2019年6月23日日曜日

2017年04月の114首と、その他もろもろ。

この土偶の性別であるが胸か尻か腹が大きくあるなら女

永遠の命がなんと八千円激安過ぎてちょっと心配

塩胡椒かけつつあどけない話、東京には節操が無いという

前髪がちょろんの赤子、人類のカイロス(機会)となるか我の亡き世に

ふた回り上の奴らに馬鹿にされ彼女は仕事の出来ない女

その「脳」は人類の道を示したり人類はそれを紐解いて生く

続ければ優れた歌人になるだろうけれども恋を選ぶのだろう

またひとつ場所奪われて生き物は死ぬか逃げるか隠れるかする

現地人も神を信じるのだろうか蝋燭の火に揺れるラス・カサス

文字なんか残すものかとアンデスの文明は謎がニヤリとひかる

戦いの前線にいて役に立つ気持ちはなんとうれしくかなし

どの道も棲み分け論にいたる朝、公園の鳩がおこぼれを待つ

種の掟にて引き裂かれたる動物のオーナメントで次に進めず

さかづきに桜と雪が落ちてきて、あれからやはり余生であった

手を汚したくないだけの反戦と好戦の二人気まずくなりぬ

ダッカにはダッカの秩序、ナインボールの一打目のごときリキシャのわれも

茂吉翁の丸い背中の半纏(はんてん)に問う短歌また国家に資すや

カレー食べてる時に謝らないでくれ謝れば見立てられゆくカレー

排泄と喜怒哀楽がある限り人間平和の希望は捨てぬ

ティファールの湯の沸く音に包まれて週末は40度あったよ

救いなどない、教室の午後もまた僕無しで進むのを見る時間

明るいが感情の起伏大きくてアン・シャーリーがこだわる綴(つづ)り

23時も新宿駅はうじゃうじゃでふたつめのじゃのあたりにわたし

夢だった、ツイッターなんてまだ無くてすべてが妄想だったのだという

むすぶのかちぎるのかどちらでもよくてこの糸の先にまた、あなたか

春だから男もスカートどうだろう、剃る剃らないに迷うなオレよ

内心の自由それから外心の不自由はとても笑顔がやさし

職場では「はい喜んで」「喜んで!」仕事終わったもう喜ばぬ

可能性を残すのは気持ちいいけれど天才はただ量産をする

マシュマロというより白子あの日からもう膨らまぬメンタルの絵は

スワンボート人の少ないそれゆえに桜の少ない方へ切る舵

スワンボートで前線へ行け、もっと漕げ、形勢不利の革命のため

思い出にご笑納下さいってか上着を脱げばひとつ花びら

人間の浅ければかくも浅からんレイヤを超えんとする決意さて

野良猫のような心を抱(いだ)こうとする野良猫のように逃げらる

落研の合宿のあの殺伐と過酷と悲壮が生む面白さ

桜より華やいで君ら若者が外側にあるもの愛でやすき

タイムラインズの向こうで君がいるけれど君もこちらを気にするうわさ

シャットアウト機能で避けたほんとうは強く見つめた方が正解

人間は目に見えぬものに死にもする両の手をびしょびしょに濡らしつ

満員電車をエンジョイしてる白人の「ゴメンナサーイ」がほんといい顔

等身よりすこし大きい化け物と戦うときの人は舞うなり

下の句が午後にはけっこう降っていてビニール傘でしのぐ定型

無条件に尊いために必要な思想とその他、その他はあるか

天国の暮らしもここと変わらんよファミマもあるし金持ちもいる

人道も正義も措いて人間がこの地上にて描く地獄絵図

まだ食べてないなら少し遅いけど行こうよぼくもおなかすいたい

沈黙の多い電話が切れたんだ電波を見たら圏外のわれ

