2017年5月24日水曜日

2015年4月の作品雑感。

4月というのは明るい季節で(もう五月だよ)、桜を中心とした植物の一大イベントがあります。桜の歌というのは、よくもまあ飽きないもので、今年もいくつか作ったし、2年前も、けっこう作っていたようです。

現世に薄桃色のエフェクトを無理くりかけたように桜は

見るたびに桜は歌になるという文化を深く知らぬ私に

春霞に桜があればなんというこの国はまだにっぽんである

上も桜下も桜の向こうから学生服が美しく来る

ライトアップ夜桜と夜の人の列その下に黒き水の流るる

かなしみは少しはあってかまわない飛花壮絶を眺めておりぬ 

店内も花びらまみれ、かすかなる水気を帯びて終わりゆくよし

花びらを拾い集めて少女にはいつかうとましからん盛りの

自分から一歩もたった一歩でも逃げられざりき、散りいる桜

1年に一週間ほど、というドラマ性には敵いませんな。

自選。

かなしみは少しはあってかまわない飛花壮絶を眺めておりぬ 

ひょっとして歴史をひとつ完全に更地にしたる跡地の重機

孤独とはいかなる罰か雀らのひとつ逃げればいっせいにゆく

自分から一歩もたった一歩でも逃げられざりき、散りいる桜

先輩は気付かなくても後輩はモールで頭を深々と下ぐ

前髪を何度もさわり片隅の承認欲に頬もゆるみつ

雨のため冷たく寒きこの夜を野良猫はおのが熱抱いて寝る

闌(たけなわ)は季節でなくて眼前をかく見るこころ、たとえば君の

馬車馬に生まれた馬は引くことと生きることとの区別なく引く

尊厳がひとりでに輝くように思っていたよ、錆びし鞦韆(ぶらんこ)

この花はたった自分の上だけをみつめる赤きチューリップかも

あまやかに侵食したる菌類の樹皮を覆ってやがては殺す

老いぼれた犬がゆっくり老いぼれた飼い主とときを超えたる散歩

エロがもつ救いと救いのなさなどをふと、まさか君に話したかりき

風のあといっせいに靡く見ておりぬ当然のように哀しいように

わがうちの差別意識をまざまざと否定肯定せずいわば、抱く

両手をねじりじゃんけんにここで勝つわれの未来を覗く、未来はひかり

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