きているか。青いゾンビの肌をして、いないだろうか。青い肌だったら、ちゃんと殺してあげなくちゃ。



自選
いつまでも当選番号さがすようにスマートフォンをきみは見ている

カルピスは何倍がいい? きみのくれる短歌の濃度くらいでもいい?

個性などなくてよかつた夕ぐれのユーグレナけふ(今日)すじりもじりし

この歌を3回声に出したあと、夜の0時に鏡を見るな

この歌を3回声に出したあと、夜の0時に鏡を見るな

この歌を3回声に出したあと、夜の0時に鏡を見たな

知の呪縛のように不可逆、玉手箱の白い煙のごとき認識

犯罪者が刑のかたちを決める夜人権はまだ生きてるつもり

月を取ろうとして海に入(い)り溺れたる猿を看取ってくれたる海月

合成の歌声じつに小気味よく火星探査車石蹴って往く

肩揉みが天才的にうまけれどロジックがない男を知れり

百年前は新宿だって牛飼いと牛がいたんだ都庁のあたり

キャッチーな詩を書くゆえかきみはあのまどみちおの絵が部屋にいちまい

のれんの絵を描いたのれんが飾られて向こうがなくてさみしいのれん

静脈がおれを認識しなくって、あれ、おれいつから甘んじて俺

食べ物を見る目をしてた、食べ物が権利を主張する間じゅう

称賛か失脚か風の吹き上がりやすい時代に目がすぐ乾く

電柱を描くか描かぬか写実的風景絵画の懐かしい嘘

春のころこの道を老婆ひとりゆきその道の果てにあり老梅樹

小学生を殺すほど認知あやしくてなお生き延びて人生ながし

洋服に洋画の陰影描き分けて夷酋列像(いしゅうれつぞう)赤き直立(すぐだ)ち

この国の混声合唱「死にたい」はスウェーデンとは異なるひびき

ビキニからの原爆マグロを眠らせて築地の朝はさっきまで夜

それゃあもうおれは「なかなか言いにくいことをおっしゃるご主人」だもの

自爆テロリストのVR映像を、終えて現実(リアル)がとても汚い

上等の日本酒舐めてきゅうと言うそういう男の列に連なる

美しい言葉と思う、運命を開くいのちを真剣と呼ぶ

エクレアのふわっとかなし人生のだれのせいにもせぬ指のチョコ

善人用優先席にみかけにはよらない人が足組んで座る

サンドボックスゲームをしつつ思い至る西洋のヒューマニズムの孤独

ジョルジュ・ビゼーは時代の何を飛び越えてぼくの意外な耳朶楽します

建物ごと虚空に上がる心地して窓全面を降るさくらばな

白目みたいな歌だよねってなんだようやっぱり短歌わかってんじゃん

星空を眺むるも科学なりし世に法則嗤うごとき極光(アウロラ)

この町の盛衰あるいは玄関が引き戸の率など知りたく歩く

ごきぶりや蚊が叩きつぶされるころダンプが野良を轢く日曜日

生命は波打ち際のなみがしら、吸ったぶんだけぶくぶくわらう

ガラス片敷かれた風呂に入るように過去のいじめを語る痛みは

一日休めば三日遅れる練習のエントロピーめエピメニデスめ

あまじょっぱい経口補水液のみてわが病身の内を濡らしつ

そうやって明るいきみに厳(かざ)られてゆくものをすこしうらやんでいる

アパートの庭にふたりは足浮かせにんげんのしあわせを語った

UFOは地球をながめ知的生命かつて有りきとして過ぎゆけり

二十代で国のかたちを先見し国成るまでに落ちたる椿

ぼくの部屋の階段をのぼる音がする音がしたまま部屋へ届かず

ビッグバン説まことしやかに否定する時代もありき、忘れられき

洗脳の装置とかいいながら観る、低レベルだと嗤いつつ観る

果敢だが彼は失敗するだろうその時のきみに届かぬ歌を

優しさはその後も優しくあるゆえに弱さとは似て非なる朝焼け

俳句
春菊の貼り付いて眠るまでの宵

半跏思惟像この春じゃないらしい

永遠の命をこばむほどに春

さっぷーけーおまへの部屋におまへと春

2019年5月18日土曜日

2017年03月の108首ほか、パロディ短歌、俳句川柳。

生を生き、死も生きるような大きさで朝決意して夕べに忘る

いつまでも当選番号さがすようにスマートフォンをきみは見ている

ダイハツのCMに残るかすかなる大阪文明(文明ちゃうわ!

