「猫のヒロヒト」
愛までの経過痛まし紙粘土の固まるまでのべたべたの白
人といてはじめて孤独、寂しがりやのお前と猫の話を始む
みどりの日に美しく過去は変色し変わりゆく僕は子猫を貰う
鼻髭の模様をつけたこの猫をヒロヒトと呼ぶ僕の底辺
久々に女を泣かす、泣く女慰める猫見ている男
白黒の解け合わぬ心あらわしてヒロヒトはついに吠ええぬ獣
俺とお前はやり直せるか擦っても擦ってもとれぬシミ付きの愛で
梅雨明けの空の青さに目が笑うもう殴らぬと決めていたのに
考えすぎは体に毒? どきどきと女に触れて痛み遠のく
猫のようなお前のしぐさ、荒々しい僕に無条件降伏の時も
裏返しの四角い部屋であついほどお前を捨てる事を思いき
ヒロヒトの写真を撮ろうあの時の跳躍をもう一度してくれ
眠るときのその無防備を率直に愛情と受け止めていいよな
逃走も行為と思うまっしぐら俺が捨てたきヒロヒトの霊
絞殺をとどまったのが愛じゃなく臆病なんて頑張れよ、俺
日常の短歌を捨てて弱く抱くヒロヒトは常に行為を求む
愛の巣を飛び出して行け何処へ行け? もう渋滞の車の列に
お前捨つる未来まちかき駅前は祭りのように女うつくし
逃走を選ばぬお前ヒロヒトを胸板に乗せて目を強く閉づ
ヒロヒトに噛み殺される夢を見て茶碗にミルクをなみなみとやる
0 件のコメント:
コメントを投稿