何年かたって、私はふたたび短歌を作るようになり、ツイッターでもぐずぐずと短歌を作っている。その著名な歌人とは会っていない。たぶん会っても、私のことは覚えていまい。
いま、ツイッターで、プロフィールに短歌と書かれている人を主にフォローしているが、ほとんどの方と会うことはないのだろう。会うことのない方の短歌を、お互いに読むような時代だ。
今年度も、お互いの何かがすれ違えれば、さいわいのように思います。なんとなく、新年度のあいさつっぽく(笑)。
自選など。
忘却があるではないか脳というたんぱくよ君をいそいで溶かせ
液体がやがて氷になるように妄想はかたく冷気を放つ
芸術は人の時間を吸いながらひかりのようなもの帯びてゆく
回想録に誠意と弁護ふくまれていづれを読みたきかは時により
憂鬱な土星の光避(さ)けるため君はカーテンからぼくを見る
帯域(レンジ)ではずっと幸(さいわ)いなる日々の今宵も豚バラ色の人生
ぱっとしない僕の4年はおいといて聞きたくはある君の震災
逃げ切れたことのさびしさ鼻歌の鼻先とともに空気が冷やす
この壁に朝の光がぶつかっておおこの白はユトリロっぽし
ジッパーのタグあご下に揺れていて顔面だけを海にさらして
月のある世界であれば泣く夜も意味のあるべき景色とはなる
毎年の数千人の事故死者の今年の該当者に来たる春
かもしれぬそうかもしれぬ溢れいる明るき春のひかりはなみだ
抱えたる矛盾は多いほどよけれ春の午後腹ごなしに歩く
股下の裾ながきパジャマ踏みながら廊下を歩くふと奉行めく
恋心は無用の欲といいながらキックペダルを二度三度踏む
ボロノイ図で分けられてゆくぼくたちのかつて濃度で決まりし紲(きづな)
順当に役者も客も老いてゆく観劇にいて桜が不変
つくしんぼ斜面にわっと伸びていて威張るなあ若さは柔らかさ
人類の最後のUMAとして神、今日までは発見されず
明かり消してまだしばらくは存在があるらしい闇に溶けてゆく音
一年に一週間の満開の生きててよかったような桜
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