2016年6月12日日曜日

2016年05月うたの日作品の30首

「難」
難しいことなどなにもあらざりきしあわせなきみを祝福に行く

「訛り」
ふるさとの訛りなき男帰り来て半透明の少年が笑う

「ゴミ」
今ここで決めようスマホのフォトデータのきみをゴミ箱に移すか否か

「カフェ」
カフェになるくらいだったら解体を望む古民家の有志連合

「子」
カエルの子は人間の子は俺の子はカエルを人を俺を越えゆけ

「ジュース」
懐かしい二人が話し込んだのちバナナジュースは甘く曖昧

「皿」
大皿にアスパラの肉巻き積まれ某(なにがし)の五位の笑顔となりぬ

「母」
母の日にいつもの母でない顔をみたくなるとき子の顔である

「学校」
居心地のいい比喩として君が言うそこにはぼくは居たことがない

「自由詠」
アップデートされなくなった機器たちのメモリのための天使が来たる

「引力」
解決でないのは知ってると言った、引力のようなものだと言った

「自棄」
自暴自棄のように体を鍛えおり今日も宇宙は今日分冷えて

「床」
逃げるとき上ではなくて床に降り本当は追ってほしい文鳥

「遊」
仕事帰りの電車がわれを吐くまでをゲームをせんとやスマホ擦(こす)りて

「声」
風邪ですとふいごのような声で言う、風邪が「かぜ」なることふとたのし

「賭」
見届ける最後の人を思いつつ人災よりも天災に賭く

「ドラマ」
ドラマとは逃げられぬこと、テレビ消してその瞬間にたしかにドラマ

「元」
おみやげの「雷鳥のたまご」食いてはて、元始男はなんであったか

「18時」
18時を過ぎるまで飲んでダメらしいまるでこどものようにオトナだ

「風呂」
自宅なる風呂にしあればフルーツの牛乳はないが悠然と立つ

「必」
必要なものはないけど百均はうなづきながらちょいちょい入る

「席」
なんとなく配慮されてる席順のなんとなくオレが盛り上げ役の

「コンビニ」
交差点を挟んでふたつコンビニのひとつは携帯ショップに食われ

「歩」
悔しくて食ったんだろう、このうちの将棋の歩には小さい歯型

「畳」
たたなづく青垣をゆくぐにゃぐにゃの蛇の道路のもう胃のあたり

「橋」
橋脚は一度はおもう、オレだけなら一瞬両足上げてみようか

「山」
山だけが景色の町で山ばかり描いてたいつも見納めとして

「全部」
見えるものは全部見たけど最初からトラは屏風の中にいたまま

「勇気」
銀色のバランスオブジェの片方に今日出なかった勇気を載せる

「やっぱり」
パリに住むような遠さだ東京もやっぱりそこがしあわせですか

0 件のコメント:

コメントを投稿