2019年11月10日日曜日

いちねんいちにちいちごつみ

20181111
父に付ける枕詞の乳の実はイチョウの実らし、匂いのことか

病室の窓から見える川ひとつ、父にはどこに流れる川か

事故のあとの父を祈りて回復と回復でないことをも祈る

父が薄まり母が薄まりゆく日々のわれもたしかに、同じくらいに

脳を潰して脈絡のない生を生きる父のところに子らが集まる

そうやがて父を離れてゆくわれの旅にたびたび現れよ父

なにひとつ奇跡なければ旅行とはついに疲れる移動の記録

移動する点Pの意志、サボるのも急ぐのもまた我には邪悪

本当は少し嘘です、人生の今世まるごとサボってもいい?

雲ひとつない空の下嘘ひとつないような顔してたねきみは

アンドレイ・ボルコンスキーの空なんて呼んでた青もずっと見てない

信号で例えるならば青ならば黄色のことを憂いておりぬ

この季節黄の花のなき道なるが黄の帽子なる子ら過ぎるなり

風に飛んで行方(ゆくえ)知らなくなるという終わりはハッピーエンドか帽子

風の噂じゃオレは頑張ってるらしい、そいつを見失ってるんだが

人間はカフェオレである、黒と白の配分をわが身を検見(けみ)しいる

休日の朝にはカフェっぽい曲を、カフェっぽく書いたものではないが

休日も夜更かしせずになることが悟りのような東京の夜

ボルダリングジムで子供がにょきにょきと登る、はじめから東京にいて

子供からそんなに優しくどうなのよ、残酷であれ、鋭くてあれ

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残酷なさよならだった、いやきっとそれがなければ別れではなく

人間がかがやくならば別れなど笑い飛ばしてあの山の奥

山道を歩くうつむく考える安同情のないところまで

叱られた神がうつむき帰宅する、地表は人類のいつものざわめき

人類史の68ページの人は30ページの人を笑うかな

読み差しの本のページに前回の悲しい気持ちが挟まっていた

悲しくてかなしくしくてしくしくと連絡したき時してはならぬ

くらげのような連絡網の足先は少しはねっかえるのも自由

権利などもたないままでこのくらげ眠ってのらり、起きててくらり

適切な温度のビニルハウスにて野菜の権利闘争、白し

傷みたる野菜が黒き汁を出すそしたらきっと捨てるしかない

捨てられる猫あれば拾われる猫あり、人は神じゃないのに

獰猛な感じをすこし残しいて猫のあくびは眠りへ至る

眠りから覚めて始まる永遠と延々がそう違わないこと

永遠でないことは知っているけれどぼくの人生はまたぐオリオン

土牢からオリオンならぬ鼓星(つづみぼし)を腰まで冷えて見たか過去生(かこしょう)

