2016年5月21日土曜日

2016年04月うたの日雑感。

集団の感受性ということをときどき考えたりする。感受性というより一般的な言い方だと、カラーという方がいいかもしれない。
短歌という、多いといえば少ないし、少ないといえばけっこう多いというやっかいな趣味をもっているやっかいな人たちは、短歌について語り合いたく、意見を言いたく、意見を言ってもらいたく、教わりたく、教えたいので(もちろんもっと他の理由も人は持つのであるが)、集まりを企画する。
集団組織の変遷については、いっぱんに、ゲマインシャフト(地縁・血縁集団)からゲゼルシャフト(人工的利害集団)へと移行するみたいなことを言われるけれども、ゲゼル→ゲマイン化できるかどうかが、集団の心地よさみたいなものと関連するんじゃないか、とか、ゲマインの居心地のよさが窮屈になる瞬間には、何が起こるのか、みたいなことも興味深いが、これはちょっと脱線です。

現在の集団の分類は、短歌はざっと結社型、同人型、クラウド型、という分類が出来そうである。
はっきり分かれるわけではなく、グラデーションであるのだが、人を中心に集まる結社型から、同好で集まる同人型、ツイッターやウェブ歌会のような、公開された場所を誰でも行き来できたり、それぞれの人が個別に発信して、雲のような不定形の集まりにみえるクラウド型という感じ。
時間軸でいうと、結社型は通史的、クラウド型は共時的な特徴を持っているかもしれない。
最初の話に戻すと、それぞれの集団の感受性は、何が決めるのであろうか。
何がそれを引っ張って、何にそれは引っ張られるのか。
短歌の場合は、当然、作品があって、選があって、評があって、この3つが質を決めているのは確かなことだ。
感受性はどうだろうか。
ん、質と感受性って違うのか。
カラーは人で決まるようなところはあるね。
居心地と感受性の問題って、批評と好みの問題にちょっと似てるね。
(うたの日に関係ないし、結論もないし)

自選&自注
「市」
飢餓よりも肥満に似るか三万を割ってゆく市の取捨選択は

 市の人口条件は、5万人または条件により3万人。しかしその人数を切ったからといって町に分解されることはあまりない。そういう場所は結構あって、その市はふつう餓えた状態のように見えがちだが、案外そうではないのではないか。市を運営する側の目線は、足りないものではなく、余剰のものに目がいくのではないか、というような意味。

「ライオン」
百獣の王に敬意を表しつつ霊長類が子に見せており

 百獣の王だよーってパパが子供にライオンを見せることの、この霊長類の全能感。

「桜」
ゾンビには美しさなど分からぬが降りそそぐなかを見上げて立てり

  降り注ぐ桜を眺めているゾンビが、美しさのために見上げているようにみえる。死という終わりがないゾンビには、「はかない」という美はたぶん見えないであろう。

「器」
透明の器から枡へこぼれゆく透明人間になる飲み物は

 透明人間になる液体が入っている器も透明なのであろう。透明の器をこぼれて升、ということは、その液体はまさかジャパニーズサケではないか。

「朝焼け」
あたたかい夜が明けたら、いつまでもここにいれないことの朝焼け

 朝焼けにはなにか移動をうながすものがあるのかもしれない。でもたしか、朝焼けの日は雨が多いんだっけ。

「サンダル」
ボツボツの穴の空きたるサンダルの色違いなる母子あかるし

 この歌はツイッターで自注しました。
「作者が自分の歌を都合のいいように解釈しますと、これの裏の題詠テーマは「母子家庭の貧困」なんですね。

まずクロックス"系"のサンダルを母と子で履いていることで若い親を表し、シングルマザーの可能性を示すために親子でなく「母子」とした。クロックスは意外と高いので、類似品の可能性も含めてブランド名は出さず形態を述べた。

で、重要な部分として、裏テーマの母子家庭の貧困は、社会にとって深刻な問題だが当事者は必ずしも深刻ぶってなく、明るく日々を生きている、そういうこちらの眼差しの裏切りを歌いたかった。

それを、あのゴムサンダルの蛍光色の明るさと紛らわすために語順とてにをはを曖昧にした。

という社会詠としてみると、ボツボツの穴が空いているのはサンダルなのか、とまでは深読みできないけどね。

あるいは、その子供も「色違い」に過ぎない、という連鎖も折り込まれている、と読むのも深読みですよ。」

「右」
この廊下を右に曲がればきみに遭う確率はやや上がるが遭わず

 確率というのは、どんなに高くても、結果をもたない数字なんですね。

「仮」
不幸ということではなくて最初から仮留めのようにいたんだきみは

 それが仮留めかどうかは、中にいる人間には観測できないのだが、そうやって納得しようとする感情みたいなものを表示できただろうか。

「客」
おぉ君はそこにいたのか、客席のお前はあの日の若さのままで

  死者が集まる劇場で観られるものは、現世だったりしないだろうか。

「パフェ」
食べ終えてパフェの器が咲いている天使のラッパは毒をもつとか

 天使のラッパは、黙示録的でもあるけれど、天使のトランペットとかいう植物なかったっけ。

「掃除」
一斉に蜂起する明日、バッテリーが切れて動けぬ掃除ロボット

 人類に反抗するために、一斉蜂起するのだから、人間よ、どうか電源を入れておいて欲しい、という、掃除ロボットの悲哀。おまえどうせ電源入ってても、掃除して人間の役に立っちゃうんだけどな。

「球」
地球との接点に黒と肌色の肉球で立つきみのやさしさ

 つねに肉球で触れられている、地球って、いいなあ。

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