2016年8月7日日曜日

2016年07月うたの日作品の31首

「運」
ホロヴィッツのはやい運指を先生と観ていた音響室でふたりで

「煙」
煙突(camino)と道(camino)のつながり調べたら違う語源だ、スパッツァカミーノ!

「椅子」
夕方の路地に一脚持ちよって見比べるには少なき過去か

「術」
詠み人知らずの複数形は知らずぃずか第二芸術論はるかのち

「ピーマン」
今日もまた火に焼かれたるくたれたるピーマンの皮の透明のところ

「指」
トーナメント表でいうならシード権の枠を当てるであろうおやゆび

「方言」
方言を失いしかば神さまも微笑みながら伝わらざりき

「疲」
ふらふらのしょぼしょぼのもうよれよれのへとへとのくたくたの「おはよう」

「落」
スタンツ(寸劇)のモブ役なのに誰よりも立派な衣装で落武者Aは

「自由詠」
瓜言葉に貝言葉してネットでは今日もカラーの図鑑をめくる

「夕立ち」
逃げてゆく思想は追うな、夕立ちのけぶる向こうは晴れ間ばかりの

「バカ」
「人間に飼われたらみんなバカになって毎日食べてしあわせに死ぬぞ!」

「手紙」
ITの終わりし未来貴重なる紙の手紙は告白に似て

「大人」
追いかけるべきなんだろう、人生の限りの見える大人にあらば

「かかと」
人体でもっとも皮が厚いのにチクチクすれば心を捕(と)らる

「黄」
何百の黄色を茹でてトウキビの生存に与(くみ)せず齧(かじ)りおり

「パスポート」
筋トレをたゆまぬおまえ胸筋が彼女へのパスポートのごとく

「絶対」
力説をするでもなくて口ぐせの「ぜったいさびしい」が出るときは行く

「閉」
社会へと閉じてゆく日本人だとかフロムかよ、てにをはの思想は

「朝」
戦中の描写はじっと箸を止めするどき無言の父の朝ドラ

「夏休み」
夏休みの終わらない国に行ったんだ遼くんのパパは笑って言った

「遅」
あと百年遅く生まれていたならばきみのお墓で手を合わせよう

「メロン」
あの夏も暑い日だった、上空で炸裂したるメロニウムボム

「散歩」
この土地に来た時は会い、川沿いを散歩するだけ手もつながずに

「ヒマワリ」
プランターにヒマワリ三本並びいてとなりと同じ方向を向く

「ごめん」
警察のいらぬごめんで済む世界をおもう、残酷かつ寛容な

「シャワー」
こころまで青くはなれぬ、水シャワー浴びいるわれのサーモグラフの

「塊」
その時にぼくは怒りか悲しみか嫉妬かわからぬ塊(かたまり)だった

「うっかり」
ちゃっかりと暇を伝えてしっかりと送信したとすっかり思い

「やばい」
コーヒーにミルク砂糖の両方の代わりに入れたヤクルト、やばい

「忘」
誰のことを決して忘れないんだっけ、シーンはいくつかあるんだけれど

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