AIに君のデータを流し込み人権が付与される日を待つ

テロリストもその被害者も運ばれてテロリストを先に助けてよいか

終わりまで楽しむことが知性だと生を叱られ泣いている夢

演歌だと君は心地もよさそうに「あなたについて行くわ」と唄う

マストドンに君も行くのかミクシィのような廃墟でボットとわれは

強烈な破壊のあとに、ゆっくりとあなたを見つめる時間が出来た

争闘性を引けと鑑三記せるも流されざれば日蓮成るや

ほんとうにこの詰め将棋の詰まるのかわからぬままにそれではあばよ

新宿のビルの小さい一室に空想の象が定員を超ゆ

人間がもっとけものになるまでを象は待ちおり鼻長くして

クレヨンに貼り付いた紙の内側でコクっと折れるような失恋

きみに注ぐ愛もわずかに回しおり粉コーヒーに湯を注ぐごと

表現に上限おけばこの一首でほんとによいか迷ういちにち

わたくしの知らない世界を調べよう、知らない単語で検索するだけ

われのその後同じうするべき山阿などあるであろうか五柳先生

一万首めがその人の初段とかそういう時代の歌人の歌会

産屋での座位分娩でひりだされおんならに見下ろされて命は

舌鋒の甘い男でいいじゃないか意見を求められるなき世に

宇宙から現れたのに端末から「地球外から失礼します」って

縄文の遺伝子ふいに発芽して一万年をやり直そうか

このカバに「カバスケ」と名を付けている動物園よ次はどうする 「バスケ」

夜のライトに我が目がぎらり、いつまでも平和にならぬ世界睨(ね)めつけ

人生が眠いと君が言っているつらいとき僕もそう言い換えた

君がいるのを待っていたような夕方のやっぱりカレーの匂いする路地
#中本速生誕祭

青空が爽やかだから寝転がりたんぽぽ指ではじく失踪

食べ物に霊位を与え食べる世にあらぬ、すなわちすべて食べ物

ああどうも八重桜さん昨年は醜い修羅場を見せちゃいました

ポラロイドにはピースが似合うと言ったのにピースしないのかよ、これ欲しい

ルビはおまえルビなんだから並走はしてもいいけどこっちに来んな

縦書きと横書きの本が攻めてきて真ん中あたりにピラフ(猫)の居場所

原水協、核禁会議、原水禁、10年で分裂した願い

人間は縦になれなくなったならもう覚悟しておこうじゃないか

天才は無差別に殺人しつつオレだって頑張ってると言う

音楽を今でも耳に転送しでもこのメディアはそう長くない

渡鬼にキムタクが出る夢だけどキムタク全然ゆずらなかった

感動的な紋切り型でぼくたちはけっこう寒い海をみている

いい女が通りゆくまで道路工事のおっさんら目で見送る時間

お湯割の梅干しは箸の一本でつつき破れて政治の喩え

うふふあはは海辺でゾンビに追われたるこの絵は何か間違っている

馬の目のうるうるうると透明の涙の膜ぞ今から走る

サイモンとガーファンクルのサイモンは俺がやるからガーは任せた

社会学がかたっぱしから名付けゆく現象に名前ついてないのか?

方向音痴なんかじゃなくて大山が西にない東京がおかしい

石なげて人を追いやる思い出をこの村は忘れ春の夜昏し

狭いせまい空間で子と暮らしてるきみを連れ出す花一匁

大きくも小さくもなるが男とはやっぱりどこか丸大ハムだ

シャウティーなベイビーがいる車両にて生のかなしみ行き渡りゆく

道端に名札が一つ落ちていて伊藤をやめた彼はいずこへ

ジュテームモアノンプリュを二人で聴いている興奮しても笑っても負け

一行のよくわからないテキストをいつも書いてる人だ、あれなに?