顔面を冷やして帰るビル街の人類だけの地球のごとし

地動説を結論付ける瞬間のガリレオのめまい、地球のめざめ

あっけなく倒れてしまうわが内に地球がありて地球転べば

起き上がり小法師をつつくPCの待ち時間倒れても倒れても

机にはPCがある、そのような時代ばかりをほとんど生きた

時代とはやっぱり川か、水は流れ、流れを作り、流れに流れ

水流はわが手を離れゆっくりと湯船(ゆぶね)に線をあらわして消ゆ

湯船からざざあとかたちできあがる怪獣われが破壊する街

歴史的遺物が破壊されている映像が呼ぶ正義の殺意

映像のあなたが語る呼びかけを未来人のように聴いている夜

殉教の人を祝いて二千年いま生まれても殉ずるべきか

「お祝いに白くて甘い三角の上に苺を乗せる」文明

しかめつら文明もニコニコ文明も滅びるだろうけど選びうる

われニコニコゆえにニコニコのわれありと思い至りて年の終わりぬ

年末の掃除ギトギトわれはコギトエルゴスムさず、私心なきまで

20190101
掃除して要らないものは捨てること、要らない思想も随分溜めた

思想さえめでたいような一年の始まりのさかづきの透明

透明が形を決めて完成後の切り絵の捨てた方をいただく

かろうじていただき見えて富士山は八万歳のまだまだなかば

八万の仏の言葉あるというおそらくはたったひとつのために

一年をのこのこ始めたるわれよおそらく楽しいこともあるらん

楽しそうなラーメンと君が呼ぶそれはチャンポンである、名前も、らしい

名を呼べば記憶は振り返るだろうか向こうが見るのも記憶だろうか

記憶って海のようです、泳いでも疲れて濡れて結局戻る

冬の夜にハイボールそしてチョコレート、舌から喉へ香り濡れつつ

蕎麦食って店を出るとき日照雨(そばえ)なる、喉満ちていて小走りならん

肩に手を回して男は少年を包んで少年満たされたるか

よしだきせいと読んだら軽く笑われて男はもっと軽く笑った

皆に沿ってゆっくり間違っていく真面目に生きた方だと笑う

アスファルトとコンクリートの隙間から生えてきたからもう愚痴ばかり

襲いくるゾンビのごとき愚痴を撃つ銃弾を惜しめばすぐに赤き死

銃弾もひとつの甘美、人間はそうそうそれを許してくれぬ

許されたわけではなくて赤信号みんなで渡って死ぬ人もあり

われわれはひとりひとつの風として職場と家を渡りゆく風

職場には友を求めぬ風潮で全員を動物に例える

周りから何周遅れてるかなど知らない白き動物を飼う

半周で勝負が決まる自転車のゆったり散歩みたいな前半

勝ち負けをはっきりしないまま終わる焼け残りたるまだ燃える薪

これからも文明はよく燃やしゆく一番燃えてるところが火元

「明日は今年一番のさびしさです」とLINEきて恋人のその予報を信ず

さびしいというより寒い半島の岬の灯台守の長靴

一周で2回は灯台が照らしその次までに言えよ恋人

休日は恋人気分なる二人つまり週休二日の微笑

休みとは明日が休みという気持の安らかさなので日曜は暗し

日曜が左のカレンダーというおためごかしに騙されはせぬ

音楽的に微妙なアニメのエンディングソングに騙されて、懐かしい

20190201
石炭が石油に変わりゆくときの最後は誰も見ぬエンディング

今のままのダメなあなたでいてよって変わりたくなる為に言うのか

言うことはもっともでありやることも旧暦のようにずれてなければ

旧暦の行事か知らず恵方巻きのハーフサイズは朝飯にいい

朝飯にコーヒーを挽く、コーヒーはその一日の最初の褒美

一日(ひとひ)には一日の褒美あるというそれを探してやや明るくする

ラジオからあの二胡の曲、探すのをやめたら少し近づいてくる

重ステの出前の商用車で聞いたAMラジオの野球なつかし

この古いビルの階段の入(はい)り口にいつも出前の器のありき

階段で中のケンカを聞いていた、空は先まで真っ白だった

葉の上にまだ白いもの残りたる昨夜降りたるこれがなごり雪か

名残惜しい気持ちだったよ男女5人夜道をおしゃべりして歩きいて

おしゃべりのない職場にて僕がみる天井に風船な思念を

天井の木目は長く見た景色、語り合わない友だったかも

もう会わぬ友を思いて友のない今はなかなか余寒のつづく

寒さとはたとえば海苔の養殖の人は基準にならぬ厳しさ

刻み海苔を貼ればすなわちクールジャパン守りたきこのエロマンガ島

エロいということば繁盛する世紀にいる限りきっとわれらはエロい

価値観が商売繁盛ばっかりな現在がかなり不満ではある

価値観を逃げてゆくキツネのしっぽ、捕まらないでいられるかなあ?

