2018年10月1日月曜日

2018年07月うたの日の自作品31首。

「見」
見るためには目を閉じよって話でしょ? 同じよ、だから見つめるんだから

「プール」
夏の午(ひる)のモータープール人気(ひとけ)なし蝶だけが時のながれる証(しるし)

「椰子」
椰子の実をパカッと割って、ン、と出す、はじめはバディのつもりもなくて

「ラリー」
長いことラリーに付き合っててくれたんだね、ありがとう、終わりにするよ

「キッチン」
武器的なものはキッチンに(洗ってない!)包丁だけでも洗っておくか

「無」
プレパラートを菩薩のようにつまみつつミドリムシさえ無いものが無い

「天の川」
古代人は納得していたのだろうかたとえば川底はどちら側

「競」
人類が競って宇宙に行った頃そこまで造ってなかった神は

「奈」
木屑漆(こくそ)にて塗り固めたる表情の奈良時代近きほどの阿修羅は

「自由詠」
残量が15パーセントを切ってもうすぐ生身になっちまうじゃん!

「セーラー服」
男子寮の6号室に受け継がれしセーラー服を出す時がきた

「十七歳」
悪意より嫌悪に近い殺意もつ十七歳の眼差し昏(くら)し

「使」
虫くんよ虫くんもずっとなにものか大きいものに使われる生か

「財」
人財が人材に戻るその日まで無用の系譜を守らねばならぬ

「追」
追わなかった後悔みずみずしいままのバスターミナルに雨びたびたし

「蒼色」
夕星(ゆふづつ)の見えそむる頃失へる蒼色(さうしょく)の空なりしわれらは

「熱」
151年前の夏もまた熱からむ「えゝぢやないか」ををどり

「蜃気楼」
揺れている向こうの蜃気楼だって猛暑日だろう、水はこまめに

「没」
沈没船の舵輪(だりん)ぐるぐる舵(かじ)を切るふるさとの方を向きつつ沈む

「入道雲」
入道雲の旧かなをふたり書けたならキスをしようよ、白いわくわく

「自由」
草の丘で風に吹かれて雲を見るココヲ抜ケ出ス自由ガ欲シイ

「スイカ」
口の中にシャオウムと赤く柔らかいスイカの山を食うひとくちめ

「貝」
防音も効いているので外界が何年経とうがよく眠る貝

「夕」
かわいくない男子の野次をスルーして祭りの夕べを涼しい心算(つもり)

「蝶」
蝶なのにかなり遠くに来たもんだ何やってんだろう蝶なのに

「ラクダ」
もしかしてラクダなのかもしれませんふたりのながい食事もしゃもしゃ

「鋏」
一日をじょきんと切って0時過ぎ、時の鋏(はさみ)は勤勉である

「パンダ」
天国でも中国でもないこの家でころころ鶯ボールがパンダ

「乱」
乱世をきみと遊んで現在はまじめな君を互いに知らない

「手首」
親指と中指でつくる輪っかにはちょうど収まる手首の記憶

「メロン」
甘い水をたくわえて確かにメロン、幸せは待つことでもよくて

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