2018年8月25日土曜日

2016年11月自選。

自選。

味噌汁のなかに寄り添うなめこらの無情にもわれは撹拌(かくはん)させる

神はもう語りえないと言っちゃって遠い第四ラテラノ公会議

湿度100%の海にいるごとく雨霧らう町わが嫌う町

デカルトは動物と人をくっきりと分けりエコノミックアニマルが読む

生き物が生き物を食うシンプルな事実のゆえにかくまでうまし

ピュアなこととピュアなよそおいくらいかなこの詩のどこか届かぬ差異の

ていねいにふたりの書類を書きましょう筆箱の、まだ午前のペンで

レイヤから自由であったアッシジの彼なら好きと鳥たちも言う

酒の力を借りて今宵もぶ厚かるレヴィストロースに噛みついている

虚無の奥にかすかに匂う権力ののぞみ、ひたいにシャワー当ていて

何度でもおれは信じる、自分さえ裏切りながら意味持つ生を

風が俺を避けて行くので無風なる街である、やや役に立ちたし

律令制の役職のはるか名残りにて衛門(えもん)と名乗る猫型ロボット

思想いな詩想に肥えているだけの言葉じゃきみに届かぬわいやい

いつかなくなる日本のためにつまらない歌のつまらなさを遺しおり

電車には幼子びーびー泣いていてその右手にはエノコロ揺るる

外はもうどんどんひゃらら、妹は浴衣のことで母と言い合う

この匂いを逃したらもう会えないと必死に必死に走る捨て犬

編集もされないままで山奥で雨晒されて残っています

制服を着た少女にて両ひざにかさぶたあらばうつくしからん

面構えがよくなったきみ、実存は本質にもう先立ちたくない

冷蔵庫にもたれてしゃがむキッチンのここできみだけ頑張っていた

冗談を言いあう残り一週間ゆっくり話さないさようなら

ポロロッカにてさかのぼるぼくたちの生は叛逆ポロロロロッカ

また国が敗れるとしてその冬に炬燵があれば少しはさびし

2018年8月18日土曜日

2016年11月の107首。川柳10句。付句祭り含む。

いま死なばこんな途中と思うのでそういう終わりも有りとして寝る

太陽は北フランスも赤色かクロード・モネの印象なども

赤紐は50メートル、昨年の黄色を外してその場所に縫う

味噌汁のなかに寄り添うなめこらの無情にもわれは撹拌(かくはん)させる

11月の雨は冷たく土の中で溺れる蚯蚓(みみず)の彼女をおもう

新しい職場の最初の飲み会で詩が趣味と言う新人を避ける

子の愛は老いた親には薄くとも親はよろこぶ子はややさびし

神はもう語りえないと言っちゃって遠い第四ラテラノ公会議

未来とはきっと今よりすばらしい今を生きててぼくら嬉しい

湿度100%の海にいるごとく雨霧らう町わが嫌う町

昼前に起きてゆっくり歯を磨くパスタのたらこまみれの前に

そり返るハゼの箸立てトコトコとおじぎが返事ハゼもばんざい

肯定も否定にもそれは反論し覚めつつもついにいとしく祖国

ドス黒いドス虹色(にじいろ)い工場の川、古き良き昭和が臭う

アニメ好きの友人が言うアニメキャラはいつか神社に住む神となる

気立てってなんなんだよと反抗しあの子が浮かぶ分かってはいて

デカルトは動物と人をくっきりと分けりエコノミックアニマルが読む

生き物が生き物を食うシンプルな事実のゆえにかくまでうまし

なさけない本音がもれた帰り道ひとの未来はかがやいたまま

ピュアなこととピュアなよそおいくらいかなこの詩のどこか届かぬ差異の

ネットワークカメラが映す丸まった悲しい背中は私じゃないよ

年下の特権がもう嫌で嫌で膝枕とか睨んで避けて

テンプラにしようここでのテンプラはきみの美味しいワインの種類

ていねいにふたりの書類を書きましょう筆箱の、まだ午前のペンで

銀色の空の遠くにまで雲が、ああまた終わりは待ってくれなく

レイヤから自由であったアッシジの彼なら好きと鳥たちも言う

捨てていいものなんだろうその人が一番のものを捨てたるのちは

英語なら三句目だけでtime to say good bye言えるんだけど日本語なので

