2018年2月2日金曜日

2016年1月の62首と、「うたの人」提出1首。

君もまた意外に死者に冷たくてまあいちばんは死者だけれども

人なくば時間がとまりたがりたる年の始めの正午なる町

素朴派のなにがナイーヴ、写実への無頓着さに胡座をかきつ

年越しに第九やボレロを欲したる日本をおもう、酔う新年に

雨に濡れ濃い色の鳩、人間の謳歌する世に小うまく生きて

消えたデータはもうさようならぼくもまた次のアプデの時にはおらず

難しい思索がつづくたぶんそれは接点がまた減ってきたため

信仰の必要のないところまでゲノムを切って生きたき君か

世界よりすこし下劣になるだけでこんなにも変わる地図かと思う

ふるさとは子が背をむけて去ってゆきあとは時々見にくるところ

洞穴で雨音きいて眠られぬ人類、過去にも未来にも似て

狩野派の松が雲間をうねる頃歌われし歌の思い浮かばず

うわ水だ逃げろとごとく飛び出して歩道で焦げる未来のみみず

何を観たかあえて訊かぬが今頃にじぇじぇじぇとかいうお前をたのし

君が深い歌を詠むとき歌もまた深淵の君を詠むのだ、にいちぇ

スターウォーズの黒人おらぬ宇宙より守銭奴呼ばわりされしハン・ソロ

知的だが勉強はせぬ君といてもったいないけど近いからよし

野良猫に目をぱちぱちと歯も隠し敵ではないと示す"人間"

たまごボーロの代わりのようになめているビオフェルミンのほんのりあまし

止まらない思考の馬車はやはり死を実感できぬ止まらないゆえ

ここはおれが食い止めるから早く行け、ぐはぁ、とついに降り出す雨は

どうしても少しは美化をする生のどうしても詩語を避けたる歌か

君の血とぼくの血混ぜてほんとうの拒絶をながめたかりしが、乾く

石はその一定の重さ超えたればイシもつだろう、そのような石

死後のための表のひとつか、入れっぱなしの電池の交換期限一覧

69のロック、駄洒落は抜きにして寂寞とした場所にもみえて

清潔をのぞんだだけの生活のなぜ子の顔のかぶれて赤し

"きみ"も"子"もゆらゆら虚構なる中で"われ"との関係だけは在りそう

その役が僕ではないという未来、時間よ止まれ血流でもいい

くにゅくにゅとインクが水に溶けてゆきかく薄まれりネットのことば

君のそのミード(蜂蜜酒)のようなくびすじの匂いを嗅げる男を思う

四十のセリフやないかもう一度愛や真心で立ち向かえとか

教訓も反省もオチもなくぼくは寝坊したまま連絡もせず

ひとまずは安心したがさみしいなもうすぐ弓を張る月が見え

階段に座ってワイン飲みながら明日につながることを思わず

車一台通らぬ道を全力で横切っていく野良猫いとし

人間が怖いのはもう知っていてカラスは怯えながらついばむ

新雪を傘で刺したら君は決してひとりじゃないよたくさんの穴

死んでから注目されるあれだから生きてるときはなるたけのごみ

一曲の音楽として人生があるとしてここをBメロとして

ぶくぶくもがらがらもうがいだなんてひどいじゃないですかと詰め寄らる

楽しかったことを辿っておかしいぞ、君との苦しい日々ばかりなり

シュレディンガーの猫の説明するときに君からの猫はいないけれども

悲観的な選手もきっといるだろう楽天イーグルスの一軍も

壮大な景色で君も存在が現象になるさびしさ知るか

安楽とアンラックとをルービックキューブのように練りつつおもう

片耳を外して垂れるイヤホンの世界へ向けて微量の叫び

組み立てては充分に鳴らすまでいかずまた仕舞いたる高価な楽器

桃色の顔をして泣くおさなごの角を曲がってまだ聞こえいる

ああきみの幸せが楽しみになる場所に立ちおり、われ満ち欠けて

豊かゆえ悩みがややこしくなりぬ貧しさはつよき簡潔なるが

楽園行きの満員電車にぐいぐいと押し込んでオレをなんとか乗せろ

パヴァーヌのために亡くなる王女かも歴史の彼女いたましければ

いくつ引いて倍にするとかしなくてもきみは楽勝できる、してるよ

引き止めているのはお金、そうやって悲しみを割り勘にする君

かゆき体も掻けぬけものとして生きていらいらといる食われたりする

タイムラインに裸足で入るものだから足首にへんなもの引っかかる

アカシアの雨が何かは知らないがこのまま僕もそうしまいたい

天動説の君にぼくらは遠くから目をパチパチとまたたくばかり

自力では自分を救えないことのモランをおもう、ほんとにおもう

好奇心がなければ曲がるはずだったこの坂を息をきらしつつゆく

くらやみの胎児のごとくそれでいて前向きなことが好きだ脳とは


 うたの人『楽』提出作品

かに道楽の看板のかにが逃げたらし、無事海にたどり着けただろうか

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