ある胞子は夜の温度でまだ春でないことを知る、春待つ仕組み

考えていることすべてとろかして人間はゆくひとつところへ

カルピスは何倍がいい? きみのくれる短歌の濃度くらいでもいい?

才能もなくてお金も足りなくて人の子どもに変な顔する

個性などなくてよかつた夕ぐれのユーグレナけふすじりもじりし

ウルトラマンになりそこなった風邪引きがヘァッヘァッてもう帰んなよ

ひな壇の15人にもいるのかもカムアウトせずすまし顔して

この歌を3回声に出したあと、夜の0時に鏡を見るな

この歌を3回声に出したあと、夜の0時に鏡を見るな

この歌を3回声に出したあと、夜の0時に鏡を見たな

学生がちょっと小ばかにするけどね時々読み返したりフロムを

引き出しから未来のロボがやってきた! (打ち上げられた魚のような)

消え去らぬ老兵をいつか一掃しスカスカの街が見たそうなきみ

楽しさが幸福である現代の張りぼての裏を揶揄しておりぬ

知の呪縛のように不可逆、玉手箱の白い煙のごとき認識

犯罪者が刑のかたちを決める夜人権はまだ生きてるつもり

悲しさがこういうときはツインビーのBGMをずっとずっとずっと

勁草も泣くことだってありますと昔の会話を覚えてたのか

地図の上●●●に黒々と秋風の吹く、次は誰の死

バーナーで燃えてゆく窯、釉薬の垂れては生まれ変われるごとし

誇りなくファミマに変わるサンクスの今までサンクス、ふっくだらない

あさましくて父ちゃんなみだ出てくらい、人目気にして損得ずくで

伝統は乗り越えることが継ぐことでソニックブームを知るか知らぬか

モナリザを左に倒して飾りおれば観る人すべて顔倒すなり

あんなにも可愛がってた芝犬のデータはとても出たがっていて

紅白のしまうま常に怒りつつそれも目出度さ扱いされて

めためたにメタモルフォーゼ繰り返し再会したるふたり、きみかも

月を取ろうとして海に入(い)り溺れたる猿を看取ってくれたる海月

煙突のない家なので真っ黒なぼくをからかう彼女もいない

ほんとうに蓋を開けると終わることもあるんだもうすぐ春が来るんだ

合成の歌声じつに小気味よく火星探査車石蹴って往く

いざという時に役には立たぬためのことばをえらぶ、墓標を立てる

肩揉みが天才的にうまけれどロジックがない男を知れり

百年前は新宿だって牛飼いと牛がいたんだ都庁のあたり

キャッチーな詩を書くゆえかきみはあのまどみちおの絵が部屋にいちまい

それを話せば終わりが来るいうそれを早く見つけたいのか饒舌

生きることの意味問うときに深くふかく円(まる)いルールが一瞬まぶし

のれんの絵を描いたのれんが飾られて向こうがなくてさみしいのれん

我は白きみは赤なるくちなはのまがまがしくて見た目めでたし

充電の切れたる古い端末の電源は神の啓示のごとし

人間界はそれを隠して回るのだ◯肉◯食ランチでひとり

一枚の布だけ残る文明をおもう、彼らの生活が見える

静脈がおれを認識しなくって、あれ、おれいつから甘んじて俺

久々に座れた満員電車だがまるで立ってるのと同じじゃん

壮大な赤ちゃんプレイは待っている変態と言ってくれるひとりを

食べ物を見る目をしてた食べ物が権利を主張する間じゅう

死んでから愛するような愚はすまい夕べに死すともかなり悔ゆれば

称賛か失脚か風の吹き上がりやすい時代に目がすぐ乾く

八百年で絹はほどけてゆくというシルクロードも風に薄れつ

電柱を描くか描かぬか写実的風景絵画の懐かしい嘘

控え室で彼らは思う蛇の道を、まともな人間ほどの変人

何層のレイヤをかさね我がいてふつふつとよろこぶやつがいる

春のころこの道を老婆ひとりゆきその道の果てにあり老梅樹

終末は週末よりも頻繁で終電去れば朝まで廃墟

美男美女はなるべく顔をゆがませぬようにしてきた悲しき成果

小学歳を殺すほど認知あやしくてなお生き延びて人生ながし

洋服に洋画の陰影描き分けて夷酋列像赤き直立(すぐだ)ち

官邸デモを語る和歌山大学のドイツ人教授の信憑性

生まれ変わる生まれ変われる挨拶をドレミファソーのソーの高さで