思想とはしっぽみたいで本体の後ろに付いてバランスを取る

要するに男が去勢することが現在の平等のバランス

去勢された宦官の顔に髭はなくおそらくくすぶり続けておらむ

休みには時間をかけて髭を剃るどこにも行かずこころゆくまで

亡命を余儀なくされたらどこに行こうそして日本を恨むだろうか

日本的なその短調のメロディがけっきょく居心地よかったりする

メロディしかなくて🎵ハッハハ繰り返すバロック以前の男声ミサ曲

百年前の音楽だって眠いのにバロックとかもう催眠魔法

20190301
生という一生の魔法かけられて魔法が使えたらなあなんて言う

君の声や顔を忘れるくらいまで君が大切だったと言うぞ

風呂上がりのようにさっぱりした顔で「最近サッパリですよ」二回目

風呂で洗うわたしの何が洗われて何の汚れが残ったままか

いつまでも汚れていてと思うけどきれいになるかきたなくなるか

きれいな音を鳴らしてヒール履くきみをあの頃のわれは見つけれなかった

ヒールという風習いまだ繁くして女の時代はまだ終わらない

終わらない仕事にしかし独特の楽しさもちょっとあるのが困る

パンに塗るマーガリンこそげ取られいて仕事に向かう私のごとし

マーガリンは忘れた頃に食べるときもっとも美味で二日目は普通

「マーガリンを危険視する人は他にこんな食品も危険視してます」

災害の危険に満ちた毎日で実に律儀な民草の国

改元で日本の何か変わるような律儀に期待する気持ちあり

元号は「大福」とする、中国の古典にたぶんあるし美味しい

大福にいちごを入れる罪深き発明をして昭和は終わる

発明王の「頭が良くなる薬」というとても頭の悪そうなネーム

遺伝子は人間という馬鹿馬鹿しい乗り物でレバーガチャガチャ進む

創作はマリオカートだ馬鹿馬鹿しいことだ表現の安全運転

運転が減って歌わなくもなって下手になったことも気づかない

生きるのが下手でもいいじゃないですかせっかく心があるんですから

飛びそうでまだ足をつと地につけてそのしばらくの心のかたち

レコードも知らないくせに記憶が飛んだなんていうんだ、あ、メモリーからか

メモリーの増設のあとの快適を人に伝えることはないけど

快適の少ない町に戻りきて快適でない礼服を着る

牛よりも馬を食べてた町の話、牛は最初は土臭かった

くろぐろと目の濡れていて老い牛は人を恨んでないであろうか

ふと浮かぶわくわくちゅぎゅって何だっけ樗牛の樗とは無用の意味で

平成が終わって次にわくわくな何が始まる国とはなるか

始まりが始まるまでを寝ころんで起き上がりたくなるまでの待ち

妙な期待なくなるほどに早く寝る回し車の夢のハムスター

ハムスターの姿の神よこの地球を噛み砕かずに頬であたためて

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青空の真下で思う、あと何回頬の内側を噛んで固まる

元号があたらしいたびに元号の内側と外側の生るるも

元号は令和ですって、キャリーオーバーした分は次に、次はいつだよ

人間がいつかは悟るものならばキャリーオーバーになるか今回も

悟るって発見よりもおそらくは決意に近いと気がつけるまで

生き物はなんとかやってゆくばかり近くの公園の土の穴ぼこ

やってみたいと君が言うから公園でワンカップだけのおっさん花見

おっさんは深く静かに生きるべし、そんな言葉に騙されるなよ

早く寝る夜はおそらく静かなりゲンダイジンは夜中も動く

福笑いみたいな顔で泣いている夜中の人が昼間快活

快活なこころにひかれゆくものを毒吐くキャラのさみしい毒ぞ

人類に毒は増えたか減ったのか知らぬが薬は一応多い

人は死んだらどうなるかなんて考えて知らぬがブッダ、毎日仕事

聖人を描くのは嫌になるらしいブッダを描く手塚治虫も

ゴム人形の手塚治虫のキャラクターみたいに歩く、心象として

人形をつくってしまうわれわれは征服者(コンキスタドール)なんって、失礼

孤立主義に征服されてわれわれの隣人同士のまなざし不審

猫の方が近所を知っているだろう隣は何をする春の人

猫屋敷の思い出かすかしかれども玄関くぐれば缶詰の匂い

玄関は暗いところであったこと家そのものが暗かったこと

理想主義は家で育てよ家の中にイズムは言いがたく作られる

理想とは垂訓が山にあることでその山を下りるまでが遠足

遠足のような小さな弁当を会社で食べる永い遠足

半日を会社でモニタなど眺め指先ぴらぴら働く世紀

モニタとか液晶画面ここではないどこかばかりを見ているぼくら

画面には銃痕に似たヒビ走り命を救ったスマホのごとし

スマホ持たないブームがやがて来たときに懐かしそうにアプリゲー語る

レトロゲーちまちまやってハイスコアを友達と競いあいたい令和

ちまちまと洋菓子みたいな犬がいて洋菓子の名を飼い主が呼ぶ

車窓から犬が見ている世界とはこんなに人が変えてしまった

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車窓には雨のふるさと、去る時に晴れるであろうつれなきところ

晴れていてしかも霧雨ふる場所でちょうど気持ちもそんな内面

生き物にみんな内面あることの公式行事に響く靴音

行事用の噴水が水を盛り上げて行事終わればはやpetite mort(プチモルト)