酒の力を借りて今宵もぶ厚かるレヴィストロースに噛みついている

人間に許されうるか一週間カレーばかりの祭りをしても

虚無の奥にかすかに匂う権力ののぞみ、ひたいにシャワー当ていて

太陽が頭上じゃなくて太陽に頭を向けて立つこの昼間

婉曲に運動の話ふるだけで確実に毛羽立ちゆくあなた

何度でもおれは信じる、自分さえ裏切りながら意味持つ生を

風が俺を避けて行くので無風なる街である、やや役に立ちたし

律令制の役職のはるか名残りにて衛門(えもん)と名乗る猫型ロボット

思想いな詩想に肥えているだけの言葉じゃきみに届かぬわいやい

鼻出して泣いているのに求められ今はそういうことがつらくて

卒業後も先生然と振る舞って慕われざりし"カトキチ"さびし

たらればを何百回も考えて今回がたぶん一番近い

いつかなくなる日本のためにつまらない歌のつまらなさを遺しおり

星があって夜なんだからぼくたちはたがいの静寂をいだきあう

電車には幼子びーびー泣いていてその右手にはエノコロ揺るる

彼女から彼女だけの名で呼ばれいる友を見ている目は合わさずに

爆ぜてない銀杏噛んで黄濁の思春期過ぎの純情を食う

さびしさもいつかは乾く、その時の乾いた顔はもうしかたない

真髄は寄り添うこととこうやって教えてくれる小鳥のくせに

そろそろだぼくらに幸(さち)が舞い降りる順序は最初はぼくからでいい?

外はもうどんどんひゃらら、妹は浴衣のことで母と言い合う

この匂いを逃したらもう会えないと必死に必死に走る捨て犬

忘れものしたロケットを追いかけてロケットが飛ぶ試験は明日

永遠は手のとどかない、学寮の踊り場でした口論なども

久しぶりに会うのだとしていきなりでおかしくないか挙動、今日どう?

編集もされないままで山奥で雨晒されて残っています

痛みにて意思を感じる生き物よ馬鞭(ばべん)の跳ねるたび加速して

制服を着た少女にて両ひざにかさぶたあらばうつくしからん

そう清く正しい男女交際の清く正しい性欲なんだ

人格は自戒しうるか、アニメでは魔法少女が宇宙書き換え

金曜の夜新宿を通り抜けさみしいお前の町へ消えゆく

言い方がきつくなるのは年齢と思うならビブラートに包も〜〜〜

旅先のぼくは軽々たのしくて絵葉書えらぶ飾る場所なく

本当に一億五千万キロの熱か、ふたりを薄着にさせて

経験が物差しでなくて年輪に広がることをおっさんと呼ぶ

わたしたちキックスタートしなきゃと女性シンガーが歌うラジオで

面構えがよくなったきみ、実存は本質にもう先立ちたくない

美人さんときみが言うときほんのりと批評のま、いや、やめておこう

テーブルに冷めたおにぎりちむちむとさびしいようでしあわせな夜

木石にぼくはひとつの悩みなど話しているよ、動かぬ木石

形状であろうがしかしよくもまあこれを竹とんぼと名づけたる

したいことを数えることはしていない出来ないことを認めるようで

サブ垢をきみのひたいに読み取って恥ずかしそうな顔ごとぱちり

くびすじの二次元コードなでながら仮想空間のあなたも愛す

地の鳥もハードモードか残機なく武器もないのに飛ばねばならぬ

脳を他の存在とする倫理観があるらむ略するなら、脳他倫

ミュシャの模写も買わされたけど好きだから彼女の真実なんて、別に

家の外でマナーモードの振動のような鳴き声、休みも終わる

人に会うと生きゆくことがなんとなく肯定されて俯いて笑む

冷蔵庫にもたれてしゃがむキッチンのここできみだけ頑張っていた

マフラーが君の髪すこし持ち上げる時間のことを冬と呼ぶらし

現代短歌の百科全書を作るとき凡庸派などにいようよ君と

冗談を言いあう残り一週間ゆっくり話さないさようなら

生きるから孤独とう滑稽にうなだれてぶくぶく笑う何が沸くのか

ああそうだ歌人は魔術師だったのだ扶(たす)くるときも毀(こぼ)てるときも

一年に一度きらめくことあれば差し引き0でしょう、Frimaire(フリメール)

