2017年12月16日土曜日

2017年11月うたの日自選と雑感。

今年も2週間ほどになって、来年はなにをしようかなーなどとぼんやり考えてみる。来年のことを言えば鬼が笑うというが、それは何月くらいの話だろうか。

まだ特にはっきり固まっているようなものはない。

先月のうたの日は、なんとなく、自分の前日の歌から「いちごつみ」しながら作ろうとしていたのだが、あらためて見ると、一語を摘めてなかったのもところどころある。

いちごつみは、いい企画だよね。ただ、マッチングをランダムにしてくれるようなページがあると、登録して、え~この人とかよ、というのも面白いかもしれない。え~この人側のような気がするけど(笑)。

自選。

「意味」
もう中年ラスコリニコフに意味を問う詩のような目の斧もつ少女

「医」
「この中に」(医者か?)「詩人はいませんか?」「歌人でしたら」「歌人は、ちょっと」

「性」
参考になるものですか二足歩行の一過性なる文明なんて

「火曜日」
なにごともない火曜日の男、窓の南天の実が揺れぬのを見つ

「ブレーキ」
踏んだのはブレーキだった、綾鷹を買って一つの終わり宣言


2017年12月9日土曜日

2017年11月のうたの日の自作品30首。

「入」
ブリューゲルの村の踊りに入りぬれば君かもしれぬ村娘いて

「いい」
娘にはいいことがあれ、おっさんはそうだな詩心(しごころ)など持てばいい

「意味」
もう中年ラスコリニコフに意味を問う詩のような目の斧もつ少女

「医」
「この中に」(医者か?)「詩人はいませんか?」「歌人でしたら」「歌人は、ちょっと」

「再」
うたびとの声がふたたび戻るまで話題の若手の話NG

「擬音」
建設の槌音ダダダこれは壁完成したらもう戻らない

「ブックカバー」
裏返したブックカバーの参考書もうきみはここに飽きたのだろう

「性」
参考になるものですか二足歩行の一過性なる文明なんて

「レンガ」
きみの名の列火(れんが)の部分が燃えている文明もときに欲しがる野蛮

「自由詠」
ゆらゆらの長き焔(ほむら)に守られていな塞がれて現在のあり

「穴」
白鳥の穴場であったこの池も現在は長い目が追いかける

「ギリギリ」
腐っても鯛と男は呟いてギリギリ腐りながら長旅

「僕」
歴史上に名前がのぼったことがない僕の先祖の半分が男

「火曜日」
なにごともない火曜日の男、窓の南天の実が揺れぬのを見つ

「弓」
実際に突然ラブストーリーあらばかく弓なりの小田和正よ

「黄」
家の窓を黄色に塗ったさっきの子が抱えるストーリーが気になる

「杖」
玄関にニスつややかに塗られたる杖ありあるじを待つにあらねど

「チャンス」
誰もいない今がチャンスと角を曲がる監視カメラがさあ待っている

「馴」
からころも来つつ馴れにし君にあればカメラ越しには見知らぬ美人

「アレルギー」
守りたきつよき願いに苛まれ闇に逢いつつわが美男美女

「赤ちゃん言葉」
秋ゆえの無闇矢鱈の寂しさを寒さにすり替え生きており、ばぶ

「品」
要するに人畜無害、交替が宣言されても上品に笑み

「ブレーキ」
踏んだのはブレーキだった、綾鷹を買って一つの終わり宣言

「つむじ」
終わってもつむじの向きで伸びるだろう、もちろん髪があればではある

「待」
寝て待って待てど暮らせど果報とは縁遠いのに南向きの部屋

「凸」
男嫌いのきみのなかではぼくもただの凸なんだろう、遠すぎだ春

「ドレス」
華やかで嫌いなドレス着せられて幸せそうな笑顔じゃないの

「大学」
大学で汚れたんです幸せをシャーペンでカリカリガリガリと

「渦」
愛憎は渦なして減る、浴槽の湯が抜けたあとふやけた汚れ

「蔓」
鏡から蔓草伸びてくるほどにミュシャ的美人でふやけたニート

2017年12月6日水曜日

野いちごをつむ。〜kana と 照屋沙流堂

計画なくタイムラインの野いちごをつむ。巻き込まれてしまったのは、うたの日の詠草をツイートしたkana(@kana56753212)さん。

1 ティラミスの苦味沁み込むスポンジもスイーツとして括られるなら  『 シミ 』夏凪

