短歌「リハビリテーション」
動くことが動かなくなるという因果、贋物のような手をじっと見る
その因を辿ればかつて断崖の疾風に揺れる夜を過ごしき
あるいは海、シニャックの描く点描の人っ子ひとりいない明るさ
少年がかなしき銃を磨きいて逆巻いている画面の裸体
失える腕ゆえに人に愛でらるるニケのつばさも持たず捨てにき
年下のピアノ教師に教わりてバイエルばかり繰り返す夏
いつの間に指が動くという希望、産毛なき塩化ビニルが震え
ユーカラを学者が写し終えた時、ユーカラの声は山へと還りなむ
救急車のサイレンと共に野を駆けて飼い犬の凱歌届く夜なり
人生の半ばのような夕方にハイテンションか、リハビリテーション
0 件のコメント:
コメントを投稿