起きてから爽やかな朝とテンションのギャップがひどいので休みます

次男とはかつてはスペアなりしゆえ歩いたりせずステップに凝る

永遠に悪魔に頭をかじられて忘恩を描き震えるダンテ

みんなまだ鳴きいるなかで先に逝く蝉は目を閉づ、(まぶたはないか)

ごーしちご、しちしちですよと説明すしちしちですかしちしちですね

赤い傘のなかであなたは水玉の影を不気味に貼られ微笑む

ポロロッカにてさかのぼるぼくたちの生は叛逆ポロロロロッカ

食べるのは男が女、食べられる女は男を食べる真夜中

また国が敗れるとしてその冬に炬燵があれば少しはさびし


#都こんぶを取り出す手つき(12首)
幸福論結論出ずに終わる頃都こんぶを取り出す手つき

『モモ』を読む通勤少女がかばんから都こんぶを取り出す手つき

叔父さんてドイツで指揮者してたんだ都こんぶを取り出す手つき

腹筋が残り50のわが上で都こんぶを取り出す手つき

ぐずりだす弟に姉も泣きたくて都こんぶを取り出す手つき

「またお前と戦うことになるとはな」都こんぶを取り出す手つき

ほんとうにうまいの? カルピスサワーから都こんぶを取り出す手つき

じいちゃんの趣味のフィルムも捨てましょう都こんぶを取り出す手つき

雪山の遭難で出しにくそうに都こんぶを取り出す手つき

初デートでネタTシャツは賭けだよね都こんぶを取り出す手つき

子ども会ユウも好きなの選びなよ都こんぶを取り出す手つき

帝都とて入手できない俺の前に都こんぶを取り出す手つき


#あたりまえ短歌(2首)
味噌ラーメンをひとくち口に含むれば味噌ラーメンの味がするなり

あなたへの好意をついに言いきって告白したるかのように見ゆ


パピプペポの川柳
寒い方がパピプペポめくパピプペポ

爆発が五回もくるぞパピプペポ

みどりごがしゃべる前日パピプペポ

ピコ太郎の輪唱の夢パピプペポ

えぐいのかなまぐさいのかパピプペポ

ズレてても指摘されずにパピプペポ

年賀状ソフトも付けてパピプペポ

カレーうどんに勝った瞬間パピプペポ

ありきたりのアドバイスしてパピプペポ

オータムリーブス踏みて二人はパピプペポ

2018年8月5日日曜日

2016年10月自選。



自選。

二人とも揺らめいているボクサーのどちらの負傷が報われざらん

ネットには上がっておらぬ古賀政男作曲の水俣工場歌

岩を洗い氷のような海水が白くなるのを見るだけの今日

1741の基礎自治体で成す国のどこまで浸されれば眠くなる

見たいけど見なくてもたぶんそれでよく見れば絶対いいよ流氷

パウルクレーの矢印なんか信じないきみをやっぱり天使とおもう

いま生きている動物の心臓がすべて動いている共通項

忍び寄る国粋の夢、マダガスカル島初ステンレス歌碑除幕

お前いまからあえて毒舌言うんだろ首下げて太田光っぽいし

人間の彼女ができて、設定を「時々」にされたAI彼女

