2024年7月27日土曜日

2017年11月の短歌など

 外は30度を超えているのに、みな、よく外へ出るなあと思う。人間のエネルギーはすごい。よく日本人はそのエネルギーを三十一文字に入れようとしたね。いや、出来ないから外へ出るのか。それとも、平安時代は、あんまり元気なかったのか。光らない君へ。


2017年11月の短歌など。

1年は10月で終わり今はだから来年までのひらひら踊り

広大な自由な未来目指しつつ決められたレール走れ鈍行

たとえば、歌題を永遠に出し続ける機械で作る永遠に歌

目と鼻と耳と口ある生き物だ きみとは分かりあえる気がする

舌見せてからかっているこの舌は心拍高き心臓の赤

元カレが元交際相手の男になったので自動小銃ひとつください

多磨霊園10区1種2側6番に白秋がいるスマホにメモる

文化の日が休みってことは平日は非文化の日、非文化の俺

斜視だっただろうか遺(のこ)る肖像の伊東マンショが見たかった神

くだらないと言われてわれは憤慨す(くだるわ!)小学生のごとしも

言いにくいことを言うけど、おっといま定型にするところだったよ

ぎくしゃくのわれの居場所をかくしゃくとこの大根のしゃきしゃきサラダ

キンキンキューンとソーシャルゲームのCMで声優が喋る夜のテレビは

球体のような臀部を詠もうかと考えてやはり詠むのはやめる

へい、Siri、おっぱいがなぜしりでなくしりがおっぱいでないのかしりたい

狂気など微塵もあらぬオランダの黄色が好きであった画家おもう

言い訳をしながら女装する女性、この時代もうちっとだけ続くんじゃ

眠るような顔で寝ている、死ぬような顔で死ぬのをみるのだろうか

「あんなもん人間の食うもんやない」あんなもん食った人間食っといて


 #ぬばたまの松崎しげる
ぬばたまの夜にまさりて松崎のしげるがままに重ねたる黒

美しい人生よ~とどこかから聞こえる辺りを見てもぬばたま

なぜこんなま昼間に現れたのかあはれぬばたまの松崎しげる

ぬばたまの黒瀬珂瀾が迎えたるマジぬばたまの松崎しげる


伝えたいことだったから短歌にはせずに思わず口でしちゃった

二軸動作で表現の球をかっとばす今打ったのはどちらの詩魂

あぁまただ、夜中のタイムラインには近代歌人が絶唱始む
(かつてのツイッターは、フォローしている人が呟かなくなる深夜になると、botだけのタイムラインになったのも過去の話である)

