2018年1月1日月曜日

2015年12月の62首。

にんげんに蛇の道とか蝶の道、わが眼前に自然はひらけ

天才的敗戦処理のピッチャーのその才能を潰す努力は

きみの上をすべり落ちてくぼくはまだ言葉を立てているのだけれど

思い出の消去ボタンが作られて、今間違えて消した気がする

人生は有限だった、日常が無限っぽくていつも忘れる

人ひとり入れたらさみし、いちまいの風景の奥を歩いてゆかむ

ピラミッドパワー信じていた頃の四角錐から逃げしバッタよ

体調がとても良いので休みますやりたいことがなにもないほど

清志郎の上目遣いの顔をするオランウータンとやや見つめあう

この山はドクロの花が咲くらしいああこれツツジと読むのか、だよね

身に付けた金属だけが光りおり帰り道ついに言ってしまえば

ドクロ山の坂の途中でませていた君にほっぺを舐められたこと

眠るとは死んでいるんだ明日はやく生まれるために今日はやく死ぬ

木守柿にはあらざれど点々とだいだい色の灯る夕暮れ

飴なめるときくちびるを尖らせる君はまんざらでもないデート

人生は肯定された! あとはまぁ長からず楽しんでおいでよ

関係がぶち切られそこの痛みつる傷口は見えねども赤かり

そうやってすぐに自分をいじめるのパノプティコンっていうんだってさ

愛情を一方的に求めては叫ぶ一羽の鳥から習う

浴槽でくしゃみをすれば大波の被害甚大にて顔沈む

黒髪の黒い長靴の女の子頭を振って踊りはじめる

朝の鼻をかんで赤きが混じるとき検索をする加湿器がある

死に方の未確定なるひとびとの孤独だったりじゃれあうを見る

夜の空があまりに黒い色なのでもうぼくたちは死んでいたのか

人生がメロディとして、上昇も下降ももがき来て無伴奏

いさましき高温が耳を通りぬけ朝から平沢進はたのし

もうちょっとタナトスの水を浴びながら暗闇で目の光るのを待つ

芸術で飯を食ってはいけないと売らねば半泥子の名はあるか

小首傾(かし)げてみみずは思うこの時代の是非とそれから小首のことも

ひさかたのひたひたの雨、植物が嬉しそうにてわれは冷えおり

われを追い階段を登り来るサメの身の剥げてゆくあかき夢みる

人生のもろもろに「ごっこ」つけてゆきそれがイヤならそれが犯人

僕たちは比喩に覆われ剥きゆけばこんなに柔らかい生(せい)はジェル

横断歩道歩き出したるセキレイの半ばにてやはり飛びたちにけり

死ぬときにその後の世界を見せられてこれ知ってると思うべからず

福山を聴いているときイケメンの成分みたいなもの入らぬか

現実より景色を少し優先し書きとめている詩人のことよ

入力の指が「ひゃほお」と打ち込んでヤフーが出るのでひゃほおと思う

もう前に進みたくないぼくといて君が隠れて見ている明日

続くことを美徳にしてはならぬのでアプリの催促もスルーする

ぼくはぼくの天才歌人万葉のジャンルでいえば挽歌に近き

飛び降りて君はすぐ死ねただろうか森の夜の冷たい雨おもう

繊細な心いちいち傷ついてまだメリットの多ければなり

エゴとしていくさの遠いところにてくだらぬ生をたのしみたかり

オルガンが電気の音にひびくときバロックはふと前衛にあり

ときおりに君に流れる方言のすこし遅めの空間を好く

退屈とスリルのはざま、バッハとはたしかに憧れいたる青年

毎日を地味に地道に行く君に西洋長屋銀座へ誘う

火山とは火を吹ける穴、地の奥の黄色い闇は情熱に似て

グールドと嘉門達夫を勧めくるアマゾンよおまえ(すごい/ひどい)な

ぼくたちは空を見上げずうなだれて端末に明日の天気を訊けり

メゾチントで何度も強く押し込んだ闇のようなる夜かとおもう

親しきに礼あるごとく飼い鳥のつばさに触れる間もなく逃げる

しずかなる家に砧の音たてて人待つような君にあらなく

内臓が同じつくりであることが不思議、機能のうえに生きつつ

一村とアンリルソーの東西というか南北の違いをおもう

いろいろをぼくは忘れて生きている被害よりなお加害について

年末のオレンジ色の空もいい、人間にとって終わりの時期に

思わずに呼びかけている神様よ一気にどんとやってくれぬか

フォネティックコードの君のアドレスと気づいたけれど地雷であるか

ぼくの目が君を見るとき笑っちゃうほどみどりなり形容として

スライドショーに小田和正が流れいて現代の走馬灯であるか

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