落ち込んでここに来たのに落ち込みが足りぬと叱咤するような滝

寄せ書きに好きでしたなんて書かれててヒューヒュー言われてたが、過去形

悔恨から決意の不思議なプロセスを「復活(resurrection)」とたぶん呼んだのだろう

詩人とは気違いという、逆上を霊感(インスピレーション)という、漱石がだよ

休日の午後の連続殺人が解決してから買い物にゆく

蒼という言葉どおりの夕焼けだ火星でぼくははじめて泣いた

十生をほんとに愛しあったからあと六生は心底憎む

口腔内崩壊錠を舐めながら行ってきますと出る秋の晴れ

同意してもらえないけど納豆のうっすら苦いところが苦手

表現の端からついにずり落ちて切なし、あそこが端だったのだ

逆上が赤ならば何に逆上しわが眼前を燃やして秋よ

広場から子供が全部去ってゆき夜まであおく休む遊具も

筋少がソプラノ歌手を使うとき旋律のたしかに美しき

人類的正しさよついにさようならパステルを得て黒なきルドン

宇宙とは、さあスカスカに充ちている仲良きことは美(あさま)しきかな

ダイバダッタがブッダの怠惰を責めたてる光景がかつてこの星にあり

うゐうゐうーおゐおゐおーと風呂場からまたホーミーの練習してる

まだいつか歌人になれるかもしれぬからいま褒めくれる人に冷たきと

ゆっくりと腐(くた)れて甘き香をはなつ深夜仏間のパインアップル

優しさと冷たさを逆に受けとめる病なんだ、と冷たく言えり

否定して否定して反措定してポークソテーに珈琲が付く

きみといる余白の時間 全角と半角ふたつの差でずれてゆく

気持ち良き酔いに任せて万年筆をインクに付けて、書くことがない

言葉にはしづらいけれど生涯にきみのパルティータとしてあらん

ちゃん付けでなくなっている、CPUのコアひとつずっと100%

朝のひかり時間を止めるほど溢れこの部屋はいま彼岸のごとし

廃墟なのに窓がぴったりしまってるなに恥ずかしいことがあるかよ

流行が変わってもおれは変えられぬ目を潰しつつ睡蓮を描く

2018年8月4日土曜日

2016年10月の119首。付句祭り含む

心だけが心をすくう拡散する情報に何が薄まってゆく

開きたるページにチャタテふたつ居てあわてて逃げる両方つぶす

二人とも揺らめいているボクサーのどちらの負傷が報われざらん

助けなどいらぬふうにて歩きいる衆より救(たす)けてくれの声在り

ネットには上がっておらぬ古賀政男作曲の水俣工場歌

岩を洗い氷のような海水が白くなるのを見るだけの今日

1741の基礎自治体で成す国のどこまで浸されれば眠くなる

分かりにくい戦いをせよとスイスから20世紀から届くけれども

見たいけど見なくてもたぶんそれでよく見れば絶対いいよ流氷

ともしびに使ってみれば灯油とはあたたまりそうな匂いとおもう

パウルクレーの矢印なんか信じないきみをやっぱり天使とおもう

ほんとうにタールの沼を足抜いてゆく未来? 頭上に不如帰(ほととぎす)

