2017年2月11日土曜日

2017年01月うたの日自作品の31首

「平成二十九年の抱負」
とりあえず明日遅刻をせぬように話の途中であくびせぬよう

「明」
雑煮には餅明るくてめでたさの比喩としてふさわしきもちもち

「参」
参加することに異議とか田作りの魚を舌の酒に泳がせ

「繭」
思い出を繭に包んで栄養を与えずおれば軽々として

「乾」
仕事始めのああ初日から目も舌も乾いて足の蒸れしおっさん

「乗」
乗り遅れなかったきみは東雲(しののめ)の無人の地平で平気でいてよ

「七草」
レインボーフラッグのひとつ足りなくてそれもありだな粥をすすりて

「パリ」
ここはかつて花の都と呼ばれてね、ああこれは撞着語じゃなくって

「晴れ着」
明け方に大学新聞刷(す)りあげてやっと寝るきみはいまごろ晴れ着

「自由詠」
廃品を覆う綿帽子のような雪、自然にはまだ還れない

「かばん」
マグリットのりんごを赤くするためにかばんに日光詰めてミュゼへと

「毛糸」
運命の赤い毛糸が丈夫だし帯電しやすい、たぶん混紡

「方」
虹色の雪が降る日は窓あけて方舟=湯舟に浸かりて待たむ

「昼」
昼休みの図書室はとても神聖で君なんか来なければよかった

「配」
夢は無限ということにして配分を放(ほう)って眠る帰りの電車

「赤ちゃん」
眠りいる赤ちゃんの中に含まれてふにゃふにゃでぷくぷくだ、未来が

「角度」
劣化したシリコン面をずり落ちてスマホもきみの電話がうれし

「姉妹」
お姉ちゃんになんで言うかな、なんでって泊めただけだし何もなかったし

「都合」
ご都合はいかがでしょうか思い出の視界にだいたいこれがいるのは

「チャイム」
ペナペナとドアのチャイムも切れていてテツヤの家は裏から呼べり

「名」
4階の岸さん亡くなったってマジ? 下の名前は知らないけれど

「相撲」
国技館の温度湿度は決められて衝突事象は日々おこなわる

「萌」
あたたかくなれば善悪抜きにして萌えいづるなりもう萌え萌えに

「無」
無くなったと誤字を見つけてああそうだもう内側のきみだけなんだ

「沼」
裏山の底無し沼の対岸に河童がしかも白い河童が

「香」
お風呂上がりのような香りでおっさんがいるので春よもうはやく来い

「職員室」
職員室から吉田が戻ってくるまでを待っていたのにもう家にいた

「いらっしゃい」
いらっしゃいいつもと変わらないきみにルミノール反応の話をせねば

「ツナマヨ」
ツナマヨを食べさせてくれぬツナマヨは抗議の声を出す猫である

「金魚」
人に言う特技じゃないが金魚なら何考えてるかだいたい分かる

「段」
死をおもう気分をかかえ階段で足踏みはずす、死ぬかと思った

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