2018年10月20日土曜日

2018年08月うたの日の自作品31首。

「快」
気前よくニコニコ承(う)けて快男児、無茶振りすれば笑って流す

「炎」
CDを炎の中に投げ入れる、思い出まんまな燃え方だった

「耐」
ひょっとして「耐え難きを」たえちゃんと「忍びがたきを」しのぶちゃんなの!?

「レーズン」
手を貸せるタイミングなのにレーズンの断面に触れた指がべたべた

「夕立」
去ったあとまだ乾いてもいないのに、夕立のようなそんな思い出

「山」
山道を間違えたかも「正々堂々」いつか「玉砕」のニュアンス帯びて

「端」
人類の最先端をかぶりつきキーンとこめかみを手で押さう

「クワガタ」
おじいちゃんとクワガタがいるイナカよりワイファイのあるじぶんちがいい

「和」
ロマン派やシュトルムウントドランクを語りし友も和のはげあたま

「自由詠」
元カレの着信音がポポポポポー、ドン・キホーテで思い出す罠

「抜け殻」
あなたとはさよならだけど足指まできれいな抜け殻を置いてくね

「やばい」
早送りのシャーレの栄枯盛衰を笑って見てるおれらもやばい

「自由詠」
寝そべって長編を読む夏休み二日目になんの筋肉痛か

「石鹸」
ぐりぬりとこの空の色を桃色の石鹸でえがくかっこいい君

「峰」
峰打ちじゃ、安心せいという声に安心しつつ落ちる武士われ

「緑」
お盆とは緑のまつり、大地からしたたる野菜を死者と食べあう

「1600色のクレヨンで描きたい絵」
1600分の一本はこれにするあのとき空に消えたアロワナ

「ユウガオ」
ジョギングは恋だって習慣にする、この白いのはユウガオかしら

「癌」
対立ではなくて延長なのだろう空っぽの夜に星が少ない

「包丁」
明けぬ夜はないなんて話薄く切るその研がれないままの包丁

「反」
老いた叔父が小さき犬の散歩する反対勢力のごとし、跳ぶ犬

「皿」
スクランブルエッグを載せて白き朝、皿さらさらによりを戻さず

「帰」
あの明かりはきっと文明、帰れるぞ、電気まみれの消費社会に

「来」
僕の中の君の中のぼくのなかのきみを撮影して戻り来ないドローン

「殴」
元カノの俺より幸せそうな顔を見るようなみぞおちへのブロー

「夕刊」
なんとなく夕刊だった、日曜に爪切る時に広げる紙は

「微」
メルセデスのどでかいエンブレムのような微笑だな、いや、僻みのせいか

「だから」
まだそんな欲がわたしに噛みつくかだから紐、だから檻、だから餌

「など」
ドナドナの歌詞には6番まであって子牛は見事助け出される

「カマキリ」
立ち上がり威嚇するわがシルエット、少年の目よもっと輝け

「沼」
たこ坊主はここに沈んでいるでしょう沼から沼へ渡り歩って

2018年10月13日土曜日

2016年12月の自選。

自選。

京橋で君と別れて片町線さびしき、今は違う名前か

気を抜けばクリスマスソング流れたる受付できみが気を抜いている

クラスタの涯まできみを連れてゆくつもりが行けど行けど中心

ポジフィルムと同じ情報量であるネガフィルムで今日のあなたは

まっすぐの飛行機雲もだんだんとほどかれてゆく文明もかく

悪意でもみどりに芽吹くことがあるこの雨でそれが元気にふたば

笑いあり涙ありの物語にて新参なのでぎこちないです

会うときはいつも飛行機が飛んでいてそういう土地ときみにさよなら

泣くときに鼻も流れる生き物としてある限り鼻垂らし泣く

鍋の中に昨夜のおでんが残ってて貨幣価値ではいくらよこのちくわ

三上寛と山下達郎が交互にてかかるスマホに悪意を感じ

「ガンバロー」から「バカヤロー」になるまでをたしかに頑張っていた柊(ひいらぎ)

