2019年10月22日火曜日

2017年05月の107首と、その他もろもろ。

クオリティ・オブ・デスのこと考えてこの席を気をつかいて離る

BitchesBrewのような屁が出て人間はそんなに俗になっても平気

国際人は無国籍とは異なると学校新聞に書きし若さぞ

この人もミモザの花をうたうときレイヤがひとつうわずる人だ

秩父ってちちちちじゃんと思おえど鳥取の話みたいでやめる

元気そうでよかったなんてみなで言う皮肉はなくてわりと素直に

売れ残りの金箔入りの酒を舐めおめでたかった日々のきらきら

生きている意味って何だ、長い猫は今日も一日ゆっくり長い

和であれば貴(とうと)しと為せ、思想とはルール少なきほど強くして

自分にはもっと素敵な嘘をつけけっこう騙されやすいんだから

たんぽぽは根っこがとても深いので踏んでも踏んでも死なないのです

高速の渋滞にいる、映画なら危機から逃げて間に合わぬモブ

死に場所でオレの形は決まるから桜、いや海、いや君の膝

その気持ち百年経って気づいたら涙がつたり、誰も無き夜に

四本の丸太のような母象のどんな形にでも母はなる

それぞれの心に林立してるから何度も振り返らざる塔(あららぎ)

歌会詠草
食べ放題で別れ話になるなんて負け戦じゃん元が取れても

最新鋭だった天文機器で見る宇宙がとても、最新だった

次も負けてきょうぼくは生まれ変わりたいマトリョーシカの見下ろす部屋で

食べものの好き嫌い語るとき人は存在論的嫌な顔する

夕方にアイガタメール会いがたく御託を述べるノベルの如き

のり弁と第三のビール買い帰る道すがら五月つつじ茂(も)く開(さ)く

二時の男二時になりせば独り身の理由を述べてお開きにする

そのブースの売り子ニコニコ可愛くて帰ったらこんな毒売りやがる

そう鈴木蘭々のように君は言うくろせか、らんらんにもう決めたと

切り詰めた数文字も口語短歌ならすぐ使っちゃう現代短歌

ただ単なる善人は役にたたざると本間俊平信徒を語りき

強情に負けてよかった、山奥のダムの水面(みなも)に遅めの桜

同じことが繰り返されて繰り返しの終わるころ俺は生命だった

異文化の尊重を問うそう言えば左で手刀を切る朝青龍

マイノリティは世を怨むべしそしていつか向こうになってこちらを潰せ

縦書きの短歌を書けば気取ってると言われたリアルな歌会の帰り

リアル歌会は「対人歌会」の意味に代わりAI「定家」に歌を教わる

歴史上の歌人もボットでよみがえりみな横書きを強制されつ

ポンデリングわづかに勝てりおつさんが食べてもはつかかはいい感じ

もうすぐだオレが世界に現れて取り替えられてゴミ箱だでは!