2 フィレンツェ人(フィオレンティーナ)のティラミスでかしA4サイズの四角たちまちかたちうしなう  沙流堂

3 つまらない安心感が欲しいのか四角いケーキを三角に切る  夏凪

4 安心・安全でないのに舌をつけたのはそれは甘いと思ったのです  沙流堂

5 君のことなんでも知ってるはずだった。甘いみかんが嫌いだなんて  夏凪

6 南向きの斜面を灯しみかん畑、だいたいだいだい色のふるさと  沙流堂

7 クリスマス仕様に灯し幸せの外付け(アピール)なんて必要ですか  夏凪

8 クリスマス、老人を窓にぶら下げて光らせもする、そういうmerry  沙流堂

9 言うならばチョコあ〜んぱんカスタード味 そういうことに慣れてないだけ  夏凪

10 あんぱんをあ~んしていただろう犯人は裏口から逃げた  沙流堂

11 々とのちのマークの違い未だにわからずに曇りと雨で  夏凪

12 君に会う、うれしいときは「のち」にするかなしいときは「時々」にする  沙流堂

13 うれしい尻尾をふって出迎える愛し方しか知りたくなかった  夏凪

14 この尻尾くわえて吸えば甘いので生えても生えても与えるよ愛  沙流堂

15 いつのまに六歳臼歯が生えてもうおサルの君は人間ですね  夏凪

2017年12月6日 

kanaさん、ありがとうございました。

2017年12月3日日曜日

2015年11月の自選と雑感。

現在のこのブログは、2年前の作品と、先月のうたの日の作品をまとめながら、適当に雑感を述べているのですが、それをはじめたのが、この2015年11月からのようです。
そして、このブログで自選しているものを、ボットに流しているのですが、電子書籍にしやすいフォーマットとかがあったら、編集してもよいのかなーと、ぼんやり思ったり。

こないだ、短歌連作はどのくらいの量なら一気に読めるのか、と考えると、最大で20首くらいじゃないか、という結論が一旦出た。一首に3分咀嚼をかけると、10首で30分だ。20首で、一時間だ。20首を一時間かけて読むというのは、けっこうヘロヘロだ。

だから、連作を作る時は、まず、その作品を何分かけて読んで欲しいかを決めて、それから密度と歌数を決めるのも手なんじゃないか。

そのように考えると、一冊の歌集って、もっと歌の数が少なくてもよいのかもしれない。


あ、それから、2年前のこの月に、東京文フリに出かけたようだ。しかし、文フリのつぶやきは2ツイートのみ。そりゃそうだ。誰も知り合いがいなかったのだから。

自選。

本棚の上に積まれているだろうカラフルなあのAKIRAは今も

文学青年そのまま文学中年になることもあり忌むものとして

死ぬときの準備のような歌ばかりであったといつも後で知るのだ

法則によって落ちたる葉を見つつ感傷的になるのも物理

人の死ぬニュースにざらり、つまりもうその人のいない世界のはなし

「ますように」を使ってぼくも敬虔な人と思ってくれますように

USBに入った君の魂を水没させて狂う夢みき

われと君とひとつの画面にいることの上には瑞雲たなびいていよ

発揮せぬ才能いくつ手放してこの飼い主としあわせに生く

シンギュラリティもう川岸に、最期まで手をつなぐことを静かに誓う

父ちゃんが遊んでくれてしあわせが我慢できずに笑う子を見つ

人生の予想は尽きて押しつぶした薄いレモンを唐揚げと食(た)ぶ

変わりゆく画家の筆致よ、どうしてもいつまでもここにいてはならぬか

金魚鉢の中にいるゆえ水換えはぼくに可能なことにはあらず

いいねボタンといいねえボタンのいずれかを押さねばならず悩む夢かよ

何だっけ砂糖油あげみたいなあの沖縄のドーナツみたいの

2015年11月の60首とパロディ短歌1首。

科学にてせばまっていく世界へのモザイク、男は見たき生き物

本棚の上に積まれているだろうカラフルなあのAKIRAは今も

若くしての才能の訃を聴きながら若からぬわれの意味までにじむ

文学青年そのまま文学中年になることもあり忌むものとして

内海のこの砂浜はゆっくりと平らなる波の洗浄を待つ

静寂の音をしじまと呼ぶのって耳がいいよね、柿まだ食べる?

