2017年8月30日水曜日

2015年07月の64首。

休日の昼下がりの湯、このまんまおわってしまってよくなくなくね?

鈴のようにグラスの氷鳴らしつつ階段で飲む透明の芋

出がらしのような劇場版の帰路記憶の先後の浸潤やまず

ネイチャーは真面目にあれば人間の弱った時にきびしくやさし

ひるがえり乗り込む電車、我の背に銃口のようにスマホが当たる

魂に尻尾があると君もいう、マックではあれだ場所を変えよう

甘えたる言葉を言いて後頭に頭を寄せてピンが当たるも

人間を倦んでしまった罰として蘇生の物語読むばかり

質問を質問のまま土にまきいつか帰らぬこの先へ行く

人生のはじめのころと今ごろで例えばメンマを受け入れしこと

わが私史にくしゃみが増えてゆくこととその大きなる声を記さず

雨に濡れサーバが運びこまれゆくドナドナのような気持ちもなくて

サバイバーズギルトかもしれぬ自己卑下をやまなく降れる雨として見る

人間の顔を忘れているときに君が見ていた、ゆっくり戻す

原因の原因を辿るかなしみは濫觴(らんしょう)よりのあかいさかづき

高架下は一灯一席この雨が止むまで待っている鳩たちの

ああカラス朝の袋のそばに立ち愛でられるなく生きようとする

不本意な死に方のほか何がある電車のカーブにみな傾(かたぶ)きぬ

岩を押せば隠し階段あるように時間を押さん腹にちから込め

地下鉄の電車近づく轟音にロマン派シンフォニー消えてゆく

王道のかたちのやがて見えるころなかばを過ぎていることも知り

画家は目を音楽家なら耳を病み人を目指せば人間を病む

戦いに没入すれば歌のある場所の遅さを厭うていたる

鉛丹で描くくちびる、筆先を舐めて君との違いをおもう

鏡の中の顔もゆがんでわが頭痛のお前の脳も苦しみいるか

小動物は寿命みじかくこんなにも甘えていても思い出になる

どうすんねんっちゅうねんっちゅう突っ込みはあれど生きつつ死ぬのはいかん

若き男の口の息嗅ぎ血気という言葉をおもう妬みもありぬ

四十過ぎて変態でない男など緑の見えぬ景色の窓は

女の子もぼくの背も過ぎひまわりは擬人化しえぬ顔をして立つ

先進を滅亡途上と言いかえたところで、水を待つ多肉類

ビニールプールの中のアヒルもふにゃふにゃでそれでも夏の歌にはならず

空間をむさぼり走る馬の列をわれの娯楽を離れて見おり

一面にミミズの死骸、焼きそばをこぼしたような俺の悲鳴は

思想的な議論のようでおそらくは違う景色の説明つづく

口語の人が緩く文語に変わりゆくわかき時にはせぬ顔をして

限りなく意味を求めていたのです東北に煙のぼるを、みつつ

物語に少女がひとりあらわれて笑みを残してかろやかに去る

泣き声も再現されている歌の歌舞伎の型もボーカロイドも

一代で財をなしたる男老(ふ)けて子に取り崩しほそぼそと生(い)く

明日の神話のような雲ありわれはしろくステップ踏まぬ骨になれるか

快楽と君とを切り離すというずるさのような落ち着きを得(う)る

浴槽でくしゃみ一喝、残響が消えてもわれの裸身は消えぬ

灼熱のくじら広場に位置情報ゲームのために立つ男はも

香水が日毎に薄くなるように善意の人の減るをなげくは

何欲であろうか満員電車にて夕刊フジをルーペで読むは

母親は息子にできた恋人をイヤなタイプと言わないでおく

別の拍に心臓が狂う夢をみて身体は死にたくないことを知る

人生にあと一度ほど残された転向と呼んでいい岐路のこと

いつまでもいたし善意の少数の被害の側の正しいほうに

本当に葡萄が酸っぱかったのでわが身の程を知らねばならぬ

一日に何度も水を浴びていてしたたるがさほど良くない男

妄想を殺そうとしてもう遠い君は自死にて果たしたりし、か

高学年男子は宇宙が好きである母の女に少し飽きれば

しあわせでなかった過去を肯定も否定もせずに歌う彼女は

つい蟻を踏むが土ゆえ死なずとも済むかもしれぬ死ぬかもしれず

乱打するピアノの音を燃料に代えて世界を飛びたい男

麦藁帽で気分大きなわれなるに女はすべて海を知りいて

楽をしてもっと甘えてずるずるとズルくあらんか、人間のきみ

ちょっと奥にきゅうりの花が咲いていて黄色いそれにも注ぐものみゆ

生き物が宇宙抱えていることを生きると呼べば闇ぞかがやく

コーヒーの「ヒー」の部分が恥ずかしくカフェと呼んでた頃も恥ずかし

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