2018年12月23日日曜日

2017年01月の101首。

夜の列車は体内の光り漏らしつつ血走る馬よりも速く冷たし

14日24日をきみもまた「よっか」と読むか、だけど好きだよ

新しき年の始めに思うどちすべてがずっと新しいまま

広島弁が売り切れていると空目して思う、言語の売却費など

ジャズピアニストその祖父が造りし建物が少年刑務所として在りて

人生は遠路にあればぺこぺことよろしくお願いしながら進め

ミサイルに愛国と名付けるときの誇らしさには罪ひとつない

自分自身を愛せることが出来るまで出られぬ檻のわれに、きみの手

馬鹿に付ける薬はあるか本当にあるかも知れぬと思う、馬鹿だから

豊かさは苦しいなあと見上げれば楽だがひもじいカラスかあかあ

親バカとバカ親はわりと似てはいてだが子にすればかなしく親で

くらやみを怖がる鳥にわれはもや神のごとくにスイッチを入れ

らしさなど気にせぬ現代人はせず接待テレビで明るきヤング

感情が行動になる途中にて歌生れば歌で済むことのあり

三本腕の聖カジミエルの教会の無神論博物館なりし頃

外国人犯罪のニュース流れいて観葉植物身じろぎもせず

子ども時代すくなくあればあのように子どものようにわめいて泣くか

咳をしてそのまま緑の吐瀉をしたヒロキの思い出それが思い出

プログラムアルゴリズムにおぼろげに神々しさが構築される

ガラパゴス詩人は残り少なくてニュアンスが伝えられない未来

民主主義は嫉妬をうまく殺せない孤高の者を孤立させては

休日になんの救済、大江戸線は江戸に着くほど地下を潜って

持ち寄った手の中で泣くグリーフをお互いみせてまたしまうなり

夢というこの目の前の水すらも飲めぬまぼろしにてきみと居る

ディレッタントゆえの誠実さは措いてレンタルショップの暖簾くぐらず

何になるか分からないから寝られないブループリントのきみのブルー

この国は誰かがモザイクをかけて誰かが陰謀論を憎みつ

新成人が五十万をきる未来、ゾンビを撃つゲームは禁止され

#よい一年でありますように
新しい職場は足がスースーしよい一年でありますように

あといくつうたうだろうかありふれて例えば白線の内側のうた

鉄作品アーティストは肩身がせまく戦争で鉄が不足するころ

人間が、いなコンピュータが人間を持つ時代、検索中のきみよ

原因の見出せぬなやみあることを絵画を描くきみに見ており

今日の麩とわかめの味噌汁いつもより海が近いと思うが言わず

生きることが何の象徴たりうるか平日くたくた休日ぐだぐだ

路地裏のネコ対カラスどちらともがんばれ負けたら傷が深まる

丁寧にスマホを拭いてなんというわれのあぶらに包まれて生

ばっくりとヘラで赤福食べるとき子供心に生(あ)るる背徳

歌人の夫、俳人の妻がオリンピックパラリンピックを別々に観る

ツイキャスを覗くときキャス主もまたきみの入室を覗くしくみなの?

