2017年8月30日水曜日

雑誌『短歌分析』新人賞応募作「自題作語」

雑誌『短歌分析』 新人賞 応募作

  「自題作語」


いらすとやっぽい絵を描く人が現れてそれをいらすとやが描く未来

 「未来」
未来からやってきたけどこの世界の未来のことは知るよしもない

 「世界」
ハイ「世界」NGワード「ぼくたちは」それもNG、Nice Guyです

 「ワード」
ワードソフトの罫線に悩むおっさんが一匹、二匹、アンドゥ、トロワ

 「おっさん」
タレントの美少年いつか美おっさんになっているけど受け入れている

 「美少年」
髪切って気づいて欲しい美少年のことを少年と呼んでよいのか

 「髪」
この島の髪とは森か銀糸なす川上をどんぶら桃の尻

 「桃」
桃の実の甘酸っぱいに至らざる酸っぱいだけのところか今日は

 「今日」
削られた丘の向こうに復讐に無関心なる今日しずみゆく  

 「復讐」
お前を殺して俺も死ぬんだ、問題は①お前の不在②希望は無痛 

 「無痛」
飛んでゆく痛いの痛いの降ってくる痛いの痛いの傘で防ごう

 「傘」
傘柄の傘差しおればわたくしも何かの柄で、そこにも雨は

 「雨」
雨どいに球をぶつけて球場に鳩飛ぶようにぶわっと、蚊が

 「鳩」
ものすごく飢えたる鳩よハトったってドバトが象徴する平和はなぁ 

 「平和」
平和とは風船である、それっぽいことを言ったな風船主義者

 「風船」
それは赤い、恋人の襟に引っかかり、そのままアイルランドへ行くの?

 「恋人」
日中の夏に男女かしらねども重なる影だ、黒い恋人

 「黒」
もう少し派手な色でもよかったと思う眼鏡を選ぶときなど 

 「眼鏡」
メガネかけた白い子をまた好きになる! 私の路線もそうだったけど

 「路線」
大都市の動脈に血栓できて静脈にすぐ乗り換えて帰る

 「脈」
横になる人間という山脈のもう何回も遭難をした 

 「横」
横の人が高速で打つツイッター、こっちのタイムラインに「見るな」

 「高速」
高速で事故った時の走馬灯がちょっと速すぎるよ待ってくれ 

 「事故」
この事故の教訓もまた夏草の抜いても抜いてもひしめくごとし 

 「夏草」
草が切る頰も少しも痛くない今締めている首を思えば

 「首」
人を殺す一首のあとに「実話です!」みんな大人の対応で過ぐ

 「大人」
大人の階段の踊り場に柵がないなんて危ないじゃないか落ちるじゃないか

 「踊り」
法を得た喜びで舞う菩薩らの一万年の苦行も軽し

 「喜び」
君に逢う喜びと逢わぬ喜びとあるから客観的にはヤバい 

 「客」
結局はいらすとやの絵を選ぶ客だ、よく食う客だ、金もないのに

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