才能はあろうなかろうカローラに乗りし男を選んだきみは

選びしは自分だからかこの場所をのこのこ歩く因果のように

死ぬときの準備のような歌ばかりであったといつも後で知るのだ

法則によって落ちたる葉を見つつ感傷的になるのも物理

足元に着かず降り立つすずめらの、めらめ、めめらめ、独善(どくぜん)の寂(じゃく)

コンピュータゲームが盛り上がるころに干渉したりペリュトン=レンジ

人の死ぬニュースにざらり、つまりもうその人のいない世界のはなし

水星にぼくは棲むんだ、緑色の太陽と黒い空の真下で

もしかしてこの人生はところてんの材料までの満員電車

薄暗い公園のベンチみておれば人がいてちょっと驚きすぎた

てんぷらの黄色い匂いする路地をその家の子のようによろこぶ

毛玉とか猫を呼びつつ猫も猫で父のあぐらに乗りて丸まる

現実を誤魔化すために現実を歌うのもあり、われ歌われて

萌え絵など坊主が屏風に描くだろう狂気が病気になりし時代に

「ますように」を使ってぼくも敬虔な人と思ってくれますように

気がつけば世界はしじまに満ちていて音楽よりもうるさきほどに

きつね冷やしたぬきも冷やし河童(かわらわ)は巻く、親の身は子どもで閉じる

USBに入った君の魂を水没させて狂う夢みき

現代の危機嬉々として語りたる喫茶店にも伏兵潜む

いい人と思うからこそ騙されてつまり詐欺師はいい人である

ラーメンを待つ間(ま)クリックされざりし命をおもう、そしてラーメン

排便の感触を記録する男今日のはニュルンベルクとか云うな

7の字のかたちの老夫、横になれば1を倒したかたちとなるか

われと君とひとつの画面にいることの上には瑞雲たなびいていよ

発揮せぬ才能いくつ手放してこの飼い主としあわせに生く

赤白黒の三色(みいろ)に女をこしらえてその残りたる色で男は

シンギュラリティもう川岸に、最期まで手をつなぐことを静かに誓う

作品は完成したることもあり作者の生が不要なほどの

雑居ビルに生のほとんどいたりける男死すれば雑居居士と書かれき

男数人女一人で飯に行く景色よくあるものとして見つ

かまぼこのような若さの味がしてひらくとは少し死んでいくこと

昭和期に活躍したる先生のその無茶苦茶な修行慕(した)わし

職場にてモランの孤独をあしばやに語っておりぬ、わりと重めの

月かげにましろき猫がたたずんであわれむように人を見るなり

前世紀熱線照射実験でハラキリ虫はのたうちまわる

つけっぱなしの電気の文句言うために階段をのぼる、上乗せしつつ

下北の下は南でないのかと口にせずただ突風ひとつ

ビーバーの絵に似てるのはつぶらなる目もだが青きひげの剃りあと

天才に許されている放埒のほうのあたりで時間みていき

父ちゃんが遊んでくれてしあわせが我慢できずに笑う子を見つ

ワインにて前後の不覚あやしくて恋であったということにして

ポロネーゼ食いつつショパンのポロネーズ聴くベタにして夕(ゆう)べ、祝日

人生の予想は尽きて押しつぶした薄いレモンを唐揚げと食(た)ぶ

変わりゆく画家の筆致よ、どうしてもいつまでもここにいてはならぬか

金魚鉢の中にいるゆえ水換えはぼくに可能なことにはあらず

お笑いの小ネタのように埋立地のビル群は地震でおんなじ揺れる

雨のビームがぼくのからだに降りそそぎ穴だらけなるままに帰りき

いいねボタンといいねえボタンのいずれかを押さねばならず悩む夢かよ

武器を持って戦う権利奪い終え君の燃えたる目を味わえり

ええいもう忘れてしまえ脳内から耳かきでかゆく出してしまいたき

何だっけ相当あったけーみたいなあの沖縄のドーナツみたいの

何だっけ砂糖油あげみたいなあの沖縄のドーナツみたいの

ブラックホールを絵図で説明するときのグラフの深いくぼみ見おろす

清流が心のなかにありますと云われてそれが雫となりぬ


パロディ短歌

マッチ擦るつかのま海に霧ふかし吸い殻捨つる灰皿ありや

2017年12月2日土曜日

2017年10月うたの日自選と雑感。

今年も残りひと月となりましたが、ま、12月というのはおまけのようなものとして、のんびりまいりましょう。

このところ、ツイッターでは、「名刺代わりの自選3首」というタグがあって、みなさん、自選の3首を挙げておられます。で、どれもみな、非常にいい作品で、これはちょっと重要な事実なんじゃないかと考えています。