いま生きている動物の心臓がすべて動いている共通項

ぶったぎる根菜のようなおれの脛(すね)これ夢だよな、という夢を見る

  (添削について4首)
添削は裸足でやろううすべにのかわいいきみに伝わるように

100年後の短歌をわれと汝(な)はみずき、彼らは昔の歌を読まずき

この歌の異なる書写を見比べて誤記、添削の両面で捜査(み)る

忍び寄る国粋の夢、マダガスカル島初ステンレス歌碑除幕

 (変顔を詩的に4首)
変顔で寝ているきみをけっこうな時間見ていたいつかバラそう

生き物の進化を模して赤ちゃんに成るようにきみは変顔で寝る

変な顔見せたくないと手で隠しすやすや眠るきみの変顔

「あぁそうか! 眉がないから変なんだ。油性マジックで、あ、やべぇ…」


野菜にもポリティクスあれアメリカの大統領選地図の色分け

止まったらもう二度とです笑ったり泣いたり怒らないきみとぼく

きらいってだけではなくて存在がキモいよかつて好きで包んだ

お前いまからあえて毒舌言うんだろ首下げて太田光っぽいし

棒男のバランストイをあげる、卑下も驕りもしないように

散歩中のトイプードルに二度見されさっきの気分失われたり

大雪でバスも動かぬ日であった読み切りの恋のそのはじまりは

 #私なんかでほんとにいいの 10首
5メートル向こうにリンゴを載せたきみ私なんかでほんとにいいの

日常の会話もぜんぶ五七五 私なんかでほんとにいいの

おならにはおならで返事できるけど私なんかでほんとにいいの

わたしより若いとチャンネル変えるけど私なんかでほんとにいいの

うれしいと手品の音楽おどるけど私なんかでほんとにいいの

つぶやきシローみたいな寝言いうらしい私なんかでほんとにいいの

缶チューハイ2本でかよと思っちゃう私なんかでほんとにいいの

エロ広告は涼しい顔で見ています私なんかでほんとにいいの

カラオケの〆は欧陽菲菲の私なんかでほんとにいいの

休日は起きるまで寝るぞ同盟の私なんかでほんとにいいの


ここもまたゾンビに見つけられるだろう「息を潜めている=生きる」世に

人間の彼女ができて、設定を「時々」にされたAI彼女

落ち込んでここに来たのに落ち込みが足りぬと叱咤するような滝

寄せ書きに好きでしたなんて書かれててヒューヒュー言われてたが、過去形

悔恨から決意の不思議なプロセスを「復活(resurrection)」とたぶん呼んだのだろう

野鳥にも午後の午睡はあるらん、静寂の杜しばらくありぬ

詩人とは気違いという、逆上を霊感(インスピレーション)という、漱石がだよ

休日の午後の連続殺人が解決してから買い物にゆく

月曜はこまめなイェイを撒いている納豆もグレードふたつ上げ

蒼という言葉どおりの夕焼けだ火星でぼくははじめて泣いた

真夜に覚めてわが軽薄の愛情を悔いては永き輾転反側

十生をほんとに愛しあったからあと六生は心底憎む

口腔内崩壊錠を舐めながら行ってきますと出る秋の晴れ

あったよ、たぶんそうとう昔からインスタグラムみたいな短歌

同意してもらえないけど納豆のうっすら苦いところが苦手

後悔はしていないけど石畳の端をじゃりじゃり破壊して帰路

肉を食い植物を食い液体に溶いて飲み手を合わせておりぬ

命を食い心を食いて液体に溶いて飲み手を合わせておりぬ

表現の端からついにずり落ちて切なし、あそこが端だったのだ

中期までしか知らぬわたしにボブディランの新譜を貸してくれしおっさん

逆上が赤ならば何に逆上しわが眼前を燃やして秋よ

たぶんあえてきみに届かぬ言い方でそれはみっともないことである

分身を二人は用意したけれどぼくをひっぱたかれてありがとう

善人が見ている悪と悪人が見ている善の景色、いま秋

同じこと考えながら一応の反論が意見しだいに分ける

広場から子供が全部去ってゆき夜まであおく休む遊具も

浅瀬には浅瀬のたのしみあることを己れを突き放しつつ認めり

筋少がソプラノ歌手を使うとき旋律のたしかに美しき

移りゆく季節に遅れないような追い越さないような歩幅あたり

テオドールリップスは価値は快と謂う、たしかに裏なきコインはあらず

人類的正しさよついにさようならパステルを得て黒なきルドン

木の間から海がまぶしいこの墓地の子供は下で遊びたがって