好きなんだ好きなんだ好きなんだ好きなん、これもう好きと違うな

このような時節もきみにあったんだ、たましいぶらぶらソーセージ、ふふ

順調に寒くなる朝いいじゃんか生きてれば夏生きてれば冬

表現のピノをおまへは呉れと云ふひとつだけならあげていゝ、のか

自由律というとき人はああとても自由律っぽい自由の謳歌

悲観的な歌論がちょっと読みたくて歌人よもっと絶望しなきゃ

こんな勇気の告白なのに作中主体にするなよオレだオレの短歌だ

エントロピーは静かでしづかな場所にゆくそろそろ覚悟はしておくべきだ

友達になりたかったがそんな女体に近づくわけにはいかないのです

3歳の「コロッケ」は農家育ちにて主役になりたくない猫である

さびしいが友人はすでに去りにけり電気ブランで閉じてゆく夜

背負わない者の文句はすっきりとしてる霜月の空気乾燥

詠みたいのか読みたいのかを考えてテレビの彼女がおのののかなのか

氏(うじ)ならば"の"を付けておの"の"ののかなのかここのかのおの"の"ののかほのかに

かたつむりも持っていること、気高さはちゃんと自分であるということ

血みどろのプロレス雑誌読んでいる男の横で眠たいわたし

おでこに 桜の花びらひっつけてこの幼子は春から来たる

噴水をかためたやうなものをもち人は雨降るのに会いにゆく

恋人に詠まれかけたら身をよじってかわしたところを歌に詠まれた

空腹でからっぽのぼくが見る空のずっとからっぽですのよ空は

四次元をはんぶんこしてぼくたちはステンドグラスのようにしあわせ

祈ってるから大丈夫よって送り出さる祈っているから大丈夫なり

短歌よりもうちょいそこにわれはゐる君には僕が見えなくていい

滅びればえっこれだけでこんなにもなくなるものを信じていたの

母子像を描いてついに子を持たぬカサットが描きつづける母子

アンパンマンありがとうわっ! あぁなんだ、白餡ですかマジでビビった

最初からアンリ・ルソーを目指すのか、『人形を抱く子』の顔で聞く

#自由律短歌
文芸としての短歌、という御仁に、その師匠筋の短歌を一首ずつ文芸か文芸でないか判定させたいような霜月

フリーダカーロみたいな眉の女学生がテレビでコメントしたる日曜

もみもみと僕はあなたをもみもみとそこではなくてもみも、みもみも

恋人に短歌は一日一時間と言われて守る歌人のごとし

死にたいような心隠して家族とは最後まで嘘をつきたいところ

山本と書かれたハンカチが落ちている涙を拭けないじゃないか山本

戦争の途中だけども切ない系のいい歌が出来たのであげておく

この池はセクハラをする在来種は少なくてもう外来種ばかり


川柳
万人受けしないさせないパピプペポ


俳句
平日の仕事の前後に白秋忌

冬が立つ脳のなかではなんでもあり

枯枝の折れるか曲がるかへの祈り

2024年7月6日土曜日

2017年10月の短歌など

 短歌が表現の極北だったような時代はもう過ぎたんだけど、じゃあ自分の短歌を文学に興味のない人に見せておもしろいのかというと、そうでもないだろうね。自分の短歌がおもしろくない、という話とはちょっと違う話としてね。


短歌など。

昨晩のチータラがより乾きおりおれも渇いて今日のはじまり

王族ではもちろんないが今日もバルス明日もバルスお前もバルス

プロトコルをプロトコールと言う彼のトリコロールのセーターを見る

人を殺せる速度の車で会いにゆききみを助ける、殺せる速度で

キットカットは受験生にはいいだろう窓際の社員さびしくかじる

フルートをぴーひゃらと言われ怒ってた彼女が奴とつき合っている

自販機の缶コーヒーの「しにた〜い」に「ころした〜い」が加わって秋

四季即ち季節の死なる、秋の裏で一つ一つの腐(くた)れゆく菜(さい)

なしてなん? なしてあんたは出ていくん? そういう声を聞いた背中か

クリープとコーヒー 焼酎 ティファールのキッチンの森に遊ぶ飼い鳥

ちちははに記別与えるときのため若かりし日の話聴きおり

ツイッターで1行半の文章を韻律で読む、短歌じゃないじゃん

セスナではなくてデハビラントなのか、まあまた来てよ待ってるからさ

金出せば焼肉食える国で思うゲバラ、ゲバラの焼肉のたれ

東北で芋煮が語られるときのバベルのごとき神の制裁


#困らせることばかり言うから

父ちゃんが蟷螂拳のポーズする困らせることばかり言うから

逝く猫は飼い主をもう聞きません困らせることばかり言うから

お守りキャラが急にオトコにならないで困らせることばかり言うから

5次請けの男らの目の野生味よ困らせることばかり言うから


 #ちょっと汚れてしまったこころ

フットサルで大袈裟に倒れたる友よちょっと汚れてしまったこころ

beliefの語の変遷が気になってちょっと汚れてしまったこころ

(この歌はツイッターより結社誌だな)ちょっと汚れてしまったこころ

甘くないペーストを餡と言う時のちょっと汚れてしまったこころ


週はじめはうまい昼めしいのちとはときどき褒めてやらねばならぬ

オヤジギャグが何から何まで面白い夢を見たのだ、悲しい夢だ

な、なんと、コンビニたちが次々と? コンビニたちが合体してゆく!

