成人の休日
昨日(さくじつ)は成人の日であったかと今さらの 休日のくらげ
そういえば華やかそうな着物らの和洋折衷なるワイン色
新成人は許可さるる、白き歯の裏も頭蓋の中も濁る権利を
てんぐさに酢と熱を入れてどろどろを冷やして天突(てんつ)きでぐいっと 二十歳(はたち)
我がその日は徹夜明けの自治会室で輪転機を絶妙に操(あやつ)りき
黒いソファに臭(にお)う毛布を掛けて寒し、式ではネクタイをくれたらし
堅苦しい袴姿を褒めるほど闘争は易からずき 二十歳(はたち)
マナーモードし忘れの俺のグールドの第一変奏電車で響く
追悼会の合い間に電話くれし人が静かに問う「今、どこの辺りに?」
先に着けばおみやげをひとつ思い立つ、天井が板チョコのカフェの
行き先は風に訊きつつ、いやまさか! グーグルマップにわれの立ち位置
どの場所にいても宇宙の衛星が我を算出する、今はよし
ざくっざくっと少女クララは雪を踏む、ブロック舗装を行く我もまた
数十の中から選ぶチョコレート、命運は何も決まらざれども
遠方の人と会いたり、駅前でピカチュウ男を撮りそこねたる
「美人そばの店に行こう」と誘われて美人とそばの比重あやうし
あいにく、新成人の祝日に美人もそばも閉まりたるなり
画廊には男三人コップ酒、乱反射する言葉のにおい
うたびとと紹介されてわがこころふりさけみれど炎(かぎろい)見えず
ガード下の明るい店に消えてゆく五人その後は語るべからず
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