宇宙とは、さあスカスカに充ちている仲良きことは美(あさま)しきかな

秋だとか思ってるうち空はもうルドンの目(まなこ)も上を見ている

空想のいわば未必の変態は現実的には変態でない

ヤンヴェレムとミケランジェロの共通の挿話を思う、他にもあらん

すする音そこここでする電車内の鼻息のなまぐさき秋なり

関西に嫁いで10年しないのにきみは大阪"トラ"ディッショナル

作者不詳のローレライいまいくつある詩の本懐はそこらあたりの

ダイバダッタがブッダの怠惰を責めたてる光景がかつてこの星にあり

人生をAIに支援受けている明日の自殺も収集データ

生きるとは死に物狂いと教えくれし母いまボケて死にたいと言う

うゐうゐうーおゐおゐおーと風呂場からまたホーミーの練習してる

働かない社会にはやはり一定数の奴隷が要るか、俺らがそれか

まだいつか歌人になれるかもしれぬからいま褒めくれる人に冷たきと

雪道を前をゆくきみを追わずゆく景そのものに祈りておりぬ

離職する彼に花束、二次会で仕事が根っこにみえたと語る

伸び縮みしながら生きておりますと書いた、近ごろ伸びていないや

ゆっくりと腐(くた)れて甘き香をはなつ深夜仏間のパインアップル

知らんがなお前のなかの秋ココアと冬ココアの配分の妙など

神さびてきたじゃんって言う2代目のマーチ付喪にならせぬように

優しさと冷たさを逆に受けとめる病なんだ、と冷たく言えり

飛蚊症の蚊を消してゆくARメガネ発売! 前売り100万!!

何かしら達成感のあるごとし課題を逃げて山を登れば

アペリティフグラスできみはヤクルトを飲みおり食後の方がいいのに

否定して否定して反措定してポークソテーに珈琲が付く

(埃について4首)
人の目をかいくぐりいつか床埃そらに浮く日をあっ見つかった

ひのもとにあらざればわれらガンマンの決闘の前のタンブルウィード

ボロ切れからネズミは湧くと信じられた中世、現代は電車の床に

鉄オタの来世あるいは過去からのねがいのように床埃ゆく


数え方がひとりふたりとなるときに権利と嫌悪が生ず、晩秋

俺のゆく道の向こうの真ん中にジレンマひとつ待っている見ゆ

年降れば正義の為に激怒したきいのちが泡のように湧くかも

きみといる余白の時間 全角と半角ふたつの差でずれてゆく

気持ち良き酔いに任せて万年筆をインクに付けて、書くことがない

あの家にどういう風が吹いてるかその挨拶で見えた気がする

飼い鳥のあたまカリカリ掻きやればコナコナ吹いて目を閉じている

飲み会で蘊蓄はやさしく滅ぶピカソは苗字であることなども

言葉にはしづらいけれど生涯にきみのパルティータとしてあらん

二歳五歳あるいは十二歳のまま生きられるほど文明である

ちゃん付けでなくなっている、CPUのコアひとつずっと100%

芸術は民主主義にはあらざれば崩れる石を踏んでこちらへ

朝のひかり時間を止めるほど溢れこの部屋はいま彼岸のごとし

崩れたる白壁土蔵、あの路地の水路にいくつクロトンボいて

廃墟なのに窓がぴったりしまってるなに恥ずかしいことがあるかよ

存在をもっと大事にしなさいと手のひらの鳥が身体を預(あず)く

電柱の支持ワイヤーのシマシマのカバー投げ上げ遊び、もうなし

死んだように寝る死ぬときにそれはもう眠るようなる死顔のために

流行が変わってもおれは変えられぬ目を潰しつつ睡蓮を描く

反対はしないけれども2週間でカラマーゾフを5巻も借りて

2018年8月3日金曜日

2016年09月自選や雑感。

雑感といっても、こう毎日暑いと、暑いなあ、という雑感しかない。

人が物申すときは、申したい”物”の他に、申すべき”スタンス”、それから、申すのを聞く”人”があって、人は物申す。申したい”物”があっても、案外、人は、他の条件が満たされず、黙っていってしまうものなのだろう。



自選。

月桂樹はアポロンが植えたかもしれず永遠の拒否の記念のために

誰でない自分がわれを励ましてそれをようよう生きると呼ぶぞ

人間のすることはまるで何一つ他人事(ひとごと)のように二人は暮らす

にっぽんが大変なとき陰にいてうなじに顔をすりつけていた

悪いとは思いもするがひとつ潜(もぐ)りふたつ潜って我関せず焉(えん)