というのも、歴史上から現在までの歌人を並べても、有名な歌人といっても、数首の名作があれば、それはもう立派な歌人じゃないかと思うわけです。逆に10首以上そらんじる作品を作った歌人なんて、どれだけいるのかとも思います。まあ、私は全然短歌を、自他ともに覚えていないのですが。

万葉集には、その歌一首だけで、名前が残っている人もいますからね。それ以外、まったく何もわからない人。いや、そんなことを言えば、詠み人知らずは、名前もわからない。

短歌は、どういう形になりたがっているのだろうか。

自選など。

「四面楚歌」
虞や虞やときみにしなだれかかってももうすぐドラマが始まる時間

「勢」
うれしさを勢いに代え散歩前につい噛みついて怒られて犬

「ホーホーホッホー」
この仕事ホーホーホッホー続けてもきみのおとうさホーホーホッホー

「やばい」
みんなには内緒やけどな魔貫光殺砲ウチな、ちょっと出るねん

「麦」
麦を食う生き物のいない惑星で麦はもの憂げなる繁茂せり

「ペン」
痛いところをそのペン先は突いてくるもうひと突きで赤いのが出る

「そこから1300m向こうの歌」
年の差が七光年もあるからねこんな距離なら平気で歩く

「メロン」
お見舞いのメロンの周りのキラキラの紙そうめんを姪っ子にあげる

「胃」
口論の勝利のあとも怯えてる胃袋にさ湯、言い過ぎたかも

2017年12月1日金曜日

2017年10月うたの日の自作品31首。

「ドングリ」
新しい話でなくていいですよ「ドングリとドングラ」なんてちょっと気になる

「街」
かつて住んだ街が新たに栄えいてわれの歩むは追憶の街

「島」
手紙には「心は君と共にある」、孤島の鬼になりきれぬのだ

「老」
昔話ではない玉手箱がありもう一つ目は開けてしまった

「四面楚歌」
虞や虞やときみにしなだれかかってももうすぐドラマが始まる時間

「菱」
洋梨のような香りの日本酒は「見返り美人」に房総を酔う

「勢」
うれしさを勢いに代え散歩前につい噛みついて怒られて犬

「ホーホーホッホー」
この仕事ホーホーホッホー続けてもきみのおとうさホーホーホッホー

「秒」
にじゅうびょう、いち、に、後手「今度箱根の星野リゾートはどう?」

「自由詠」
スイッチが目の前にある切り替わるのが何か知らないのに押してみる

「やばい」
みんなには内緒やけどな魔貫光殺砲ウチな、ちょっと出るねん

「肩」
肩で押されて彼女に話しかけたのだそのスマホいい割れ方だねえ

「麦」
麦を食う生き物のいない惑星で麦はもの憂げなる繁茂せり

「ペン」
痛いところをそのペン先は突いてくるもうひと突きで赤いのが出る

「好きなおかず」
マルシンのハンバーグがあればいいと言う改めて食べて、変わらぬ味だ

「顔色」
これからも顔色をうかがいながら生きてけそうな公約をさがす

「従」
「⋯⋯従って私はきみが好きである」「わたしはそういうところが、ゴメン」

「豊」
アウェーって呼ぶ前はなんて言ったっけ? 日産ディーラー豊田市支店

「応」
「応答セヨ。イシヤキイモからモンブラン。帰宅」「了解。ザッ。ショウガヤキ」

「布」
仕えたる楽しき記憶過去として董卓を己が手で刺して呂布

「そこから1300m向こうの歌」
年の差が七光年もあるからねこんな距離なら平気で歩く

「メロン」
お見舞いのメロンの周りのキラキラの紙そうめんを姪っ子にあげる

「芋煮会」
寒き日の河川敷にてあたたかき湯気の醤油(か味噌)の香うれし

「情熱」
失ってからが情熱、武蔵野の林をあるく泣いてはいない

「アロエ」
来世にはアロエになるのも悪くない有用性もほどほどにして

「冴」
水鏡のおもて冴え冴えしき朝の冴えない顔よ、あしたもそうか

「喪」
神さまの子どもぴょんぴょん楽しげに数えておりぬ喪ったものを

「胃」
口論の勝利のあとも怯えてる胃袋にさ湯、言い過ぎたかも

「踊」
人間は踊りながらは泣けないからやってみたら? ってやると思うか

「天使」
ブランコで天使の悩みを聞いている絵としてはオレの方がやばいが

「変」
いつからか変な感じの自分対自分の環境、行くか逃げるか