2017年9月9日土曜日

2017年07月うたの日自作品の31首。

「飛行機」
飛行機で隣の街に行くような勢いは愛プラス性欲

「茄子」
茄子の身に染みとおりたるあじわいがわが身に沁みとおりたる壮年

「与」
余剰生産物が文化を生み出して与ひょうの言葉がつうに届かず

「泥」
貯水池の底の泥地が噛みついた長靴ぜんぜん味がしないよ

「沖縄」
先生はとてもこの地を愛したが胡椒を必ず持参してきた

「団地」
お孫さんの手紙と写真に囲まれてチヱさん一人の団地に西日

「パチンコ」
この店を決して覗いちゃいけません、恩返し出来ぬ鶴がわらわら

「鎖骨」
撤退のみじめな気持ちに泣いているきみの鎖骨が収まるのを待つ

「国境または腕時計」
国境を超えた瞬間腕時計の妖精も「ぐりゅえつぃ」と気取って

「自由詠」
今日ひと日考えたこと、多摩川の水なら何キロ分の水嵩

「国境または腕時計」
腕時計をつけるしぐさも似ているかこだわりのない父のシチズン

「斧」
各々が己が道ゆくその奥に斧でも切れぬ遠き戦き

「午前12時/午後12時」
午前12時/午後12時を同じ顔で過ごしてそうな君が心配

「つまずき」
つまずいてもんどりうったその刹那、星座のようなポーズだったよ

「賞」
人生は変わりゆくのでこんな時ものほほんとして揺れていま賞

「黄」
金色(こんじき)になりそこなったのだろうかそれともこれから光るたましい

「入道雲」
入道雲ぱかっと開(あ)いて夏の神が現れいづる前から暑い

「かき氷」
喩えてもいいけどそれは冷たくてシロップをかけると溶けて無くなる

「移」
移動しても付いてくるもの、影、自分、優しいきみを振り切ったこと

「三葉虫」
愛し合った三葉虫のふたひらの化石、彼女は奴を選んだ

「ロボット」
ロボットに心があるとしたならば電源のことは触れないでおく

「エイ」
底辺を生きるすがたは地味にしてその裏側の白き柔肉(やわにく)

「素麺」
流しそうめんの下流で腹が満たされた者から語れトリクルダウン

「扇風機」
夏休み父と息子が宇宙人、父は宇宙に行けなくていい

「避」
避難指示の矢印ふたつ、落ち着くんだ今からおれはこの主人公

「LEGO」
異能力、生き物をレゴブロックに変える男は敵か味方か

「球」
球種では負けていたけど羨ましい彼は勝手に飽きてしまって

「チャーハン」
この冷めたチャーハンまでも愛されて私はけっこう幸せである

「袋」
待ち人は来ないいけふくろうの前待ち人もいないここは何年?

「嵐」
この雨が嵐になるかならないかぼくらはずっとやっていけるか

「家」
ホームタウンと地球を呼べば住みやすい星に記憶が上書きされて

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