噴水をまぶしく見てる結果でなく原因のような笑顔できみは

結果論のように連休後半をなんにもしないコーヒーを飲む

コーヒーの豆をごぐるり挽いている身を粉にしたらわれも匂うか

大型の休みも終わり人間はまたさまざまに匂いだすなり

人間が人間のままでいることが休みとは何だと鏡に叱る

化粧する君の鏡をのぞき込んで知らない女に会ってしまった

いたるところに穴があるけどのぞき込んでいいものなんてそうそう無くて

中古ゲームショップをはしごして探すゲームが無くて歩く箱庭

箱庭はきれいにしても箱庭には外があるらし、ちょっと気になる

外に出たインコその他の鳥のため鎮守の杜はみどりを吹けり

エモい歌手がさもエモそうに歌うのをインコが苦しそうに真似する

真似されて広がってゆくものゆえのオリジナリティにこだわるやまい

やまいではあったと思う心でなく頭と相談していたボクは

心とはこころもとなきものなので我慢するのが現代しぐさ

顔よりもしぐさの記憶になってゆくもう会うことのない恋などの

朝食を作らせながら恋なんてしてないなんて♪言うなよぜぇったい~

朝起きてちゃんとお腹がすくようになってはじめて朝食がわかる

腹が出る生き物なのにみずからを肯定しないほどの豊かさ

豊かさの指標のように野良猫が片足あげて毛づくろいする

野良猫に自分の名前つけていて最近アイツと会わなくなった

休日に誰とも会わなくなったからインターネットの正論まぶし

正論がひとつもないとそれはそれで別の生きづらさの二日酔い

二日酔いのいちにちまるで生命にピントがあわないまま仕事する

年取れば世界のピントがズレてゆく目についてならメガネでよいが

少しずつ顔の一部になってゆくメガネがデフォルトのわが顔になる

デフォルトの顔して仕事しておりぬいやみな奴はどこにでもいる

どこにいても連絡取れる世になって連絡取れなくなったら終わり

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連絡も取らずに忙しいままで次に会うのは何色の星

何色の若さにしよう今ぼくは年を取ろうか考えている

あの人がぼくだったらと考えるよくぞスパッとやれたもんだな

あたたかいスパッとと冷たいスパッとがあってスパッと決めねばならぬ

決めかねている生きることの目標は浅からずかつ難しからず

短冊に書く目標のぺらぺらと裏返りつつまた裏返る

若ければ裏返ってもいられたがだからと言って戻れぬところ

戻りたい過去なんてない、こともないがどうせ現在へと至る道

君も過去言ったであろう「何時何分何十秒」の口げんかみたく証跡をとる

証跡はPDFで保管されまだ十年あと何年の規格

脳という保管庫もまたあやふやできみももう断片的なシーン

"われ"もまたこの全体の断片かゼリーのかけらまとめてすする

透きとおる緑のゼリー食べるときどこか昭和のよろこびがある

つぶやけずタイムラインを見るだけと思えばさびし透きとおる霊

サニブラウンは片仮名表記なのだろう国籍ルールの風透きとおる

ルールとは変わりゆくもの、守られているのは変えないルールの追加

諸行無常ぜんぶ変わっていきますねそれでは現場から以上です

現場には言葉少なき女子ありてここにあらずという意思つよし

心ここに在らずそこにもあそこにも実はどこにもありませんでした!

