2018年11月17日土曜日

2018年09月うたの日の自選。

自選。

「肺」
きょうもよく吸っては吐いていたことよ良くないことも考えながら

「肺」
お父さんは会社で残業ばかりなり人工心肺みたいに孤独

「ヒーロー」
もうきみのヒーローでない平日のホームセンターでしずかな会釈

「自由詠」
シソの葉はすべてバッタに食べられてシソ味のオンブバッタのその後

「美」
休日をなんにもせずに終えんとす、あ、メガネのレンズは美しくした

「町」
閑かなる町立郷土資料館のガラスケースに蜂の形骸

「葡萄色」
ワイン飲んで葡萄色なる二人なのにきみは芋焼酎まで頼む

「服」
問い詰めたら不服な猫になったので捕まえようとしたのに逃げた

「倍」
明るくて空も青くて手を振ればさよならの悲しみはバイバイ

2018年09月うたの日の自作品21首。

「口紅」
狙撃手が弾丸を吟味するやうに彼女の紅を選ぶ女は

「ちびまる子ちゃん」
平成が終わらんとする日曜の夕方もこまっしゃくれた昭和

「食」
食べながらぼくがどうして悲しいか話す伝わらないかもしれぬ

「くしゃみ」
おそらくは二万年前の大苦沙弥時代の先祖返りのくしゃみ

「肺」
きょうもよく吸っては吐いていたことよ良くないことも考えながら

「肺」
お父さんは会社で残業ばかりなり人工心肺みたいに孤独

「豚」
人間は肥えると豚に似てくるね互いに笑いあったらぶひひ

「乙女」
名も持たぬ乙女などにはなるものかそういう怒った目をした乙女

「ヒーロー」
もうきみのヒーローでない平日のホームセンターでしずかな会釈

「自由詠」
シソの葉はすべてバッタに食べられてシソ味のオンブバッタのその後

「自由業」
じいうげふにあらざればわがせいくわつは規則正しい舊假名のごと

「乗」
一対の生き物ずらりこの列車、逆方舟(はこぶね)に乗ったみたいだ

「美」
休日をなんにもせずに終えんとす、あ、メガネのレンズは美しくした

「煮」
煮沸して洗い流せば清潔で再利用可能なまで死滅

「町」
閑かなる町立郷土資料館のガラスケースに蜂の形骸

「葡萄色」
ワイン飲んで葡萄色なる二人なのにきみは芋焼酎まで頼む

「敬」
気がつけば敬老される側にいて昔話を出られぬおのれ

「罰」
外は雨、傘まで早い者勝ちで濡れるほかない、だが罰でない

「服」
問い詰めたら不服な猫になったので捕まえようとしたのに逃げた

「西」
死と生が地続きの朝、僕だけの思いは西方なる君にまで

「倍」
明るくて空も青くて手を振ればさよならの悲しみはバイバイ

2018年11月4日日曜日

2018年08月うたの日の自選。

自選。

「炎」
CDを炎の中に投げ入れる、思い出まんまな燃え方だった

「耐」
ひょっとして「耐え難きを」たえちゃんと「忍びがたきを」しのぶちゃんなの!?

「和」
ロマン派やシュトルムウントドランクを語りし友も和のはげあたま

「抜け殻」
あなたとはさよならだけど足指まできれいな抜け殻を置いてくね

「やばい」
早送りのシャーレの栄枯盛衰を笑って見てるおれらもやばい

「石鹸」
ぐりぬりとこの空の色を桃色の石鹸でえがくかっこいい君

「峰」
峰打ちじゃ、安心せいという声に安心しつつ落ちる武士われ

「ユウガオ」
ジョギングは恋だって習慣にする、この白いのはユウガオかしら

「癌」
対立ではなくて延長なのだろう空っぽの夜に星が少ない

「包丁」
明けぬ夜はないなんて話薄く切るその研がれないままの包丁

「反」
老いた叔父が小さき犬の散歩する反対勢力のごとし、跳ぶ犬

「皿」
スクランブルエッグを載せて白き朝、皿さらさらによりを戻さず

「帰」
あの明かりはきっと文明、帰れるぞ、電気まみれの消費社会に

「来」
僕の中の君の中のぼくのなかのきみを撮影して戻り来ないドローン

「殴」
元カノの俺より幸せそうな顔を見るようなみぞおちへのブロー

「夕刊」
なんとなく夕刊だった、日曜に爪切る時に広げる紙は

「だから」
まだそんな欲がわたしに噛みつくかだから紐、だから檻、だから餌

「など」
ドナドナの歌詞には6番まであって子牛は見事助け出される