2016年9月4日日曜日

2016年08月うたの日自作品の31首

「後」
商店街ほどよくさびれぼくたちの前にも後ろにも揺れる夏

「氷」
焼酎の氷がなくてクーラーもない部屋で今日がその日になるか

「昔の恋人」
運がいい二人だったよ、もう二度と会わぬところでしあわせになり

「怒」
皮肉とか揶揄の一首で済むやうな政治の怒りを流しゐるなり

「鼻歌」
うれしそうな顔ではないが鼻歌が聞こえて、きみと来れてよかった

「様」
さまざまな想いを載せてふく風の、つまりおもいは重くないから

「それから」
いじめられた記憶を捨てる何回も何回も何回も、それから

「八」
七日目に神は休んで八日目の月曜が鬱、(日本人かよ)

「蛾」
三千一人目に蝶と言われてもぼくはじぶんを信じられるか

「田舎」
あの冬の曇った窓を額にして田舎があった、嘘かもしれん

「自由詠」
ブラジルでゴジラが3000本打ってそのお言葉に連日猛暑

「油」
歯車になれない男、そういえば潤滑油だとアピールしてた

「訳」
話すたび空気が凍る、最新のこの翻訳機壊れてねえか?

「タオル」
ふたりしてタオルを首に巻いているお互い特に気にしないふり

「願」
願い事は三回言えぬシステムで(流星群の持ち越しもなし)

「空」
世界平和の最後のフェイズで選ばれる"力"、反転しゆく空想

「途中」
青春にして已(や)むという名言がいぶかし、それは途中での死か

「ごっこ」
今日もコンビニ弁当かよと猫が言う、ネクタイをゆるめつつにゃあと言う

「年下」
年下に弱音を吐いて内心にいよいよ醒めてゆくさびしさの

「だって」
「おれはいいと思うしたぶん友達がそうでも関係ないから、だって」

「ジャスコ」
主旋律をピアニカでカバーした曲のジャスコミュージックめく切なさ

「宝物」
宝物庫にあと千年は眠ります次の支配者の瞳(め)を想いつつ

「暇」
残業をする暇人の同僚と別れてながく生を自問いており

「たられば」
きみたちはたとえば羽根が付いててもカニと呼ぶねとタラバが告げる

「ピアス」
口裂け女がマックの肉を疑って耳たぶに視神経が垂れおり

「開」
開かれた校風なので存分に塞(ふさ)いでられると思ってたのに

「トンネル」
光量の多い世界と知るために暗くて狭い日々は要るのか

「蝉」
道の上の死骸のなかにかつて有りし命よ、いまは何のかたちか

「商店街」
振り返るこんな短いふるさとの商店街の終わりに着いて

「テーマパーク」
ぼくだけが夢も魔法も届かない背伸びをしても110センチ

「素人」
月明かりでさいわいが見えてくるなんて神さまもたぶん素人だった

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