タピオカを心の補修材にして噛み噛みにして飲んでる彼女

タピオカはきっと沈んでゆくだろう山椒魚がその上をゆく

山椒魚を聖なるものとして見おり俗を突きぬけたるものは聖

聖と俗なのではあるが神様の便所じゃなくて便所の神様

目の前の壁を破れと目の前に落書きがある和式の便所

落書きの中に未来が含まれて必要なのがNGワード

賑やかな街と職場の裏側にNGワードの川 音もなく

言葉とか思いで賑やかすぎるのだ話さなくても命は足りる

美味しくて小さいプリンすぐ食べて王よこれでは足りませぬとも

12頭目のラクダの話を聞いたのでプリンを11個も買ってきた

急いでもラクダのようでありたくて顎を左右にしてガムを噛む

20190701
王選手は顎ががくがくだったというエピソードなどありて昭和は

これからも大王もその偽物も現れてぼくは信じるだろう

偽物の苦労のような残業でジャンクフードを褒美に食べる

憎悪そのものがいけないわけじゃないヘイトスピーチはジャンクの言葉

ネガティブな言葉が消えて、ネガティブは態度でしめそうみんなで○○を叩こう

叩かれて素直に折れる凡人だ褒めたら起きあがる凡人だ

それはつまり強いひとつの意志として進む未来の平凡パンチ

短冊の願いがやたら面白い未来であれと書かれた短冊

面白がる元気を胸に死守しつつラガーマン走るその端っこを

走りつつ苦しまぎれに空を見れば目先と永遠とがふと混ざる

現在の思想も人を責めやすく無知と差別を混ぜるな危険

危険から身を守れない毎日だ銃ももたないだらしない顔

だらしなくしていても正義は勝つか だらしなくない悪意いい顔

空気薄い宇宙はきっと善悪も薄くてのっぺらぼうの神様

ながながと神を信じた種族ゆえ起きたくないし二度寝もしたい

寝苦しい夜がまた来るエアコンをかけたらかけたで寒い丑三つ

丑三つ時に漠然と覚め、夢に住む人たちは夢で面会できる

面会のアクリル板の穴のひとつに指入れて待つ、あ、汚いかも

汚さの少なくなった現代に残る汚れはおそらくこころ

ディディミウムフィルターで見るこころには黄色が遮断されて見やすい

緋目高(ヒメダカ)は赤というより黄色くて本人たちは気にもしてない

選挙など気にもしてない人といて政治を怒る人と比べる

鉛筆でユポ紙に多くその名前を書かれた人が政治家となる

助けたり助けられたりしたいのだ名前は名乗らなくていいのだ

のったりと宇宙を泳ぐサンショウウオ助けたいなら拒みはしない

のったりとエスカレータで歩くのをやめるもうすぐ日本が変わる

歩くのは右から左エンディングの音楽終わるまでひたすらに

タイムセールが終わると購買欲も終わるほんとは誰も欲しくないのだ

