2024年7月6日土曜日

2017年10月の短歌など

 短歌が表現の極北だったような時代はもう過ぎたんだけど、じゃあ自分の短歌を文学に興味のない人に見せておもしろいのかというと、そうでもないだろうね。自分の短歌がおもしろくない、という話とはちょっと違う話としてね。


短歌など。

昨晩のチータラがより乾きおりおれも渇いて今日のはじまり

王族ではもちろんないが今日もバルス明日もバルスお前もバルス

プロトコルをプロトコールと言う彼のトリコロールのセーターを見る

人を殺せる速度の車で会いにゆききみを助ける、殺せる速度で

キットカットは受験生にはいいだろう窓際の社員さびしくかじる

フルートをぴーひゃらと言われ怒ってた彼女が奴とつき合っている

自販機の缶コーヒーの「しにた〜い」に「ころした〜い」が加わって秋

四季即ち季節の死なる、秋の裏で一つ一つの腐(くた)れゆく菜(さい)

なしてなん? なしてあんたは出ていくん? そういう声を聞いた背中か

クリープとコーヒー 焼酎 ティファールのキッチンの森に遊ぶ飼い鳥

ちちははに記別与えるときのため若かりし日の話聴きおり

ツイッターで1行半の文章を韻律で読む、短歌じゃないじゃん

セスナではなくてデハビラントなのか、まあまた来てよ待ってるからさ

金出せば焼肉食える国で思うゲバラ、ゲバラの焼肉のたれ

東北で芋煮が語られるときのバベルのごとき神の制裁


#困らせることばかり言うから

父ちゃんが蟷螂拳のポーズする困らせることばかり言うから

逝く猫は飼い主をもう聞きません困らせることばかり言うから

お守りキャラが急にオトコにならないで困らせることばかり言うから

5次請けの男らの目の野生味よ困らせることばかり言うから


 #ちょっと汚れてしまったこころ

フットサルで大袈裟に倒れたる友よちょっと汚れてしまったこころ

beliefの語の変遷が気になってちょっと汚れてしまったこころ

(この歌はツイッターより結社誌だな)ちょっと汚れてしまったこころ

甘くないペーストを餡と言う時のちょっと汚れてしまったこころ


週はじめはうまい昼めしいのちとはときどき褒めてやらねばならぬ

オヤジギャグが何から何まで面白い夢を見たのだ、悲しい夢だ

な、なんと、コンビニたちが次々と? コンビニたちが合体してゆく!

シューティングのボス戦のような着メロで田舎の母だ、野菜届いたよ

ディスカウント理髪店にてAMラジオの政治批判よ、もみあげは残す

「詩を作るより田を作れ」という時代に生きたる人の詩の強いこと

われにとり詩はおならだと言う人の「とり」のところが天皇みたい

小さいとすぐ死ぬそして大きいとすぐに死なない、ではグッドラック!

そんな目で見るな国宝阿修羅像何百人目のぼくの涙だ

クロソイドカーブを曲がり高速へ君のつむじを掌(て)で包むため

これという策などないがおれとおれの環境をもっと愉快になさしめ

男らはついにはらまぬものだから永遠に詩がおもちゃのちゃちゃちゃ

そうやって口うるさくて家族って、いまは感謝はしたくないけど

定型ってげにお手頃な詩形にて寒くなったらつい記す秋

最高の快楽として死はあってイチゴは最後に食べるタイプだ

みなそこで貝はぱくぱく唄うのだ身のほどなんて興味ないのだ

世界じゃなくあなたがでしょう? ああこれは避けてはだめないのちの話

書を捨てよ街に出よう、書を買いに街へ出よう、街を出よう

ひさかたの本屋きみたちうるさいよ心に決めた本がいるんだ

案の定新宿ラビリンスで迷う地上はどこだ、今何年だ

欲しい本が多すぎるので耳を塞ぎ空襲を走るようにレジまで

色とりどりの傘に頭を覆いつつ人はしずくに弱い生きもの

装丁のまぶしき歌集にあてられるちょっとまぶしきすぎやしないか

ワゴンなき古本祭り、ブルーシートが文字を隠してつい海のふり

 信仰は踏まれるときは強くとも踏むときおそろしくしづかなり

最初からきれいに踏んでくれるのでここでもぼくは二流なんだな

寝たふりのあいだにわれはばらされて内臓だけをもっていくのね

人生は前向きがいい断捨離と思えばさっぱり、すっかり、ぽっかり

湾岸地域で子供とほとんど二人きり幸せなので逃げられもせず


#いちごつみより

大地からいろいろな色が湧き出して春ってなんだろうねえおじいちゃん

揺すったらどっぷんどっぷん悲しみを沸かして入ればなんかたのしい

旧駅舎の待合室のストーブの湿ったあたたかさを冬と呼ぶ

この長くゆれる吊り橋の真ん中で引き返すのもいやだ人生

あと処理がすべて終わって残りものの寿司にわさびが無いのに泣いた


川柳

あたたたた たたたたたたた たたか〜い

日曜にポエ散らかして雁渡る


俳句

急いだが回り込まれて秋あかき

収穫の喜び知らで秋まつり

恋人に飽き飽きと秋、柿ぬるん

秋の暮未来のための今でなし

新豆腐ことばがこころを斬るやうに

浴槽にはつか霧笛のようなもの


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