あきらかに短歌の呪いに苦しんでいるならやめたら褒めるよ僕は

この犬が五月の昼のぬるま水で命をつなぐ愛の記憶と

ぬるま湯でこのまま溶けてしまいたくてでもぬるま湯にぬるく拒まる

公園で鳩に混じってパン屑を狙うスズメよ欲望は五分

粗製濫造されてきたかの思想あるポピュリズムとう言葉の裏に

ポエジーな気分のときにごーしちご、きみが欲しくてごーしちごーしち

はやく凡庸になりたいと叫ぶ妖怪の、凡庸の壁はボヨヨンとして

めんどくさそうな言い方だけなんだ私が君を許せないのは

呑舟の魚を呼ぶべく優遇せよ、それから厳罰化も考えて

この星の腐る匂いがわからない? そうかこの星生まれだもんね

こんなにも尊い人間存在が新宿ホームにうじゃうじゃといる

ビッグバン以前というも次元とか時間もない始まりはさびしそ

襲いたい襲われたいと気づかずに善意すぎない善意を話す

処理手順が異なるだけで変化する世界はきっと僕らのために

生きる意味が数名ほどに絞られてわりと普通と思う丑満

酔いよいと夜道をあるく僕たちのこの永遠も過ぎるのだろう

正しさの為に悪まで身を落とし君はもう考えたりしない

自分には価値なんてないと思う夜連絡をせぬ君の幸運

根がリリカルでないからおれはうたうのだリリカルなやつがうたえばそりゃあ

生き物はずっと脆弱、脆弱がぜいぜい言ってお前を守る

大木が宇宙にいっぽん叫びたいほどの孤独だこれがいのちか

現在に飽き飽きと初夏、もう少し賢くなれば不満も減らむ

めづらしい存在として生き延びよ韻律もちて意思疎通する

浅はかな修辞に飽きて朝飯の納豆がすごしざりりとうまい

神様もダーウィニズムを受け入れて人間の知恵に教えられいつ

パブリックを一日抜け出す名作をパブリックなき俺らが真似す

いきものがかりを二人がかりで歌はれて二人ともうまく神がかりをり

(こっそりと見知らぬ女の尻を触る)男はその場で殺せる法を

手塚治虫の漫画のように地震(なゐ)ふるれお前を叫ぶこの期に及び

エイプリルフールの日にも苦し紛れの醜い嘘を言ってた君よ

嘘泣きのゔぉえーの声が思うより深かったので悲しくなりぬ

#ランサム短歌
泣きたいのはおれの方だよWannaCry彼女が今夜飛行機に乗る

善意さえ人をたやすく追い込んで引っこ抜かれた田螺が乾く

触れた手を引っ込めるのもそのままにするのも意味が、ジェンダーめんど

生きてれば幾分眠いということでかの聖哲もあくびする夜

ヲカム読テイ書ラカラチド
   バレス択選ニ的想思
      レカワキシ悲

あたたかいほのぼのねばねばした気持ちでスニッカーズのような電車で

許されて金曜はありご褒美のごときドクぺを飲む君ののど

助かったサギは田植えの機械から離れて蛙の浮かぶのを待つ

ピンペルル、ガウケルルには才能は関係なくて飼い主が好き

生まれきたからには何を残そうか君の笑顔を見たかった顔を

たとうればパトリオティズム、共存が出来そうにしてやっぱりぼくは

オープニングで主人公われは水中を沈んで深さを暗示したくも

誰からも好かれたいからどうとでもとれる短歌ぞ、お互い無傷

スマホにはあぶらが付いて我々は汚れを憎む自責するまで

惚れるのは作品までだ、人間に惚れたら水のしたたる批評

雨の予報でないから窓を開けて寝る君が来るならそれでもいいし

最後にはモノクロームの道をゆくモノローグさえなきエピローグ

走る女の胸を見るのはセックスをしたからだろう死ぬまでつづく

苦の衆生、古き書物にかく呼ばれ女はいまは苦しまざるか

あやまちではあるのだけれど侮辱にもニコニコしててきみというやつ

姫ハブに注意とガイド、笑うおっさんの沖縄バスのツアーにひとり

くだらない〇〇〇とか〇〇はツイッターでやれ、(だからいいのだ)

俺だけが楽しみだった毎月の組み立て  雑誌途中で終わる

右も見ず左も見ずに生きてればそれもけっこう羨ましいよ

ショパンの綴りをChopinを受け入れる時に偏見の幅ひとつひろがる

B面にオートリバースする時の途切れも覚えてしまった脳よ

ほんとうだ死んだら足が要らないねえだけどなかなか進めないねえ

かなぶんの死骸を避けて境内でシャツを絞って、ふいのくちづけ

矛盾とはいわば忍耐、複数の錠剤飲み込むように祈りも

笠置シヅ子の東京ブギウギ明るくて不器用はいつも明るき武器ぞ

教えられた事が出来ない後輩が透明な笑顔している午前

和製英語より酷いのに慣れているアベノミクス、シロガネーゼ、タカラジェンヌ

人生の積分値きみと見せ合ってあっ僕たちは離れなければ

音楽がやがて思い出になることもさびし、時間が音楽である

水族館の魚のようにタイムラインのぼくは君には触れられず寄る

自画像を描く自画像を描く自画像描く像画自画く自く画像

「愛情するより友情したい」という歌の意味を子供に訊いてきた母

また別れがくるのでせうね、きみはもう正しい歌だけうたつてなさい

電波天文学者の彼は自己紹介で電波を外す、あやしいからだ

希望なき人たちが起こす革命の成功率も出るがっかりさ


#俳句
アチョーアチョー憲法記念日にぼくら

砕氷斧(さいひょうふ)のごとく犬歯であずきバー

あずきバー犯人はいまだ逃走中

有終の美とはいやらし盛り藤

春疲労春の枕もやる気なし

ツイッター春ばかりだがお前冬

たんぽぽの綿毛よいつまで付いてくる

オフィーリアのひたいに綿毛ともりたり

チューリップ自然のなんと作り物

春ゾンビ当社比ながらやや元気

春の月落下はとうにあきらめた

花水木チャンバラ童子の背(せな)に降る

腥風(せいふう)のぬっくりと都市のこの季節

鈴蘭が渇く政局みぎひだり

春満月(みつき)やらかす人をほの照らす

藤終わり主(あるじ)ばかりの見ゆる棚

春月夜あしたはだしを見せましょう

どくだみにそれは言わないあっぷっぷ

春の窓に包丁かざす、しかも比喩

スプーンで竹輪ざっくり春の幕

土星にも局地的には高い春

黒豆茶春の速度で二人きり

北海道のさくらのさいごのさいご、これ

春ミミズ地上に興味どう持てと

酩酊のごとき死、初夏の缶ビール

キスの日ぞジントニックは三杯目


#川柳
ドーピングきみが夫婦を超えてゆく

新宿に住めば世界がラビリンス

おにぎりの握られざれば孤児に似て


#パロディ短歌
短歌ではない短歌ではない短歌本歌取りではない本歌取り


#パロディ偶然短歌
学校のコンセントなどの焦げ跡はピンセットによるいたずらなどの

消火器は複数で使用することで鎮圧効果を増大させる


#結句を「ふいのくちづけ」にする
ひんがしの野にかぎろいのたつみえてかえりみすればふいのくちづけ


#不自由律短歌「8153」
別れが近づく日明るいな君は