欲しいという気持ちがつまり人生だ、それって芥川の芋粥

芥川に憧れた太宰に憧れて日本文学の死のチキンレース

ニッポンの文学はいまどこにいて死にたがってるジャンルはどれだ

20190801
いい話、泣ける話というジャンルわれはいかなるジャンルのいのち

泣くも鳴くも「なく」日本語の中にいてNACK5は埼玉の風

軟骨のクッションのように埼玉は衝撃吸収能力ありそう

自動車の事故の衝撃実験の人形にまた生まれ変わった

人形に性器がなくて人形にジェンダーふりふり施されおり

ふりふりとふりかけかけて大人には一品分のおかずになりぬ

おかずなんかはちょっとでいいのだーと歌うひとりの飯だ、金は欲しいな

金のない生をたのしく生きているとんぼが立ち止まってまた行く

叔父さんのたんぼにとんぼ、数年後コインパーキングになるという

コインパーキングにひとつつむじ風、風も居場所がないときがある

居場所など木の幹でよい、ヒグラシとその木のような世界とわたし

ヒグラシもヒグラシのその鳴き声もあしたのようなきのうのような

アフリカでは差別主義者のガンジーだ、あしたはどこに英雄あらん

衰えてゆく英雄をながめおりちゃんと過去形にするのも知性

窓に当たる雨が垂れゆく衰えゆく世界を暴れまわれ颱風

世界に一つだけの花とか流しつつ戦争に勝つ国でありたい

国力に人が思いを致すとき戦争ドミノの角の取り合い

角部屋は梅の木が見え、若者は終日 性を戯れていた

人間は性器がつなぎゆくという事実にがにがしき瓜噛みて

ほんとうは苦瓜は甘くなるというその前に食べられるにがうり

甘いものを褒美にしたい心地してコンビニで饅頭を見ている

饅頭のうす皮が口の裏側にひっついており、われのみぞ知る

いちにちはとろりとすぎて、われのみが坂のごとしと思うにあらず

坂をゆく人々の列にわれもまた肩を落として加わる背中

背中ではさみしくないぞ食堂のわざわざとなりに来るおまえたち

おせっかいな友がいたっけ、あとあとにそのわざわざがしみじみとある

おせっかいに将来われもなるだろうと思っていたが難しかった

難しい時代だろうか、どの時代も明日のことは誰も知らない

魂が大きいものを求めるのを習ってないから知らないという

習わない歴史のように人間が今日もうらおもいに満ちて行く

歴史観そのものが変わりゆく時代に歴史を読めば不便の歴史

20190901
火星などおそらく不便、人類はまずコンビニをしばらく探す

コンビニの床はましろに反射して深夜勤務の顔たがい知る

やりすごす深夜勤務の一日の終わりの朝ぞ暗くして寝る

寝て起きて庶民のわれにテレビでは世界のニュース、うまくやってよ

まだニュースになってすらない暴力を思う、逃げれる運はあるかい?

