2016年5月21日土曜日

2016年04月うたの日作品の30首

「新」
思想にも新機軸など打ち出そう鳥や猫にも会釈するとか

「市」
飢餓よりも肥満に似るか三万を割ってゆく市の取捨選択は

「ライオン」
百獣の王に敬意を表しつつ霊長類が子に見せており

「少女マンガ」
少女マンガのような美形をレアガチャと呼べば悲しい顔をしていた

「桜」
ゾンビには美しさなど分からぬが降りそそぐなかを見上げて立てり

「十字架」
宇宙色が降りてもう夜、磔刑にしやすき形の生き物は寝ず

「負」
風邪薬を日本酒で飲むぼくを責めぼくに勝ち目があるわけがない

「器」
透明の器から枡へこぼれゆく透明人間になる飲み物は

「朝焼け」
あたたかい夜が明けたら、いつまでもここにいれないことの朝焼け

「自由詠」
春風の午後遊具なき公園に桜と老女、それだけの今日

「サンダル」
ボツボツの穴の空きたるサンダルの色違いなる母子あかるし

「距離」
8歳の年の差なんて距離にして、シリウスのように白く微笑む

「リボン」
春風がつよすぎたらし、空に舞うリボンのことをきみは忘れて

「Eテレの番組」
Eテレの番組いつか録画されず時間改変されいるいつか

「右」
この廊下を右に曲がればきみに遭う確率はやや上がるが遭わず

「紫」
紫がいいよねパーカーの色じゃなく輪郭線のことなんだけど

「ボタン」
袖のボタンを失くしたことに気がついて気がついて失くなったのでなく

「爆」
接頭語にいちいち付けてほんとうはくすぶっている若さのゆえに

「鏡」
われに似ぬものを求めて恋うためにミラーニューロンがきみをおどろく

「@」
アカウントのアットマークに4桁の数字があってきみはふたご座

「仮」
不幸ということではなくて最初から仮留めのようにいたんだきみは

「客」
おぉ君はそこにいたのか、客席のお前はあの日の若さのままで

「パンダ」
政治にも進化論にも興味なく春の若葉をいつまでも食う

「パフェ」
食べ終えてパフェの器が咲いている天使のラッパは毒をもつとか

「アジア」
人類のどの性格を受け持ってアジアの肌の色のぼくらは

「掃除」
一斉に蜂起する明日、バッテリーが切れて動けぬ掃除ロボット

「メイク」
メイキング映像もオールCGでちょっと待てこれはどこからメタだ

「ことわざ」
猿も木から落ちるかどうか見てないが人間も悪に勝つのは見たり

「割」
嫌味っぽい言い方をして真面目さを中和する癖、割と嫌味よ

「球」
地球との接点に黒と肌色の肉球で立つきみのやさしさ

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