2017年6月3日土曜日

2017年04月うたの日自作品の30首

「馬鹿」
変なところにお茶が入ってむせる春どんなところか知らぬうましか

「仏」
焼失し伝らざりし仏典に救われし人もう今は無し

「絨毯」
黒と茶と黄色の冬の絨毯がしまわれて春休み薄寒(うすさむ)

「いい◯◯」
荒れ果てて野良も隠れるいい畑地だったがショベルカー現れる

「リュック」
あの橋のあたりが虹の足だった、リュックで走るきっと間に合え

「市」
春の市で人はゆっくり渦となりあなたを探すひとりとなりぬ

「壺」
それほどの価値なき壺よ売れ残り埃積んでも壺として在る

「哀」
この町の哀愁一手に引き受けてよれたコートにすかさず夕日

「耐」
人生論にしたくはないがこの桜も冬の寒さによく耐えたです

「自由詠」
人生がループものって気づくってこのいとしさが解脱のことか

「とうとう」
滔々と流れる河を見て育ちうとうとと愛を注(そそ)ぐ日を待つ

「部」
あなたから預かっている大切な部分がぼくのシーラカンスだ

「冥王星」
大切なものもほんとは見えるのに、冥王星の王子がニヤリ

「夕方」
いちご狩りツアーのバスが去ってゆき甘き香りの残るマサカー(massacre)

「後」
現代が終わるころには我々は彼らに後光を付け足すだろう

「ほくろ」
もうひとつ星をみつける、明け方のネイキッドなる白い宇宙に

「バスケ」
バスケ部がバスケの授業を手伝ってダルそうながらしっかりバッシュ

「戻」
田畑には戻らない街、芋虫を食べたことないスズメとおれの

「襟」
開(ひら)けどもひらけども汝(な)が胸襟に男の影が(オレ含め)ない

「ポスター」
うすぎぬの半裸の女体のポスターを貼りたき男を守れ現代

「ドクロ」
頭蓋骨も美しからむきみのため「ドクロ 保存」で検索をする

「麺」
人生で一番大きな買い物をしちゃったね、今日麺でいいよね

「1/100」
1/100ミリグラムにもならぬ歌の重みを語るぼくらは

「渡」
海峡をよっと渡ってきましたよ桜前線の尻尾見ながら

「そもそも」
きみを好きな遥かなそもそも論をする、individualとは何かから

「パクチー」
パクチーは罰だったのにぱくぱくときみはほんとにわたしのきみか

「島」
陸地にも海の向こうも行けぬまま多島海にてうずくまる岩(われ)

「バッタ」
生きてゆけるところがここにはありませんバッタは全身ミドリなんです

「極」
極楽鳥が首をかしげてわれを見る小声でひとつ訊ねてみれば

「糸」
夕方の多摩川は銀の糸となる河原を去ってゆくわれの背に

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