2016年11月12日土曜日

2016年10月うたの日自作品の31首

「あくび」
むずかしいことはぼくには眠たいよぼくねこきみの順にあくびは

「おばちゃん」
幼き日に遊んでくれた「仮面ライダーのおばちゃん」のことを親も知らない

「減」
酔いたればわれも理不尽飲むほどに減りゆくボトルも生意気である

「体」
始業前のラジオ体操、美しく変奏曲として聴く火曜

「蝶」
引き裂かれつむじとなってこれ以上風でいられぬところから蝶

「叫」
あの時はそう感じたが実際は唸って吼えていたようである

「罠」
死後の世界がほんとはめっちゃ楽しくて死の悲しさはじつはドッキリ

「置」
こけし屋のシャッターおりて下の棚に置かれたのから落ち着きなくす

「振」
マナーモードの振動"音"の表記法で昨日はあんなに責めてごめんね

「自由詠」
未来における自由の量という比喩はどうだろう、浜辺に寄せる波

「裸」
服を脱ぐずっと前から普段からはだかだったと思うふたりは

「おでこ」
押しに弱いことを覚えて四つ足のおでこがぐいぐいぐいと甘える

「ぎりぎり」
ぎりぎりの俗っぽくなさ本堂の物置きの箱買いのフリスク

「太陽」
孤独とは孤独を思うからなのだ、もう恐れるな火を吐くほのお

「梨」
二百本の素振りを毎日欠かさない俺が三振なんて、有りの実

「黒糖」
一族のすこし馴れ馴れしい問いに合う甘き香の黒糖焼酎

「残」
きみとなら出来たかもしれない苦労、しなくて済んですこし残念

「足」
死にたいという語は試薬この語より離れる者が信頼に足る

「失」
きみの目をふたつの消失点として在るオレはいつか辿りつけない

「揉む」
供給と需要のグラフを描(えが)きみてもう揉めそうな曲線である

「鍵」
キッチンハイターを飲む時は鍵を開けとけよ、次は俺ではないかもだから

「前」
猫の次も猫な確率よ100万回の時代の算出はじめる前に

「礼」
こぼれたるワイン一滴、身を切らぬ血に似て礼を欠きたるごとし

「埃」
きみと眠る夜よ、埃が降り積もり埃の上に文明は復(ま)た

「クッキー」
おばあちゃんちのクッキー缶に入ってたほとんどぼくが食う蕎麦ぼうろ

「安」
安パイとみんな呼ぶけど女子部員に手を出すってよ安藤先輩

「探」
それぞれがばらばらの道を探すのが生き物なのさ、会えたらいいね

「あと」
なで肩の男は背負うのをやめてあとは素敵な夜にシャガール

「煙突」
煙突のない家なのに真っ黒なぼくはどこから落ちたのだろう

「沈」
この先が沈むなら浮く逆は逆どうやらそういう約束らしい

「わざわざ」
この駅は人が来るから不味いのをわざわざ直さない店の飯

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