2017年11月24日金曜日

2015年10月の62首とパロディ短歌1首。

あの月へわれらはかつて行きしとう無人の宇宙うすうす知りつ

ルナティックなんだからこれはしょうがない詩を作ったり電話をしたり

激励はできぬ世界の解釈を少しずらして微笑むばかり

寝室に月の光ぞ、水の底のふるさとの家に触れえぬごとし

同じ場所で違う時間を歩く君と笑顔を交わす、笑顔だよな

チャタテムシを三匹爪で潰しいき、長き寿命を説く経の上(え)に

ループする母の会話にスタンド使いならざる我は敵見つけえず

ぬるぬるん、ぶどうを口に入れながらふたりはいつか飲み込む機械

半世紀も生きておらぬに酒飲んで酔うだけで語る人生ワロス

最期まで希望に胸をふくらませ明るく滅ぶ思想をおもう

生き物がおんなのように寝ておりぬわがとろけつつ起きあがるとき

ヒトなるはいのちの不思議を思いつつでもその不思議をやめたがりする

飼い主と首のロープで繋がって皮肉でなくて幸せな犬

要するに死後も評価をされてないゴッホみたいなことか、キツいな

見られないまま柔らかく死んでいく観葉の鉢、世界が包む

やや雑に犬は頭を叩かれて飼い主の知人なれば許しき

君の上の雨雲のためだいたいは濡れているのだ寒そうなのだ

excelの図形で作るジャックオーランタンの顔、仕事に戻る

子の首に薬を塗っている母のごく手慣れたる祈りのごとし

変な味のお菓子を無理に分けあって嫌がるのも罵しるのも、うれし

格言と歌は似ていて署名込みで読むものだよね 照屋沙流堂

飛行機が現れるまで何と呼ぶ、くぼみもつ紙のしみじみと飛ぶ

夢の中でまたあの猫がやってきて当然のように布団に入り来

食べたあと可能な限りすぐ横に寝転がるのに牛になれない

人生にいつでも眠いままだからすぐ夢をみる、その眠りまで

ワレワレハ宇宙人デスっていうんだよ、電車で弟に話す姉

世の中のかなしみをすべて背負いたる戦いも顔もやめても昏し

風情とはたしかにそうで壊れゆく破壊の音として枯葉ふむ

我が足に踏まれかけたる丸虫のお前は昨日と同じかまさか

バッハ聴いて眠るつもりが時折に彼がもらせる呻きに冴える

ハリボテの街並みの裏を通りぬけ待ち伏せてわれに素知らぬ猫よ

好きだった娘もかあちゃんになっていてその大きなる尻ぞ善きかな

コーヒーをコヒと略した伝票が落ちている、落ちているコヒの1

いきものの多くが生きるか死ぬか死ぬ寒さの冬がくる、冬がくる

殴られて地にうつ伏せて土を噛むこれは放線菌のにおいだ

被害者か加害者か読めぬドラマ観つつ菓子こぼすボロボロウロボロス

眠るわれを無数の蟻に齧られて泡立つように還元をせよ

伏せたまま我慢したまま眉をあげ君を見上げる幸福な犬

万年の二位も天才だと思う二番目という意味ではなくて

お別れは悲しいけれど悲しさに側坐核ふるえることも知る

冗談はそれと知るまでそうだとは分からないのだ、まだ生きている

レーティングのかかった世界で終わりたる人生はよし、オレまで頼む

昼飯は会社の外は明るくて小雨、ぱらつくチャーハンにする

モアイみたいな蓋付き便所怖かりしばあちゃんの家の跡地、コンビニ

掌(て)のなかのいのちに承認されていてわれ顔のある樹木のごとし

公園のベンチにわれと蝶といてだれもわれらをみつめてならぬ

懐かしくブーニンを聴く音楽が亡命に至るわかき時代の

枯れ尾花を正体と思いいたりしが霊より怖き笑顔となりぬ

ベッドタウンの昼下がり人も音もなく明るくてまるでわが無き世界

思うより深かったよと遠浅のはなしとちがう海を戻り来

じじいばばあの聴くものとしてうら若きこのイケメンはショパンを挙げる

表現が人生の先を越してゆきそういうときは別の路地えらぶ

明るさを置かねばならぬ生きることの本質がたぶん歓喜であれば

関係も成住壊空(じょうじゅうえくう)することを壊れはじめてからいつも知る

水底のお前はいまだ知らざらん魚とワシとのかけひきである

さわやかな10月の夜歩きつつ話したいけどあかるくひとり

父方の実家の庭になっていたサザンキョウなど飢えの備えの

差し歯のあと神経に刺す痛みありて歯ぐきを揉んでより痛み増す

ふるさとの少しくクセのある酒でレキントギター聴きながら酔う

彼はまだ読者のおらぬ小説を書いておのれを恃むだろうか

本能を発揮しながら、散歩中の飼い犬は鼻を這わせて進む

台形の土地にある家壊されてまた台形の家が建ちゆく


パロディ短歌

とつぷりと真水を抱きてしづみゆく鳥人間を近江に見をり

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