僕の中に永遠をひとつ飼っていて僕が逝くとき笑ってみてる

異国語でわが感情を抱くことの月があり犬がいてわれいずこ

強い風をつよい気持ちで進みゆく目はモザイクを見るときにして

生クリームとブロッコリーはやめたから! 彼女は普通に目覚めたという

シトロニーナにするべきだよと思いつつレモンジーナで割るトリス呑む

生きる気力のないのに生きるロジックはよ、国が生かしておくロジックはよ

引っ越しの食器のダンボールが鳴って満員電車のようにかちゃかちゃ

ルマンドを連れて行こうか関西へルマンドが逢いたがっているのだ

春菊と生姜の香り混ぜながらブリ大根はじゅるじゅる美味し

公園のサクラのとなりで咲いている桜でない木の桜でない花

宝くじの使い道など悩むように俺ならどんながんがいいかな

なんとでも短歌にするよ悲しみも裏返したりやや逸らしたり

チャイナ風のメロディはわりと春の曲、日本の歌はいつの季節か

平和とはその象徴の鳩たちに常にパン屑落ちてる世界

キジバトが窓の外では鳴いている彼らには人間をも自然


#爪楊枝短歌
びっしりと容器に詰めて爪楊枝、出撃の覚悟あるが出にくい
爪楊枝みたいに箸がびっしりと詰められエコノミークラス吉野家
びっしりと箸、びっしりと爪楊枝、お前らも俺を拒むつもりか
あの中に父さんがいる、爪楊枝が箸を見るけどプラスチックだ


#自由律
指折りかぞえて自由律

自由律であらねばならぬ不自由

自己表出してるから自由律

花の盛りをほったらかして仕事

歌を作らなくていい花見

タイムラインがまずい海嘯


#パロディ短歌
日本脱出オーケー! 全肯定ペンギンも全肯定ペンギン飼育係も

ひむがしの野にかぎろいの立つはずで返りみたけど、どっちがひがし?

吸ひさしの煙草で北を指すときの北違ければどこよ望郷

馬鈴薯が小さいくせに店先でえっへんおっほん値上がりしてる

長ぐつにカブで大根運びきたる老後、ないか、今は新橋


#パロディ自由律
すごい咳をしても一人

咳をすると? 二人!

優勝しても一人


#パロディ詩句
自分の短歌観くらい
自分でつくれ
和歌者よ


#川柳
来世には君に会えないパピプペポ

パピプペポそこまで僕は言ってない

パピプペポ今日は納豆三個目だ

君のことパピプ好きペポ 救急車

パピ今日の君はステキだ是非プペポ

すぐきみはエッチにはしるパピプペポ

柿ピーの
禁止用語の
パピプペポ

パピプペポ? 
パピプペポ、いや、
パピプペポぅ

失礼です。
自粛ムード。の
パピプペポ


#無季を強引に季語化する
まだ少しはやいひんやり春便座

蛍光の母子ともに春クロックス

からんだら友達面(づら)の春リプライ

天気予報の通りに寒し春我慢

記号論で季語がめちゃくちゃ夏の春

なんとなくいい人みたい春変態

キジバトの昼にもなって春ホッホー

味噌汁が落ち着いてゆき春宇宙

あずきバー春の夜には硬いまま


#尻子玉俳句
春痴漢ダメここで出すべき尻子玉

透明な夏の霊そして尻子玉

299回腕立て――尻子玉。

第二ボタンください、それと尻子玉

ああ、だめだ、もう怒られる尻子玉

わたしきみの尻子玉まで愛してる

シリコダマ、ああ間違えたシリカゲル

とてたての春の最初の尻子玉

ゆうくんの方がきれいな尻子玉

抱きしめてもきみはあかるい尻子玉

おじいちゃんと二度目の別れ尻子玉

火にかけると一応あばれる尻子玉

尻子玉飛び交ってやや美しき

もしかして「「入れ替わってるー!!」」尻子玉



#言うべきことはほかにあるのに
僕の方があなたのことを好きだった言うべきことはほかにあるのに

さくらばな集めて掬(すく)って食べている言うべきことはほかにあるのに

二階の子に気兼ねしながらキュウリ食う言うべきことはほかにあるのに

育毛剤もドーピングにひっかか! る⋯⋯、って⋯⋯。(言うべきことはほかにあるのに

たぶんもう会えそうにないキスのあと言うべきことはほかにあるのに


#季重ね
ひと眠りふた眠りして春春眠(はるしゅんみん)

春のポピーポピポピ少し浮いている


#今日もすてきな一日でした
ぼくも死後もう三年は経ったかな今日もすてきな一日でした

ゴミ、たから、ゴミ、ゴミ、たから、たから、たから、今日もすてきな一日でした

プリンプールの底でカラメル啜る夢今日もすてきな一日でした

フリスクとコーヒーやはり合わぬなあ今日もすてきな一日でした

生贄の美女に今年も選ばれず今日もすてきな一日でした

マルクス=エンゲルス全集が安くない今日もすてきな一日でした

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