2018年2月17日土曜日

2018年1月うたの日の自作品31首。

「平成30年の抱負」
友がみなわれより偉い日々なので邪魔にならないようにして飲む

「猛」
文字という猛毒のためすずりにて水をすりおり、さらに濃き濃く

「太陽」
地球族の宗教的な比喩としてあなたはオーマイサンシャインです

「貴」
されば老舗の秘伝のタレの寸胴の汚れのごとし貴種守るとは

「役」
星に手がとどくとこまできたふたりぼくの役目は手を焦がすこと

「相撲」
はっけよいのこったのこったわれひとり職場でなにに寄り切られつつ

「草」
「この時代の人々は興に入るときに」「草!」「正解! チャンピオン早い!」

「加」
柿の種にチョコを加えた毎日になるようにきみはピリ辛であれ

「マイナス」
マイナスの風に吹かれてマイナスの男がプラスの街にいる、いる?

「自由詠」
計画的陳腐化のようであるけれどもこのままチンプンカンプンならむ

「歩」
真上を向いて歩こうよ涙など一滴たりともこぼさぬように

「蟹」
岩陰にじっとその身をひそめおり平和を待つことばかりでもなく

「側」
妖怪を引き連れてゆく旅なりきすべからく内側の物語

「炭」
イタリアの塩に替えたりコーヒーを炭で焼いたりしてさびしがる

「人編」
天からの使いのような人なので性愛を防ぐヴェールが見える

「金屏風」
金屏風すごかったねと金屏風と金の屏風の話ばっかり

「飾」
心次第でとんとんになるこの時空に粉飾がないかじっと見ている

「由」
飛び降りた下にはちょうど幌馬車でお元気の由何よりでした

「チーム」
このチームの先頭から輝いていくぼくも光に入らなければ

「バスケットシューズ」
バスケットシューズじゃなかったのも理由、きみが見に来てくれなかったのも

「関」
ああやはり引き返すべきだったのだ関関と恋の鶯が鳴く

「粋」
目覚めれば朝か夕べか分からない汝(な)はしののめの純粋読者

「行ったことのない山」
この道を通るときいつも気にはなるが行ったことのない山田うどんだ

「青の時代」
トルストイ翁の家出まざまざ思いつつ納豆飯の青の時代は

「冬の海」
おい野菜、高いんじゃあああと叫びたくて来た冬の海、先客がいた

「鶴」
嬉しさをごまかすために鶴の構えをしているきみよ、ぼくは蛇拳だ

「萌」
萌えいづる草食男子の休日のハードディスクのアニメなるかも

「海老」
なぜオレはケチャップソースに絡められ辛い剥き身で死んでいるのか

「1400回くらい一緒にしたいこと」
星月夜の宇宙のなかで手をつなぎ言葉はつまらない帰り道

「塩」
野菜ならとにかく塩をかけた父、息子はドレッシングでごめん

「嫁」
「お義兄(にい)さん」とわれを呼ぶので好評価の弟の嫁が不倫して去りき

2018年2月2日金曜日

2016年1月の自選と雑感。

2018年も、もう一ヶ月たったということだ。なんかしたか? 俺。

何もしてないのに壊れたから診てと夕ぐれのきみの上衣が落ちる  沙流堂

って、歌をつくる場所じゃなくて、雑感だ。
だいたい、正月は、アルコールに浸かって、そのまま、ひと月くらい酩酊状態だ。ツイッターでは、その間もネプリとかいろいろあったみたいだが、酩酊状態で、なにも落とせなかった。話題にもいまいち入りきれなくて、もう短歌クラスタじゃないような気もする。

まァ、もともとタイムラインをうろうろする妖怪なので、アース・ウィンド・アンド・ファイアーのLet's GrooveのPVのように、キラキラしながら宙を舞っているのが今年のイメージだ。