シューティングのボス戦のような着メロで田舎の母だ、野菜届いたよ

ディスカウント理髪店にてAMラジオの政治批判よ、もみあげは残す

「詩を作るより田を作れ」という時代に生きたる人の詩の強いこと

われにとり詩はおならだと言う人の「とり」のところが天皇みたい

小さいとすぐ死ぬそして大きいとすぐに死なない、ではグッドラック!

そんな目で見るな国宝阿修羅像何百人目のぼくの涙だ

クロソイドカーブを曲がり高速へ君のつむじを掌(て)で包むため

これという策などないがおれとおれの環境をもっと愉快になさしめ

男らはついにはらまぬものだから永遠に詩がおもちゃのちゃちゃちゃ

そうやって口うるさくて家族って、いまは感謝はしたくないけど

定型ってげにお手頃な詩形にて寒くなったらつい記す秋

最高の快楽として死はあってイチゴは最後に食べるタイプだ

みなそこで貝はぱくぱく唄うのだ身のほどなんて興味ないのだ

世界じゃなくあなたがでしょう? ああこれは避けてはだめないのちの話

書を捨てよ街に出よう、書を買いに街へ出よう、街を出よう

ひさかたの本屋きみたちうるさいよ心に決めた本がいるんだ

案の定新宿ラビリンスで迷う地上はどこだ、今何年だ

欲しい本が多すぎるので耳を塞ぎ空襲を走るようにレジまで

色とりどりの傘に頭を覆いつつ人はしずくに弱い生きもの

装丁のまぶしき歌集にあてられるちょっとまぶしきすぎやしないか

ワゴンなき古本祭り、ブルーシートが文字を隠してつい海のふり

 信仰は踏まれるときは強くとも踏むときおそろしくしづかなり

最初からきれいに踏んでくれるのでここでもぼくは二流なんだな

寝たふりのあいだにわれはばらされて内臓だけをもっていくのね

人生は前向きがいい断捨離と思えばさっぱり、すっかり、ぽっかり

湾岸地域で子供とほとんど二人きり幸せなので逃げられもせず


#いちごつみより

大地からいろいろな色が湧き出して春ってなんだろうねえおじいちゃん

揺すったらどっぷんどっぷん悲しみを沸かして入ればなんかたのしい

旧駅舎の待合室のストーブの湿ったあたたかさを冬と呼ぶ

この長くゆれる吊り橋の真ん中で引き返すのもいやだ人生

あと処理がすべて終わって残りものの寿司にわさびが無いのに泣いた


川柳

あたたたた たたたたたたた たたか〜い

日曜にポエ散らかして雁渡る


俳句

急いだが回り込まれて秋あかき

収穫の喜び知らで秋まつり

恋人に飽き飽きと秋、柿ぬるん

秋の暮未来のための今でなし

新豆腐ことばがこころを斬るやうに

浴槽にはつか霧笛のようなもの


2024年6月21日金曜日

2017年09月の短歌など

あるきっかけがあって、2年以上して、自作のサルベージをひさしぶりにする。サルベージして、自選もしていたが、2017年07月からは、自選だけを載せているようだ。さぁて、どうなることやらら。


