2017年4月8日土曜日

2017年03月うたの日自作品の31首

「15時」
15時にぱかっと開く口があり投げ入れたものを秘密にしたい

「春一番」
春一番とすれ違うとき耳元でよういどんっておれも聞こえた

「三」
とろろご飯でもうしあわせな男にはトロイカで追いかける愛なし

「暖」
川のおもてを水鳥ひとつ浮いていて暖かき春の空腹な壺

「館」
窓からの景色は海じゃないのかよ旅館の駐車場に空きあり

「留」
この声を消したくないが保存すれば意味が変わってしまう留守電

「役」
汚いものを見るような目で見られたる役目差別に似て男ゆく

「ぐちゃぐちゃ」
ぐちゃぐちゃの世界のままにしてるからA型の線は薄いよ、神は

「ノック」
ノックする時までは居て呼びたればサイレントレターを残してK氏

「自由詠」
糾えぬ縄のごとくに落ちてゆくきみに巻きつく固い蛇です

「忘」
忘却と言ったってほら浴槽を湯があふれればあふれるものを

「次」
最善はおっかないので次善ならまあ良しとする凪、しかし凪

「バター」
愛知だから味噌の好みはわかるけどピーナツバターもこだわりますか

「アドレス」
メールすればきみに言葉は届くけどたたずむきみのアドレスを思う

「初句切れ」
柳下鬼女、顔の部分の欠落も不可避のような狂気かなしみ

「桃」
発熱し学校を休む少(わか)き日のゼリーの桃だ今宵食べいる

「暦」
運命とたたかった日々がありましてずっと暦の下にいました

「元」
どうせまた元鞘だろう三年連続5回目の期待する身にもなれ

「レーズン」
飼い鳥には休日の味、レーズンパンのレーズンのない白きをつつき

「羊」
体重の話でなくて人生は羊頭狗肉おなかをつかむ

「声」
声がする、電気を消して寝るころにきみの本音のようなうめきの

「性格」
いい性格してるじゃねえかとほめられて喜んでたらへんな空気だ

「ハードル」
ハードルを飛び越えるときなんとなくプリマドンナの内面を見ゆ

「引っ越し」
アの字から始まる引っ越し業者ですすぐに目に付くきみはぼくには

「掃除」
水槽の掃除のためのヌマエビが空走るように泳いで楽し

「愛」
コンディショナーもリンスも使わないけれどアンコンディショナルラブとも言えぬ

「例」
例によってぼくはお酒を飲みすぎてきみは困った顔でほほえむ

「占」
ラッキーなアイテムはずばりヘルメット目の前に星がきらめけば吉

「昨」
一昨日(おととい)から夢が続いてるんだけどほっぺたつねって痛くないけど

「新」
手を繋がなかったしかし優しかったその町はまだ新しかった

「B」
俺たちはB級じゃないビクトリーのBだと言った彼を今日好き

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