オムニバス(omnibus)に乗ってぼくらはどこへ行くすべての人を乗せれなかった

人間にみなうまいこと化けている高島屋日本橋店の夏

心とう袋は言葉で傷が付く、中には思いの液がこぼれる

初恋の人に捧げたフレーズをまた使う日ぞベルリオーズも

牛舎にて牛にもたれて泣く夜の人よりも牛の優しさ沁みる

三匹の妖怪に邪魔をされてると法師はついに思うていたり

地獄へも共に行こうと決めたのに姿を消した友を探せず

人という異形に果てたぼくだけど秘めておくこともなんとか出来る

表層のすべてが溶けてぼくたちがこんなに自由だなんて、嘘だ

思想詩はファストフードに食われゆく安いし上手いしみんなにわかる

こういう、そういう、ばかり繰り返しのらりくらりの雨の満月

その理論の底に渦巻くかなしみと憎悪について心配なのだ

辛そうで辛くない少し辛い人生(そっちの読み方なんだ)

言いました意味深っぽく奈良と나라(ナラ)のあたかも同じ語源のように

いまほしいものを考え引き窓を押し上げるようなこころなど欲し

たましひと発音したくてたましひと書けばみなたましいと呼ぶ秋

時代から離れてペイネの絵に呼ばる、星を研ぐのは詩人の仕事

芸術は爆発じゃない、彼もまたみじめなほどに生き抜いていた

くちなわをえいっえいっと踏みつける夢から覚めるうわ泣いている

2018年8月1日水曜日

2016年09月の83首。

思想ではなくてあなたが好きだったあなたが一番嫌がることの

9月からいいことづくめの人生になることでしょう、そう占おう

鼻の下に皺寄るきみを見ることか今世(こんぜ)今世紀の楽として

表現でなくて彼女はひゃわらげんをしているという、何ヒョワラゲン?

可視化されるまえの不可視化されていたきみしか知らぬノートの短歌

月桂樹はアポロンが植えたかもしれず永遠の拒否の記念のために

沸騰をさせといてここで水なんや、お前がびっくりしてどうするよ

うなうまう、んむうーうーむ、うぉうわお、わーうわーうる、なんにゃんんんん
訳 飯食ってる時にちょっかいだすなオラ。

生と死がエロスのように入れ替わる夏きたるわれも汗に溶けつつ

誰でない自分がわれを励ましてそれをようよう生きると呼ぶぞ

二・二六事件ののちに「今からでも遅くない」とう流行語生(あ)り

人間のすることはまるで何一つ他人事(ひとごと)のように二人は暮らす

気にすれば立ち食いそば屋の啜る音、みなうつむいて泣きいるごとし

にっぽんが大変なとき陰にいてうなじに顔をすりつけていた

悪いとは思いもするがひとつ潜(もぐ)りふたつ潜って我関せず焉(えん)

因なのか果なのか知らず功徳とは座に連なっているいまのこと

オムニバス(omnibus)に乗ってぼくらはどこへ行くすべての人を乗せれなかった

40はこわいぞと40が言う何がこわいか聞かないでおく

人間にみなうまいこと化けている高島屋日本橋店の夏

メリークリスマスMrローレンス聞きながら夏蝉燃えている昼をゆく

銃殺刑の理由は姿勢なんだって、つまりそういうことなんですよ

飲み干して替え玉無料の張り紙がつまりそういうことなんですよ

人と違ふ告白に短歌贈るとか、つまりさういふことなんですよ
(付句祭り? 3首)

一本のミドリの瓶の謎おいてもう少し酔って眠るとしよう

片栗粉のあの独特の光沢を語るきみ、ぼくは目を反らし聞く

一日にそんなにたくさんうたったら乗っ取られます、すぐやめましょう

心とう袋は言葉で傷が付く、中には思いの液がこぼれる

初恋の人に捧げたフレーズをまた使う日ぞベルリオーズも

盈溢(えいいつ)するこれはなにもの、無表情の帰りの電車で次に進まず

遺伝子があきらめている生体の湯にふかぶかとつからざる夏

牛舎にて牛にもたれて泣く夜の人よりも牛の優しさ沁みる

アブノーマライゼーションにこの街がなるころここにまた来たるらん

精緻なる言葉の建造なしながらここに二人は住めそうもない

反省すれば減刑されるロジックがいま現にある時代とおもう

破壊とは自由にかぎりなく近く気取って言えばチャーチガーデン(教会の庭)