真夜中に髭を剃りだすこのわれを無視してやさしき家族のありぬ

どこでもドアを手に入れたのでこれからはすぐに駅までいけて嬉しい

薬と水溺れそうにて飲んでいる水飲むの下手でやや可愛らし

きみに似たたましいの子がかつていてごめんその子をしばらくおもう

存在を宇宙で一番この俺を肯定しなきゃならないところ

再びのバラバラのため進化せよインターネットという孤立主義

定型はある種の元気、そこまででないものは自由律のタグつけて

立っている後ろ姿の靴底のいびつな減りも切なき景色

いきるのはつらつらつらしつぶらなるひとみのひかりまたひとつきえ

ペンネームにも人格あらばこの表現はちょっと作者に相談しよう

明日からも消え入りそうに生きていく決意を込めて、おやすみなさい

逃げ場所があればいいけどぼくはぼくをルービックキューブみたいに変えて

さまざまな色で描かれたカニだからさまざまな明日をまっすぐ横へ

外人と朝のホームを並走すアーユーハッピイ? アイムぼちぼち

この電車はもうとめませんお客様のご理解ご協力ご覚悟を

"J"を冠してさも新しい感覚の時代があった、J日本人

JジャパンにまたJを付けまたJを付けて、これじゃぁおみおつけじゃん!

ごきぶりが夕方の町を飛んでいる僕らも平和を希求している

遅々として生きると決めたこの俺の足並みを真似してもいいけど

認めたくないのだわれの青春のソリティアやってた分の遅れは

かなしいじゃあーりませんか人間がいまいるところがつらいだなんて

今日もきみは薄く笑ってでもそれはダイジョウブルー、水底(みなそこ)の青

人はまた権威に帰りゆくを見るエーデルワイスをハミングしたし

Blackbirdのイントロを弾く、ぼくだけが覚えてそうな思い出のため

生命に危険及ばぬ詩を憂いて佐佐木幸綱のさかずきの酒

革命中に詩は生まれぬと言ったのは魯迅だったか、まだ在るのか、詩

奪はれるのは言葉だけかは、愛国の印に和歌のよみがへる明日

きな臭いのきなってなんなの? きぬ擦れの君に尋ねて喃語のごとし

愛し合うのに身体がいるのとあまりにも真顔で訊かれて嘘を答える

もう死にたいと子に漏らし笑う 子の我も微笑んでこの話は終わり

心臓がトマトだったと見つかってもう学校で広まっていた

シジフォスの昼の休みは短くて缶コーヒーを数分で飲む #ギリシャ神話ただごと歌

自撮り中に水に落ちたるナルキッソス、B612の文字消し忘る #ギリシャ神話ただごと歌

秒でファボ、分、時間そして日にてファボ、年のファボやがてその死へのファボ

ポエ爺もポエ婆もいま目の前のゆふちふ婆ほど稼ぐ能わず

パンが無いからケーキを食って革命だ、銀の食器で牛丼を食え

ビルほどの耐震構造もたざれば屹立ったってか細き一首

絶唱にならなくたって短歌とはつまりひとりであるってことだ

新宿の沖縄居酒屋おれたちもミミガー! ミミガー! こよいの祭り  #ラピュタ

きみとバルスしたい世界にきみはいず手もつなげずにほんと、バルスだ #ラピュタ

おまいさん今夜バルスを決行よ品川心中くらいの覚悟 #ラピュタ

実在を疑っているラピュタよりシータやパズーのような純粋 #ラピュタ

今日のうちにバルすかバルさぬかを決めてバルさんとする、害虫は死ぬ #ラピュタ

「チョコレートクリームチップフラペチーノ」覚者は七歩あるきて云へり

この夏も田舎のばあちゃん特製のチョコレートクリームチップフラペチーノだ!

雅とは牙をかくまうことならば書いた時点で隠せていない

君はきっと他にはいないという意味でオンリーユーと言ったオンリーミー


長歌「絶唱」

絶唱と 呼ぶべき一首 成したれば 死して悔いなき ものなるか  さあれ昨夜の こと切れし 歌人の胸に 絶唱の ひらめきおれば 惜しまれて よきかなしみか さだかならぬも

 反歌

絶唱を胸にいだけば短歌とは何首必要なる人生ぞ


川柳

誕生日のろうそくに太陽フレア

太陽フレアのせいで太陽フレアの句

素潜りのぷはっと太陽フレアかな

職探しは太陽フレア過ぎてから

市民課に太陽フレア相談室


俳句

曼珠沙華揺らした風にダンプカー

竈馬なみだにつゆも興味なし