2017年7月2日日曜日

2015年06月の60首。

こまごまとよりこまごまとしたことでいのちの質が決められていく

寝ることでほとんど解決させるため鳥を寝させてわれも閉じゆく

やがて死し臭くなりゆく者たちがそうなるように多くいさかう

6月の色に黄色を選びたるお前に話す時かもしれぬ

無言とはひとつの羞恥、現代に歌多くして取り囲まれて

6月の俺がまた来る無敵ぶり世界を強く揺さぶる強き

茶樹茸をちゃくちゃく噛みつ明日を生きる命の為に菌までも食い

プリオリとポステリオリの前にいうコミュニケーション苦手なる「あ」よ

赤ワイン飲みし夜更けに手洗いの鏡に青い舌のわれおり

だんだんとではなくずっと罪深きヒトにてあれば先に進もう

舞楽而留の当て字ぞたのし言霊と詐欺の過去など遠く離れて

雨の音をボロボロ聴いているのです泣いてはなくて比喩でもなくて

雲多くでも降らぬ空のした歩くネットにいない人を思いて

ほんとうに未来が好きかボーゲンで加速度殺しても加速する

ねばねばの初夏の若葉はきいろくてしめりておりぬ逆らうがごと

ピロティのピロの部分の明るさと影の斜線が切る非情さと

寝るときはたしかに泥のわたくしの起きるときまだヒトガタならず

亀虫の死骸に蟻が集まって十匹以上のありがとう見る

うつし世がいかなるものにあるとして飲み物はなべて清涼を売る

懐かしい君はおそらく元気だろうレイバンのサングラス勧めて

あばら屋の物干し竿に雑巾がゆれている景、たとえてみれば

あんなにも希望を愛していた君がそれゆえ些細な幸福の骸(むくろ)

われのなかの悪意がやがて波となり迫り来るとき生きたきわれか

脳細胞破壊されゆく僕ゆえにキロ売りで君を買い集めたし

しあわせはからだのぬくいところからわくよと言われしばらく残る

ひっそりとひとりの夜を越えてゆく、土の下にて眠る日を思い

新聞をまるめて持ちておっさんが誰を殴りに行くでなく行く

てのひらがてのひらを待っていることをそのてのひらがないことで知る

連絡不要一覧にぼくの名はありて連絡しなくていい青い空

生きることの意味など知らねカリカリと頭蓋撫でられ目を閉じる鳥

もう二度と守られなかった約束の橋の半ばで流れるをみる

地下鉄のザジにあらねど少女ひとりホームのエスカレータで遊ぶ

六法全書を破り捨ててと歌いいてロックというか法科生じゃん

狭量な生きものとして終えゆくか偉大なる夢かつて追いしも

隔てたる時間はわれを守りつつ君は魅力を増してあるらん

思い出し笑いはおろか思い出し涙もあえて語らねど、わりと

新宿駅ホームを歩く万人が仏とならん未来(みらい)の未来(ミライ)

笑うとき君の肩まで飛んでくる鳥がいるので笑わせたりき

ゴムのようなオノマトペにてイントロを歌っておりぬライクァヴァージン

テロリストもスマホの設定する時にこうべを垂れて木のように立つ

いっさいをいっさいがっさい覚悟して明るいままでここは越えよう

そんなことを心に訊いてみる馬鹿があるものか怖(お)めてかなしきそれに

要するに弾丸列車ならざれば盈欠(えいけつ)しゆく夜の穴見る

前輪を盗られたる自転車を引いて帰路、遠景に観覧車ひかる

世界一しあわせそうな顔を見ていられるならばこの生きものは

30年後夢に見るかもしれぬため少し長めに抱きしめている

家の前で少女はもたれ待っている美しからざる生のしあわせ

かすかなる猥褻の香を漂わせ庭園の外も朝になりゆく

風がずっとページをめくる教室の俺は亡霊、お前は不在

今は雑な夫婦にみえてあの時は過去世からのやりとりをしき

老いた馬と若駒と仲よさそうにそれぞれがその生のみを知り

出来心のお詫びのようにゼラニウムひと鉢置かれさびしかりけり

しじまとは一つの音ぞ、この音が聴こえぬところが宇宙のおわり

生きものに与えた痛みあますなく吾(あ)のあるうちに受けておきたし

砂漠からの帰り道にて不思議なり都に見たる月と異なる

永久影の眠りぞ覚めてドライブすカンディンスキークレーターまで

汚すべき早節もなく飄々(ひょうひょう)と矛盾ならざるものから捨てる

試験場の時間が止まっているような食堂でレスカのさくらんぼつつく

要するにお釣りが返ってきたんだと長老ゾシマのページをめくる

一握の土で出来てる僕だからヒトの気持ちは少しはわかる

0 件のコメント:

コメントを投稿