2017年7月22日土曜日

2017年06月うたの日自作品の30首。

「カタツムリ」
姿無きでんでんむしむしカタツムリお前はどこでこの世を看取る

「潤」
かびかびに湿潤したる関係をここちよいほどごっそり剥がす

「亀」
ふるさとを一度見たいが無理だろうミシシッピガメは(生まれは愛知)

「デニム」
小汚い彼の履きたるジーンズは舐めたら塩辛そうだが高価

「癖」
久しぶりに会いたる友よオノマトペを口に出す癖が消えてさびしい

「浴」
どちらとも受け止められる言い方をルノアール美人と彼は言ってた

「いい加減」
晴れているけれど心は消えそうでそこそこいい加減なる世界

「部室」
卓球部の部室にあった森高のビデオのせいで、ひとつの癖(へき)は

「SEX」
シリアルの朝食みたいなセックスと言われて以来食べたことない

「自由詠」
心とはブラックホールにもなってズドンと落ちる戻れるかしら

「父」
武勇伝でなくてもよいとお互いがわかってまたも父と子になる

「育」
主義主張信条なくとも育つ子の言う尊さは儚さと似て

「パスワード」
未来へのパスワード忘れちまったこの先ずっと未来なきいま

「蛾」
蛾か蝶かはっきりしないこの人の鱗翅(りんし)を褒める、蝶の笑顔だ

「資格」
月の資格みどりの資格火の資格再生の資格自身の資格

「紫芋」
内ももの打撲のあとが、そういえば沖縄土産のタルトがあった

「含」
おやつにはバナナは含まれますか? あとバナナは差別に含まれますか?

「乳」
乳酸菌にこだわっているきみ裏でヤクルトおじさんと呼ばれているよ

「森」
眠る森は日が昇っても眠る森、文明止むや否や覚むる森

「親指」
4本の親指をすべてくっつけてしゃがむかたまり、ムイをしている

「かたつむり」
先のこと考えたってかたつむりあじさい咲きほこってるあいだ

「アップルパイ」
アップルパイになりたい? だすけまいねってみんなが笑う少し妬んで

「うたた寝」
おおなまずのうたた寝からのひるがえるまでの議論でひと傷つけき

「歩」
意識高い新人がきてなんとなく休憩時間の歩兵気まずし

「都会」
この川を渡れば都会、何万の君がいるけど君には会えぬ

「荷」
お荷物になりそうなのを察知してグリーンカレーを挑戦したる

「長雨」
たぶん最後の長雨だから終わったら天地をくるっとひっくり返す

「丼」
丼を底から食べる二人にてその諦めも期待も同じ

「トビウオ」
すごいだろ、わが一族はディメンションをかるがる超えて風を知ってる

「帳」
缶ビールが冷えきっているとばっちり夜のとばりの向こうにきみよ

0 件のコメント:

コメントを投稿