プライドは猫背のように、治ったら自分でなくなるようにもみえて

天才の主人の苦悩を眺めたる犬のバンクオー長き舌をしまう

生命は生まれやすくて逝きやすい波なき湯舟をずばりとあがる

精神の住所は近いようなるに肉体のそれが二人を分かつ

ありがたい疲れたぼくに満月が死の銀色をわれに届かす

それはまるで奥田民生のカバー曲でみんな民生っぽくなるような

何色の字で惜別を書きましょう時代は口開けるだけで過ぎゆく

頑固なる汚れになってこびりつく恋と呼びいし黒いかたまり

一週間がこんなに早いということは世界が〆に入りたるかも

善ということではなくてわれならぬ命を守るとき生きている

何もかも投げ出したいと思う日のスープレックス、空が無窮だ

神の世を説きし約翰(ヨハネ)のはるかのち天国はないと歌いいし約翰(ジョン)

何も考えず歩こう何も考えず、考えぬとはどういうことか

軽自動車でふたりで眠るあの時が一番友情がやばかった

レトリーバーのドヤ顔、飼い主との散歩たぷたぷときみの満足つづけ

情報の商材として短歌とは一首5円になかなかならぬ

この家の寒天のようなかなしさとよそよそしさよ外で息する

5回くらい大きくぶつかることにより丁度良くなる、星の話ね

伸びるかもしれぬ心よ、伸びるならどこまで大きくなるものなるか

ブルターニュは島根みたいなとこだよと言われて分かったような分からん

意志がつよいことはさびしも鋭くも陽(ひ)に喜んでしたたる氷柱

どの神に従いたれば醜(しこ)となり賤(しず)となること望みて人は

我が内にギブミーチョコレイティズムとう心理のありて師走の夜寒

六時には百分待ちの回る寿司御用納めに消えるエビたち

あの世とのあいだに深い森があり行きたがる子は長生きしない

背景にさびしさ満ちている男、話しかけたらややこしそうだ

縁側に二匹の白い芝犬が足踏みしつつ散歩を待てり

2018年10月1日月曜日

2018年07月のうたの日の自選と雑感。

そういえばうたの日のこちらの更新が6月分で止まっていた。

うたの日は2015年9月21日に始めて、満3年、連続で出し続けることができた。3年間、お世話になりました。といっても、歌を出すばかりで、投票や評もせず、自分勝手な出詠者ではありました。
そのうえ、コレイイナたん、(とのちに名付けられましたが)、という、見方によっては、うたの日の投票や評を否定するようなキャラクターを跋扈させてしまい、なかなか厄介な2次的存在であったかもしれません。不快な思いをした方にはすみません。
そして、面白がってくれた方には、とてもうれしかったです、そして、こちらも、続けられなくて、申し訳なく思っています。

うたの日3年目を区切りにするのは、数ヶ月前から考えていたことですが、9月に起こったさまざまな問題は、目にするたび口をはさみたくなるような嫌な出来事でした。

匿名で本人に言えないようなことを書くことは、なんと人を傷つけるものだろうと、あらためて驚く。しかも、戦い方がわからない。戦うものが馬鹿をみるような場所がある。
まあ、何年も前に、知り合いの歌人が同じ目にあったのを見たことがあって、そのときも、何も出来はしなかった。

ともあれ、照屋の後処理はもう少し残っている。それくらいは、ちょっとずつでも終わらせよう。

自選。

「見」
見るためには目を閉じよって話でしょ? 同じよ、だから見つめるんだから

「プール」
夏の午(ひる)のモータープール人気(ひとけ)なし蝶だけが時のながれる証(しるし)