右巻きの昼顔ぼくはスイカズラのきみを抱き取るつもりであった

基本無料の世界は基本下劣にていささか値上げすべきスマイル

この国の混声合唱「死にたい」はスウェーデンとは異なるひびき

生き物は水の記憶に頼りながら生き物として次世代にゆく

ビキニからの原爆マグロを眠らせて築地の朝はさっきまで夜

それゃあもうおれは「なかなか言いにくいことをおっしゃるご主人」だもの

週末にアニメを消化するだけの青春、きみはわりあいに好き

自爆テロリストのVR映像を、終えて現実(リアル)がとても汚い

上等の日本酒舐めてきゅうと言うそういう男の列に連なる

美しい言葉と思う、運命を開くいのちを真剣と呼ぶ

批判するわれわれもまた閉じていて悪人がポアされない世界

思い知ってないだろうこのおっさんはおっさんというzombieのことを

エクレアのふわっとかなし人生のだれのせいにもせぬ指のチョコ

善人用優先席にみかけにはよらない人が足組んで座る

何者であるのかなども不明瞭な己(おのれ)が朝の日を受けている

サンドボックスゲームをしつつ思い至る西洋のヒューマニズムの孤独

ジョルジュ・ビゼーは時代の何を飛び越えてぼくの意外な耳朶楽します

建物ごと虚空に上がる心地して窓全面を降るさくらばな

#ひとりで決める桜前線
家の前に弧を描くように横たわりひとりで決める桜前線

バスケットボール蹴ったら足痛しひとりで決める桜前線


配送業がパンク寸前中指を立てるか否か桜前線

「クアラルンプールはいまは9時頃か」「まだ8時だよ!」のやりとり5年

白目みたいな歌だよねってなんだようやっぱり短歌わかってんじゃん

星空を眺むるも科学なりし世に法則嗤うごとき極光(アウロラ)

この町の盛衰あるいは玄関が引き戸の率など知りたく歩く

ごきぶりや蚊が叩きつぶされるころダンプが野良を轢く日曜日

生命は波打ち際のなみがしら、吸ったぶんだけぶくぶくわらう

ガラス片敷かれた風呂に入るように過去のいじめを語る痛みは

どのようなふうにも生きると思わしめ内側にきみの目が見ておれば

どの家庭にもある洗脳装置にて洗脳じゃない気分もセット

ネットにも友情のなきたましいが目つむりまもなく眠らんとする

目を細め貫禄はかく作り出す久しき日本の横綱をみる

一日休めば三日遅れる練習のエントロピーめエピメニデスめ

あまじょっぱい経口補水液のみてわが病身の内を濡らしつ

そうやって明るいきみに厳(かざ)られてゆくものをすこしうらやんでいる

ツイッターで書けないことを書くためのなんとかったーを欲しがってったー

チックの謎スチロールの謎口に入れぶふふと笑うふたりしあわせ

アパートの庭にふたりは足浮かせにんげんのしあわせを語った

UFOは地球をながめ知的生命かつて有りきとして過ぎゆけり

二十代で国のかたちを先見し国成るまでに落ちたる椿

ぼくの部屋の階段をのぼる音がする音がしたまま部屋へ届かず

ビッグバン説まことしやかに否定する時代もありき、忘れられき

洗脳の装置とかいいながら観る、低レベルだと嗤いつつ観る

果敢だが彼は失敗するだろうその時のきみに届かぬ歌を

ふた回り下の奴から馬鹿にされ彼は仕事が出来ない男

優しさはその後も優しくあるゆえに弱さとは似て非なる朝焼け



#パロディ短歌
「嫁さんになれよ」だなんて缶チューハイ二本じゃだめか、焼酎にする?  

川柳、俳句
さんぐゎつの弱気な季語が見当たらぬ

スイートピー、パ行たしかに春のおと

花疲れ大の字分のさようなら

山笑うおれの真顔を責めもせず

春菊の貼り付いて眠るまでの宵

半跏思惟像この春じゃないらしい

永遠の命をこばむほどに春

さっぷーけーおまへの部屋におまへと春

二月なら春にときどき勝てもした

2019年5月4日土曜日

2017年02月の自選と雑感

令和っすね! 平成中はお世話になりました。いまこうしてこれを読んでくれている人と出会えたことは(ほとんど直接出会ってはないだろうけれど)、不思議で、ありがたいことです。