小さくて甘くてかたい梅干しをしょっぱく食べる、しょっぱい違いの

1個目のボタンが大事、終盤の選択肢にはいずれもはずれ

三匹の妖怪に邪魔をされてると法師はついに思うていたり

単価の高い短歌作ってなんになる、詩胆(したん)は体よりも安くて

この先にルートがないと知っていてかよわい声で一首を謌(うた)う

地獄へも共に行こうと決めたのに姿を消した友を探せず

それは食い使って流すここちする「肉」を「ロウ」とう読み方すれば

人という異形に果てたぼくだけど秘めておくこともなんとか出来る

表層のすべてが溶けてぼくたちがこんなに自由だなんて、嘘だ

この場所も架空のモンスターに満ちてモンスターなる人間遊ぶ

キャディのようについていくのだ、振り向いてもう忘れいて笑ってるのだ

イタリアンの今夜の彼女を引き止めず帰って我はゲームして寝る

思想詩はファストフードに食われゆく安いし上手いしみんなにわかる

悪人が罪に応じてめった打ちにされてるユートピア、ディストピア

ひそかにて彼は扉を開けたり数カ所だけの迅(と)きやり方を

悲しみと喪失感にまようのでグリーフと呼ぶ、真意は知らず

こういう、そういう、ばかり繰り返しのらりくらりの雨の満月

その理論の底に渦巻くかなしみと憎悪について心配なのだ

辛そうで辛くない少し辛い人生(そっちの読み方なんだ)

きみの長い髪を躍らせ突風が後ろからぼくらを引き離す

言いました意味深っぽく奈良と나라(ナラ)のあたかも同じ語源のように

 #そんなのはうそに決まっているでしょう

そんなのはうそに決まっているでしょう川べりに魚並ばせてあり

そんなのはうそに決まっているでしょうクラシック聴かせた牛肉パック

そんなのはうそに決まっているでしょうスナイパー特価のブルーベリー

そんなのはうそに決まっているでしょう男子水泳ポロリもあるよ

そんなのはうそに決まっているでしょううそうそほんと、すききらいすき

そんなのはうそに決まっているでしょう尾頭ヒロミ綾波レイ説

そんなのはうそに決まっているでしょう今年の出来が最高ボジョレー

そんなのはうそに決まっているでしょう4K対応心霊動画

そんなのはうそに決まっているでしょう自然科学の棚にあるムー

そんなのはうそに決まっているでしょう好きなタイプはお客さん、かあ


おっさんは語らずにゆく、語るのも湿地のような希望のあらば

未来から来ました(?)かばんに入ってます(??)短歌人です(これはいいのか)

別アカに歌を上げたる夢を見て起きて一応確認をする

自己肯定の究極にわれがおく祈り、いつしか他者へと至り

その手段が目的にいつか変わるときを魔境と呼べり、きみを観ていて

線遠近で写実されたる世界から逃げゆくぼくら落書きみたく

いまほしいものを考え引き窓を押し上げるようなこころなど欲し

乳房(ちちふさ)がこんなに効果あるなんて逆に怖いわ今度の人生

たましひと発音したくてたましひと書けばみなたましいと呼ぶ秋

時代から離れてペイネの絵に呼ばる、星を研ぐのは詩人の仕事

芸術は爆発じゃない、彼もまたみじめなほどに生き抜いていた

散らばった人形の四肢を拾いおり息ふき返す一文字のため

意味なくてコーヒー吹いてそののちのスマホキラキラ、きれいきたない

くちなわをえいっえいっと踏みつける夢から覚めるうわ泣いている

承認欲求のようにふくらむおっぱいの、年々大きくなる彼の絵の

歯の抜けた吾子をみており歯抜けフェチのあいつもたしか娘がいたな

たましいのランキング無料鑑定のスパムなのだが、何番だろう