「無」
プレパラートを菩薩のようにつまみつつミドリムシさえ無いものが無い

「競」
人類が競って宇宙に行った頃そこまで造ってなかった神は

「セーラー服」
男子寮の6号室に受け継がれしセーラー服を出す時がきた

「追」
追わなかった後悔みずみずしいままのバスターミナルに雨びたびたし

「熱」
151年前の夏もまた熱からむ「えゝぢやないか」ををどり

「没」
沈没船の舵輪(だりん)ぐるぐる舵(かじ)を切るふるさとの方を向きつつ沈む

「スイカ」
口の中にシャオウムと赤く柔らかいスイカの山を食うひとくちめ

「夕」
かわいくない男子の野次をスルーして祭りの夕べを涼しい心算(つもり)

「蝶」
蝶なのにかなり遠くに来たもんだ何やってんだろう蝶なのに

「ラクダ」
もしかしてラクダなのかもしれませんふたりのながい食事もしゃもしゃ

「メロン」
甘い水をたくわえて確かにメロン、幸せは待つことでもよくて

2018年07月うたの日の自作品31首。

「見」
見るためには目を閉じよって話でしょ? 同じよ、だから見つめるんだから

「プール」
夏の午(ひる)のモータープール人気(ひとけ)なし蝶だけが時のながれる証(しるし)

「椰子」
椰子の実をパカッと割って、ン、と出す、はじめはバディのつもりもなくて

「ラリー」
長いことラリーに付き合っててくれたんだね、ありがとう、終わりにするよ

「キッチン」
武器的なものはキッチンに(洗ってない!)包丁だけでも洗っておくか

「無」
プレパラートを菩薩のようにつまみつつミドリムシさえ無いものが無い

「天の川」
古代人は納得していたのだろうかたとえば川底はどちら側

「競」
人類が競って宇宙に行った頃そこまで造ってなかった神は

「奈」
木屑漆(こくそ)にて塗り固めたる表情の奈良時代近きほどの阿修羅は

「自由詠」
残量が15パーセントを切ってもうすぐ生身になっちまうじゃん!

「セーラー服」
男子寮の6号室に受け継がれしセーラー服を出す時がきた

「十七歳」
悪意より嫌悪に近い殺意もつ十七歳の眼差し昏(くら)し

「使」
虫くんよ虫くんもずっとなにものか大きいものに使われる生か

「財」
人財が人材に戻るその日まで無用の系譜を守らねばならぬ

「追」
追わなかった後悔みずみずしいままのバスターミナルに雨びたびたし

「蒼色」
夕星(ゆふづつ)の見えそむる頃失へる蒼色(さうしょく)の空なりしわれらは

「熱」
151年前の夏もまた熱からむ「えゝぢやないか」ををどり

「蜃気楼」
揺れている向こうの蜃気楼だって猛暑日だろう、水はこまめに

「没」
沈没船の舵輪(だりん)ぐるぐる舵(かじ)を切るふるさとの方を向きつつ沈む

「入道雲」
入道雲の旧かなをふたり書けたならキスをしようよ、白いわくわく

「自由」
草の丘で風に吹かれて雲を見るココヲ抜ケ出ス自由ガ欲シイ

「スイカ」
口の中にシャオウムと赤く柔らかいスイカの山を食うひとくちめ

「貝」
防音も効いているので外界が何年経とうがよく眠る貝

「夕」
かわいくない男子の野次をスルーして祭りの夕べを涼しい心算(つもり)

「蝶」
蝶なのにかなり遠くに来たもんだ何やってんだろう蝶なのに

「ラクダ」
もしかしてラクダなのかもしれませんふたりのながい食事もしゃもしゃ

「鋏」
一日をじょきんと切って0時過ぎ、時の鋏(はさみ)は勤勉である

「パンダ」
天国でも中国でもないこの家でころころ鶯ボールがパンダ

「乱」
乱世をきみと遊んで現在はまじめな君を互いに知らない

「手首」
親指と中指でつくる輪っかにはちょうど収まる手首の記憶

「メロン」
甘い水をたくわえて確かにメロン、幸せは待つことでもよくて