2020年4月4日土曜日

ふらくた連句#1

ふらくた連句「今宵は雨に」の巻

照屋沙流堂・・・沙流
くらげただよう・・・洋
小澤ほのか・・・ほのか
袴田朱夏・・・朱夏
寿々多実果・・・多実果

1 おぼろなり今宵は雨に散るさくら
沙流

2 液晶からは笑みがこぼれる

3 ドローンを無事に野生に帰す日よ
沙流

4 個人情報回収はして
ほのか

5 コレクションルームに横たえるパスタ
朱夏

6 ソムリエールは月光浴す

7 脱ぐごとにかたちは不定形となり
沙流

8 洗濯ものにアイロンかける
ほのか

9 ひまわりと背比べする園児達

10 かざした腕は雲をかくして
朱夏

11 ドーナツの輪っかを風は吹き抜ける

12 輪っかでないところも吹き抜ける
朱夏

13 北風が南風へと移りゆく
ほのか

14 知らない国の地図を広げる

15 赤えんぴつを耳に挟んだ先生は
沙流

16 ぼくの未来に印をつける
朱夏

17 耳たぶに小鳥のピアス羽ばたいて

18 とても桜が、さくら色です
沙流

19 ちゃんと読むつもりで開くマニュアルに
朱夏

20 生き急がねば使わぬ機能
沙流

21 高い木の人に届かぬ柑橘の
沙流

22 月に届かぬさみしさばかり

23 初雪のガラス細工が終わらずに
朱夏

24 ショーケースには林檎を並べ
多実果

25 引力からは逃れぬふたり

26 連星となって回れば宇宙の輪舞
朱夏

27 踊りつつソーシャルディスタンスは保つ
多実果

28 水平線に届くため息

29 いつまでも壊れたままの幽霊船
沙流

30 霧のむこうは16世紀
沙流

31 一粒を眉間で受けて雨と知り
朱夏

32 あなたのいない場所へと向かう

33 フルートの音色が未来から聞こえ
沙流

34 児らは空き地に並んで座る
ほのか

35 缶蹴りの缶だけ残る午後六時
多実果

36 秋刀魚を焼いたにおいを辿る

37 絵巻物の雲に隠れて盗み食い
沙流

38 遠くにヤコブのエスカレーター
沙流

39 堕天使は輪っかを外し羽根を脱ぎ
多実果

40 悪魔は拾い集めて回り

41 洗濯物外には干せず部屋干しで
ほのか

42 手縫いのマスクぶら下げている
多実果

43 沈黙は金か銀かと将棋盤

44 と金ははしゃいでも捨て駒だ
朱夏

45 一円をみなから集めて元気玉
沙流

46 返礼品は2枚のマスク
朱夏

47 笛吹きが笛を鳴らせず一人去る

48 蛇は壺からなぞって逃げる
沙流

49 カレーにも味噌汁なんてと思うだろ?
沙流

50 「スープスープ!」と叫ぶインド人
ほのか

51 スマイルで首を左右に揺らし来て
沙流

52 線香のけむり迷いつつ消ゆ
沙流

53 校庭のイチョウのそばに埋めました
沙流

54 連休にどう緩んだかのメモ
朱夏

55 青ばかり減る絵日記をよしとして
沙流

56 工作の指の棘がとれない
沙流

57 友達は異性の話で盛りあがり
沙流

58 そのあとわたしにキスなどする
朱夏

59 一切はじゃんけんだ、なんてうそぶいて
沙流

60 鋏じゃなくて鉄砲のチョキ
多実果

61 ひび割れたきみのスマホはなおせない
沙流

62 繰り返してる留守番電話
ほのか

63 失踪の部屋の壁に画鋲だけで
朱夏

64 失意に至るあこがれの跡
沙流

65 展示中の旧ソ連圏のデザイン画
沙流

66 「空か海かで揉めろ」と題は
朱夏

67 ペンギンよ飛ぶのも泳ぐのも同じ
沙流

68 笑うのも泣くのも同じこと
沙流

69 厄災をにげて岬のいきどまり
沙流

70 追いつめられたことに気づかず
多実果

71 壁を背にしたら何かにくすぐられ
朱夏

72 どん兵衛一年分の崩壊
沙流

73 五百年夢見続けた座礁船
朱夏

74 甲板でけさもラジオ体操
沙流

75 蟹といっしょに泣き戯れて

76 蠍とはあまり話をしないけど
ほのか

77 隠し持ってるのりピー語録

78 証拠を前にただ黙秘権
沙流

79 タピオカが吸えぬ細さのストローで
沙流

80 品定めする姫の目ぢから
沙流

81 マスカラ落とすパンダの母に

82 閉口をするもしないもあたたかなりき
朱夏

83 真実の口にひとつぶチョコを置き
沙流

84 舌が出るのを朝まで待って
多実果

85 金網のひるがおゆっくりとひらく
沙流

86 仕事無き日はアラーム鳴らぬ

87 眠そうな顔でいつまでいれるやら
沙流

88 ニャンとも言えず顔あらう猫

89 無伴奏チェロ組曲がループして
沙流

90 船こぐような昼の明るさ
沙流

91 真っ白と思った壁が象牙色
多実果

92 ユトリロも来たことのない街
沙流

93 旅行ならオンラインより地図帳で
多実果

94 早馬のようにページ繰りつつ
沙流

95 電子書籍の画面に触れたまま眠り
沙流

96 そのまま起きることはなかった
朱夏

97 きみをつかむ時間が徐々に手を離し
沙流

98 風のぬるさがまとわりついて

99 春光があたためている二重窓
朱夏

100 季節移れど汝が顔映る
ほのか

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