自選。

人なくば時間がとまりたがりたる年の始めの正午なる町

ふるさとは子が背をむけて去ってゆきあとは時々見にくるところ

洞穴で雨音きいて眠られぬ人類、過去にも未来にも似て

何を観たかあえて訊かぬが今頃にじぇじぇじぇとかいうお前をたのし

たまごボーロの代わりのようになめているビオフェルミンのほんのりあまし

ここはおれが食い止めるから早く行け、ぐはぁ、とついに降り出す雨は

どうしても少しは美化をする生のどうしても詩語を避けたる歌か

君のそのミード(蜂蜜酒)のようなくびすじの匂いを嗅げる男を思う

新雪を傘で刺したら君は決してひとりじゃないよたくさんの穴

ぶくぶくもがらがらもうがいだなんてひどいじゃないですかと詰め寄らる

楽しかったことを辿っておかしいぞ、君との苦しい日々ばかりなり

片耳を外して垂れるイヤホンの世界へ向けて微量の叫び

パヴァーヌのために亡くなる王女かも歴史の彼女いたましければ

タイムラインに裸足で入るものだから足首にへんなもの引っかかる

自力では自分を救えないことのモランをおもう、ほんとにおもう

くらやみの胎児のごとくそれでいて前向きなことが好きだ脳とは


あ、うたの人に提出した歌も挙げておこう。題は「楽」だった。

かに道楽の看板のかにが逃げたらし、無事海にたどり着けただろうか

2016年1月の62首と、「うたの人」提出1首。

君もまた意外に死者に冷たくてまあいちばんは死者だけれども

人なくば時間がとまりたがりたる年の始めの正午なる町

素朴派のなにがナイーヴ、写実への無頓着さに胡座をかきつ

年越しに第九やボレロを欲したる日本をおもう、酔う新年に

雨に濡れ濃い色の鳩、人間の謳歌する世に小うまく生きて

消えたデータはもうさようならぼくもまた次のアプデの時にはおらず

難しい思索がつづくたぶんそれは接点がまた減ってきたため

信仰の必要のないところまでゲノムを切って生きたき君か

世界よりすこし下劣になるだけでこんなにも変わる地図かと思う

ふるさとは子が背をむけて去ってゆきあとは時々見にくるところ

洞穴で雨音きいて眠られぬ人類、過去にも未来にも似て

狩野派の松が雲間をうねる頃歌われし歌の思い浮かばず

うわ水だ逃げろとごとく飛び出して歩道で焦げる未来のみみず

何を観たかあえて訊かぬが今頃にじぇじぇじぇとかいうお前をたのし

君が深い歌を詠むとき歌もまた深淵の君を詠むのだ、にいちぇ

スターウォーズの黒人おらぬ宇宙より守銭奴呼ばわりされしハン・ソロ

知的だが勉強はせぬ君といてもったいないけど近いからよし

野良猫に目をぱちぱちと歯も隠し敵ではないと示す"人間"

たまごボーロの代わりのようになめているビオフェルミンのほんのりあまし

止まらない思考の馬車はやはり死を実感できぬ止まらないゆえ

ここはおれが食い止めるから早く行け、ぐはぁ、とついに降り出す雨は

どうしても少しは美化をする生のどうしても詩語を避けたる歌か

君の血とぼくの血混ぜてほんとうの拒絶をながめたかりしが、乾く

石はその一定の重さ超えたればイシもつだろう、そのような石

死後のための表のひとつか、入れっぱなしの電池の交換期限一覧

69のロック、駄洒落は抜きにして寂寞とした場所にもみえて

清潔をのぞんだだけの生活のなぜ子の顔のかぶれて赤し

"きみ"も"子"もゆらゆら虚構なる中で"われ"との関係だけは在りそう

その役が僕ではないという未来、時間よ止まれ血流でもいい

くにゅくにゅとインクが水に溶けてゆきかく薄まれりネットのことば

君のそのミード(蜂蜜酒)のようなくびすじの匂いを嗅げる男を思う

四十のセリフやないかもう一度愛や真心で立ち向かえとか

教訓も反省もオチもなくぼくは寝坊したまま連絡もせず

ひとまずは安心したがさみしいなもうすぐ弓を張る月が見え

階段に座ってワイン飲みながら明日につながることを思わず

車一台通らぬ道を全力で横切っていく野良猫いとし

人間が怖いのはもう知っていてカラスは怯えながらついばむ

新雪を傘で刺したら君は決してひとりじゃないよたくさんの穴

死んでから注目されるあれだから生きてるときはなるたけのごみ

一曲の音楽として人生があるとしてここをBメロとして

ぶくぶくもがらがらもうがいだなんてひどいじゃないですかと詰め寄らる

楽しかったことを辿っておかしいぞ、君との苦しい日々ばかりなり

シュレディンガーの猫の説明するときに君からの猫はいないけれども

悲観的な選手もきっといるだろう楽天イーグルスの一軍も

壮大な景色で君も存在が現象になるさびしさ知るか

安楽とアンラックとをルービックキューブのように練りつつおもう

片耳を外して垂れるイヤホンの世界へ向けて微量の叫び

組み立てては充分に鳴らすまでいかずまた仕舞いたる高価な楽器

桃色の顔をして泣くおさなごの角を曲がってまだ聞こえいる

ああきみの幸せが楽しみになる場所に立ちおり、われ満ち欠けて

豊かゆえ悩みがややこしくなりぬ貧しさはつよき簡潔なるが

楽園行きの満員電車にぐいぐいと押し込んでオレをなんとか乗せろ

パヴァーヌのために亡くなる王女かも歴史の彼女いたましければ

いくつ引いて倍にするとかしなくてもきみは楽勝できる、してるよ

引き止めているのはお金、そうやって悲しみを割り勘にする君

かゆき体も掻けぬけものとして生きていらいらといる食われたりする

タイムラインに裸足で入るものだから足首にへんなもの引っかかる

アカシアの雨が何かは知らないがこのまま僕もそうしまいたい

天動説の君にぼくらは遠くから目をパチパチとまたたくばかり

自力では自分を救えないことのモランをおもう、ほんとにおもう

好奇心がなければ曲がるはずだったこの坂を息をきらしつつゆく

くらやみの胎児のごとくそれでいて前向きなことが好きだ脳とは


 うたの人『楽』提出作品

かに道楽の看板のかにが逃げたらし、無事海にたどり着けただろうか