2017年12月3日日曜日

2015年11月の60首とパロディ短歌1首。

科学にてせばまっていく世界へのモザイク、男は見たき生き物

本棚の上に積まれているだろうカラフルなあのAKIRAは今も

若くしての才能の訃を聴きながら若からぬわれの意味までにじむ

文学青年そのまま文学中年になることもあり忌むものとして

内海のこの砂浜はゆっくりと平らなる波の洗浄を待つ

静寂の音をしじまと呼ぶのって耳がいいよね、柿まだ食べる?

才能はあろうなかろうカローラに乗りし男を選んだきみは

選びしは自分だからかこの場所をのこのこ歩く因果のように

死ぬときの準備のような歌ばかりであったといつも後で知るのだ

法則によって落ちたる葉を見つつ感傷的になるのも物理

足元に着かず降り立つすずめらの、めらめ、めめらめ、独善(どくぜん)の寂(じゃく)

コンピュータゲームが盛り上がるころに干渉したりペリュトン=レンジ

人の死ぬニュースにざらり、つまりもうその人のいない世界のはなし

水星にぼくは棲むんだ、緑色の太陽と黒い空の真下で

もしかしてこの人生はところてんの材料までの満員電車

薄暗い公園のベンチみておれば人がいてちょっと驚きすぎた

てんぷらの黄色い匂いする路地をその家の子のようによろこぶ

毛玉とか猫を呼びつつ猫も猫で父のあぐらに乗りて丸まる

現実を誤魔化すために現実を歌うのもあり、われ歌われて

萌え絵など坊主が屏風に描くだろう狂気が病気になりし時代に

「ますように」を使ってぼくも敬虔な人と思ってくれますように

気がつけば世界はしじまに満ちていて音楽よりもうるさきほどに

きつね冷やしたぬきも冷やし河童(かわらわ)は巻く、親の身は子どもで閉じる

USBに入った君の魂を水没させて狂う夢みき

現代の危機嬉々として語りたる喫茶店にも伏兵潜む

いい人と思うからこそ騙されてつまり詐欺師はいい人である

ラーメンを待つ間(ま)クリックされざりし命をおもう、そしてラーメン

排便の感触を記録する男今日のはニュルンベルクとか云うな

7の字のかたちの老夫、横になれば1を倒したかたちとなるか

われと君とひとつの画面にいることの上には瑞雲たなびいていよ

発揮せぬ才能いくつ手放してこの飼い主としあわせに生く

赤白黒の三色(みいろ)に女をこしらえてその残りたる色で男は

シンギュラリティもう川岸に、最期まで手をつなぐことを静かに誓う

作品は完成したることもあり作者の生が不要なほどの

雑居ビルに生のほとんどいたりける男死すれば雑居居士と書かれき

男数人女一人で飯に行く景色よくあるものとして見つ

かまぼこのような若さの味がしてひらくとは少し死んでいくこと

昭和期に活躍したる先生のその無茶苦茶な修行慕(した)わし

職場にてモランの孤独をあしばやに語っておりぬ、わりと重めの

月かげにましろき猫がたたずんであわれむように人を見るなり

前世紀熱線照射実験でハラキリ虫はのたうちまわる

つけっぱなしの電気の文句言うために階段をのぼる、上乗せしつつ

下北の下は南でないのかと口にせずただ突風ひとつ

ビーバーの絵に似てるのはつぶらなる目もだが青きひげの剃りあと

天才に許されている放埒のほうのあたりで時間みていき

父ちゃんが遊んでくれてしあわせが我慢できずに笑う子を見つ

ワインにて前後の不覚あやしくて恋であったということにして

ポロネーゼ食いつつショパンのポロネーズ聴くベタにして夕(ゆう)べ、祝日

人生の予想は尽きて押しつぶした薄いレモンを唐揚げと食(た)ぶ

変わりゆく画家の筆致よ、どうしてもいつまでもここにいてはならぬか

金魚鉢の中にいるゆえ水換えはぼくに可能なことにはあらず

お笑いの小ネタのように埋立地のビル群は地震でおんなじ揺れる

雨のビームがぼくのからだに降りそそぎ穴だらけなるままに帰りき

いいねボタンといいねえボタンのいずれかを押さねばならず悩む夢かよ

武器を持って戦う権利奪い終え君の燃えたる目を味わえり

ええいもう忘れてしまえ脳内から耳かきでかゆく出してしまいたき

何だっけ相当あったけーみたいなあの沖縄のドーナツみたいの

何だっけ砂糖油あげみたいなあの沖縄のドーナツみたいの

ブラックホールを絵図で説明するときのグラフの深いくぼみ見おろす

清流が心のなかにありますと云われてそれが雫となりぬ


パロディ短歌

マッチ擦るつかのま海に霧ふかし吸い殻捨つる灰皿ありや

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