殉教を弱さと強さに仕分けするヒヨコでいえばいずれオスだが

雑木林野原公園ゴミ捨て場ソーラーパネル、で雑木林

ロシア人は驚くだろうソーセージのDHAが遺伝子に見え

飴玉を昼食として少し寝るわが人生はこれでよし子さん

けっきょくは一つになれないぼくたちを暗示してピコ太郎のけぞる

誰が短歌がキューブラーロスが言うようなプロセスでぼくが作ると言うか

不気味の谷フェチの男が探しいる初期型アンドロイド似のきみ

ウスゲって読んでいいのかハクモウと気をつかいつつ読んでいたけど

江戸時代の混浴に似て人を押して電車に入って無罪の時代

ディスプレイの幽人と夜の花ひらく一杯一杯そして一杯

終わらせる日を思いいて街に流る、来来来世に誰をみかける

人工知能「聖(ひじり)」が語る神託(オラクル)の旧バージョンを彼は選びき

金銀はひかりのなまえ、あかがねの男はいつか一つを選ぶ

心臓が次で止まるとなるときにあの後悔はなくならずあれ

当事者にあらざれば災害詠のどううたっても歌のよしあし

子を生むとよろこんでバカになるものを摂理と思う、醤油のかおり

厚い紙うすい紙からレコードを取り出すまえに手を洗いたり

人工知能「定家」がつくる連作の受賞理由は「時代の感性」

サムテイラーのサキソフォーンもむせび泣き政男のマンドリンにもむせぶ

不在なる世界のために残しておくものがあといくつ⋯⋯笑顔くらいか

一色になる直前のマーブルの自分でなくなるおびえうつくし

アイルランドに似ている海に近き町きみの野辺送りに間に合いぬ

残り時間となってはじめて未来とは輝く不在を指していたのか

常に一手足りないままの勝負にて二手欲しくなる、頭を下げる

ひょっとして見逃しツイートあるかもとエゴサして、並ぶ自分とボット

巡礼路ひとが歩いて道になり道は祈りの流れたる川

吉祥寺を歩いた変な思い出だフォークダンスのこゆびつなぎで

人類も褒めて伸ばそう、伸びぬなら? コンビニの前でタバコをくわえ

自分だけの言語できみは生きてゆくだんだん世界が合わなくなって

塚本の彼の夢枕に立ちてその表情は読み取りがたし

セックス(愛する事)が罪だなんてとシャルロットゲンズブールがフィルムで泣きぬ

後頭にただよふ蜂を箒にて払ひそれでも刺される夢だ

ネクタイがビシッと巻けて今日はもういい日にしないと申し訳ない

CR北斗の拳の「お前はもう死んでいる」との声が離れず

四振の妖刀並びあやかしに優劣あらばいささかたのし

才能という欠陥を褒められて欠陥だから少し苦しい

からからの鳥はいつかは会うために飛びつづけくちばしは割れても

シュルレアリスム作家の展示に挟まれて常識はかく遥かなる嶺(みね)

この優しさ言葉にせねば非在して真実すれすれまで来て離れ

どきどきと僕のトマトがあたたまり「やめなよ」という僕の声聞く

きみのヴァル/ネラビリティの/せいである/切るぼくの悪/切れるきみ、悪/

かわいくて政治リツイが痛いきみ、そうやってわれは避けられいるか

レトロとは不便のことで、ぼくたちはゆっくりゆっくりレトロな愛で

ホモソーシャルな飲み会にいてどこまでか乗り切れてたかヘテロのわれは

キャバクラでは建前は剥がれないんだとおっしゃる、なるほど(知ったことかよ

朝鳥だ、家の外には幾十の錆びたるドアの開閉しきり

おそらくはそんなにうまくはいってないだろうけど強がりに付き合う

7つしか正解のない二枚の絵、サンジャヤのごとき深き疑い

界隈にあらわる妖怪「これいいな」お初の方はお見知り置きを

「芸術は飾りではなく武器なのだ」っておれの机の壁に貼るなよ

妻の名を祈りの言葉にしていると2件目で聞く、よし受けて立つ

何回の奇跡できみは人類の積み重ねたる見地を捨てる

今はもう動かぬ時計おじいさん亡きあと一応修理に出しぬ

一瞬のちエピタフになるかもしれぬタイムラインはもう止まざりき

この蔵に灯(ひ)を入れるまで闇がいて跋扈しおるもいま壺の影

会うたびにきみは疑問を持っていて「質問1」から始まる時間

カニバリズム、カニをバリバリするような想像をしたきみの顔だが

極めるということは特化することで特化とはつまりdeformである

愛を説く教えが公認されるまでの三百年の殉(したが)いを思う

葛飾応為はレンブラントの明暗を思わせてたぶん勝気なるひと

森の中で木を隠すべく火の中でマッチを擦って見ゆるまぼろし

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