裕福は運の良さだが幸福は運じゃない気がしてきたぞ、うん

裕福な街かどうかは女性の服で分かりそうだが分からないふり

服を褒めるのも難しいおっさんが陰口のように服を褒めおり

陰口を聞かれてしまいあきらめる本心じゃないが善人でもない

本心はあまり突き詰めないほうが自分を傷つけないこともある

むしろみんなばらばらにものを考えて時々傷つくだけで済んでる

ばらばらだ豚ばら青菜チャーハンをよく食べたオレたちもいつしか

チャーハンにオイスターソース香りいて個人的なる記憶よみがえる

社会学が発見される前までの個人的なる自殺なつかし

社会学は名前をつけてくれるだけ知は力です知は力です

世の中に読めない名前増えてゆき嘆く奴から世の中を去る

世の中の役に立たずにいるからにモブっぽいこと言えば楽しも

人生の達人という狂人は日々を楽しむつもりであろう

狂ってる人がひとりもいないので水位が上がりゆく箱の中

箱の中に天狗の面が一つあり一度開けたらうまく収まらぬ

今まででなくてこれからこそ大事電柱の上で思う天狗は

電柱を人は次々並べたらとりあえず鳥は止まってみよう

空を飛ぶ、最初は逃げるためだった、その頃の記憶残して鳥は

記憶の家に、記憶の日曜の朝の、目玉焼き食べる記憶の親子

目玉焼きの端カリカリとプラスティックみたいなところを転がる醤油

悪役のプラスティックを追い出して紙のストローが唇に付く

ストローを抜いてごぶりと杯をあおぐ毒なら毒で愛なら愛で

毒のような苺大福買ってきた一番合うのは紅茶だろうか

紅茶のむ部屋のカーテンを揺らす風、何かの挿絵のようじゃない? これ

いつのまに挿絵が世界観となる小説の類似してる異世界

20191001
異世界と思えばここも変わってる世界だ魔法も魔王もいない

ねじくれたわが心根を真っ直ぐにする魔法習得の冒険

同じ道を毎日歩く会社員の冒険、普段行かぬ店で食う

毎日がだんだん小さくなってゆく、怒りっぽくはならないように

休日は液体みたいにいるよろし、固体の怒りのアイス舐めなめ

箱買いのアイスはちょうど食べたことを忘れるサイズ、急にラスいち

ラスいちで那須与一がひょうと射(う)つあの平家側も盛り上がる感じ

駅前の弾き語りする兄ちゃんかつて平家物語うたう琵琶法師だった

賑やかな駅前は淡い恋に似て恋終わるあたりに住宅地

イングレスで一度歩いた住宅地をなぜか覚えているゆるい坂

イングレスの網ガチガチに張られいてあきらめて別の冒険にゆく

冒険はスマホの中で人生はスマホの外で楽しむとする

スマホから魔人がぬうと飛び出してアキネイターじゃねえかお前は!

雨嵐のなか飛び出して行ったので命の玉を転げ落とした

公園で砂場のアリを溺れさす無邪気な神に命乞いする

公園に入らずチャリで佇ったままスマホをいじる今の風景

その隅に乗れなくなったチャリたちが廃墟の予感のように重なる

人間は廃墟がこわい、思い出がくさったままにあるのがこわい

怖い話を無性に観たくなるゆうべ、お笑い芸人が役割を担う

笑う差別、差別を笑う余裕なき氷は透きとおってて冷たい

氷菓子暖房の間で食うことの娯楽のために冬を待ちます

勝ちたくて戦う男を観ることは娯楽、この世は観るなら娯楽

外つ国の雨しげければ堤防の決壊を見にゆく老い男

堤防に冷ための風吹いてゆくこの世ではないところからのよう

この世とは数の定理のある世界あの世にはどんな数学あらん

数学をいくら学べば身にかかる損を笑っていられるだろう

損得に多くは生きるものだから損得抜きのことを祈ろう

祈ったら祈った人が変わるのかよ、でも祈りってそういうものか

一時間ごとの天気の変わりゆく雲をみている、自分のように

天気さえカリスマは影響させて人間原理の虹などちょろい

ちょろい奴がいなくなったら懐かしい油断も隙もない街となる

20191101
ヤクルトをピルクルに代え変わりなし油断しているわけではないが

シンボルが燃えてしまって生活は変わらないけどおかしな気持ち

雨が降る夕方屋上遊園地のさみしさできみと会いたい気持ち

秋ごろは雨が冷たく白くなる心を隠さなければならぬ

小動物が食料を隠す武蔵野の乾いたものを踏んでゆく道

武蔵野の高い木立の街道をふたたび見たら懐かしい日々

街道に並ぶチェーンの食べ物屋、わりとどこでも同じものを食う

食べ物を健康的なものにして長生きでなく病まずにいたい

寝て起きて食べて出す動物としてまず動物としてよい動物に

あたたかき液を回して動物は北斎の波のような生であるなり

ニッポンのアートは可愛さへ至る北斎もその父の一人だ


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