令和時代の表現がどこへ行くのかわからないし、自分の表現もどこへゆくのかといぶかしい日々です。
照屋沙流堂の作品も、あと1年ちょっと分を、はやくツイッターからここのブログに移動してしまわねばなりません。今回は98首を自選して33首だけれど、こういう作品って、どのように読まれるのかしら。時々評判が気になったりします。楽しく読んでもらえるとよいのだが。


自選。

底で闇で零で黒なるうたびとの負のちからプラスにいたれかし

胴体を草が貫きたる鳥がわれを慕ってくる夢かなし

正しさが試されている、にんまりと枇杷色の歯を見せる老婆に

忘れられる権利さておき千年前のテンションたかき恋歌を読む

身体から毒を出したらすっきりとするというおぞましき空想

歌が上手い歌手がだんだんビブラートがうわずってゆくあわれなりけり

冷めているゴーヤチャンプルそぼそぼと見解がもう合わないにがみ

それは目に見えねば言葉を網にしてひっかかるまで投げるしかない

釜玉に続いてぶっかけ小を食い寝る夢はついヤマタノオロチ

ウイルスかウィルスかビールスかヴァイラスかどれでもよいが具合が悪い

離反者も弟子の振りする、フリスクをかじりつつ途中まで言わせとく

ほんとうの歌をいくほど残すだろう体裁のよき歌の背後に

ぶよぶよの大地を生きる民としてステップは苦手手振りは得意

人間に生まれ変われるつもりかいメイクアメリカグレートアゲイン

透明なあやとりをつづけていたよ不在になったきみの番まで

深夜いっせい死者よみがえりくるごとく歌人のボットが並びはじめる

死ぬ日まで空を仰いで、弾圧のない現代詩にない空の青

振り返るきみに笑まざるわれなりき大事なことは一瞬なのに

ムーンリバーが流れてきみといたのです年をとったら泣くんだろうな

親父は喜び母は悲しむ一日(ひとひ)なり出家の決意述べてしまえば

王朝はつね永遠の夢を見る火種を赤き水で消しつつ

誰もみなたった特別になりたくて自分の名前は逆からも言える

ほとんどの人にはあまり意味のない点灯夫今日も灯りをともす

幼児用椅子に描かれたミッフィーのやぶけて黄色いスポンジが出る

稲荷橋のバス停できみはバスを待つさっきの涙はさっきで終わり

簡単に書いたものゆえ簡単に残らないのかもう消せらせら

短歌ってなんだったんか、きみと始めてきみいなき世にいななく一首

草の中もぞもぞ動きすっきりと風呂上がりみたいに汚れて犬よ

信念を貫くことにとても似て長生きは馬脚のはじまり

人間は未来になんて進めないくるくるぐるぐる生きているだけ

ひとり抜けふたり抜けいつかしづかなるタイムラインよ、夜ひらく梅

ここでいまテレビを流し向かい合い食事をしている、深い意味がある

往年の国民作家は笑むときに労働者めく吉川英治

2019年3月3日日曜日

20首連作「マラソン」199?年

  マラソン

僕は今ランニングシャツと短パンで鎮めつつ何を待っているのか

乳酸の残る身体(からだ)をほぐすため伸び縮む男ゴムの匂いす

参加者七百二十二名、参加費三千二百円、七百五番のゼッケンを負う

スタートラインに一般男子蠢(うごめ)いて肉体は比較され比較する

銃声にいっせいに逃げまどう人、目に刺さる呑気な空の青

ランナーは走るのみにて結実し観衆の手は叩かれっぱなし

筋肉が喜んでいる、狭い視野への逃亡と言えぬでもなき走りに

後方にうっちゃってゆくと思いしが言葉が僕を追いかけてくる

坂の上の二月の風がたむろする目前で追い抜かれ目で追う

筋肉が苦しんでいる、折リ返シマダ引キ返スマダ遅クナイ

耐える為の最終兵器を用いる事をためらうも過去の霊呼びはじむ

けち臭くカーブの最短距離を行く 意識の前に変節は成る

醜いランナーの周りはもやに包まれてひとり時間を逸脱しおり

苦痛と汗のまだら模様の全身はあらわに恋える俺の挫折を

俺という酸っぱい肉の塊を舐め癒(いや)す女を信ず、つかのま

日常まで残り何キロ? その先は? 浮標(ブイ)のようなる生はこりごりだ

走りつつ意味だけを更新しゆき亡霊に手を振る現在地

二瞬前、一瞬前の俺が消えてゆく背後を思う腹を押さえて

観衆が両脇にある道に出る、自分が老犬のようで羞(やさ)し

走らされねば走らぬ僕が走りいる右足の痛み大いに庇い