2017年6月16日金曜日

2015年05月の77首と、パロディ短歌6首。

アーチドアに閉じ込めたるか君のいう崇拝してはならぬ神様

しら鳥のすっくり立つと眺めれば朝日を受けて白いビニール

始まりを終わりとともに迎えおりさよならだけだ、もう人生は

こどもひとり手をあげている高架下の横断歩道、おとなはずるい

与えても受けても人は渇くなり朝からコーラ飲み干すお前

天空と水田に月、お互いに孤独にありて寂しくはなし

「そのこころ熱く燃えればああまるでひたくれなるの」「なるの」じゃねえよ

ライラックという名前のカラーパターンのデスクトップは配色昏(くら)し

人を拒むことで苦しむ罰よりも苦しめている罪なお痛し

孤独とのながい対話をするための小説、ゆたかでさびしい時間

人生は愛のぬかるみ君と行くウーラガ、ドゥーラガ、どこまで続く

明日の朝が来ぬかもしれぬ就寝の悲しいが死はかく眠くあれ

ファミレスの塔看板の消えている明け方、街が青色である

漠然とたぶんチャンスがありそうな人にはつらい月曜の来る

思念などアメーバ状にひろがってうすくちぎれて、みんなさよなら

愛情が貴重なことを知っていてキバ持つ犬はキバを使わず

果物に喩えるつもりなどはなくこの空を呼ぶオレンジ色の

休み明けの気持ちが明るかったのであけおめメールを出したかりしが

真っ青の下に雪嶺、近くても人の苦悩はわからずじまい

ひなたへの道がここにもあるけれど行かないんだろうなあこの今も

闇が産む君の神様、現在はたとえばエキア=ドイモ神かも

電動の自転車はやがてだんだんとペダルが重くなる恐怖譚

頭蓋から大きな猫が車の下で座って寝おり、車はやめる

昼前の数分尺のローカルのニュースでわれの焼死を報(しら)す

味覚からたしかに今を疑ってぶどうを酸っぱいものとして見る

少年よ空想に足をつまづかせひとりで帰る下校の羨(とも)し

過去未来の在(あ)らぬお前の鳴き声にうんうんうなづいては離れざる

ある未来おそらく虫に充ち満ちて自然を恨みヒトもまだ在り

罰でない死があるならば閾値をどこに合わせて思うあんにゃろー

有名の使命あらねばこの生はほぼ無害にて酔い眠りゆく

考えるあたまあとから引きずられタコはあしから未来へすすむ

生臭い霊長類がぐるぐると都心を離れて夜を転がる

希望の語を翻訳アプリで順に聞く今も誰かが秘めたる音か

在ったとは今はどこにも無いなので過去とはつまり百万の嘘

希望の意味込められているものたちの前向きにして到達できぬ

なんとなく会うのが億劫なることがいまなんとなくうすら寒かる

ペン入れで表情明るくするように君に補正を加えてわれは

本当のことが知りたい知りたくない綺麗といえぬべき茜空

愚かなるエヴァンジェリストは行く先で救うべき人を怒らせて去る

愛情と思っていしがこの豚の死後のため大事に育てらる

眠い子が父待つようにだが父は子の寝たあとを音たてぬように

甘えたいけど逃げていく飼鳥の生おおかたは思わない通り

護岸工事の名目でここも追い出され猫の墓など置いたまま去る

ひるさがりガソリンスタンド白亜にて高屋根の巣にツバメ一線

明け方に見る半月は下弦にて明るい方へ一矢報いる

感情の生活はアニメにて過ごしその他はまるでいちまいの板

ズボラなる塩ソムリエは世界中の塩を味わいしょっぱいと言う

中華街なんだからもう言っちゃいなまだ生きててもいいと思った

この世界を言葉で触れる君といて舌で知りたきわれひた隠す

連打してこそテロリズム、攻撃の対象に迷うあいだに正午

ぶらんこの周期はいつも少しずつ君が先ゆく日常でいい

どこまでも行けぬ夕方、帰ろうか迷う路地にてシチューの匂い

不意打ちのチョップを受けてその時に確かにひとつふっきれたもの

援助とは優しさと善に満ちている侵略の謂(いい)目を細め笑(え)む

何もないところで躓(つまづ)き過ぎてから、老いってなんだ、振り向くことさ

ポケットに行進の音たてているタブレットひかりなくとも白し

年寄りを年寄りの場所に送り込み若者は行け、年の寄るまで

沈黙に雷雨含めばわれも言わずメンタル豆腐に醤油落としつ

光の波に上下しながらほうけ虫意味なきような生には見える

目の前と同じ高さに咲くムクゲ、食うか食われるかにはあらねど

一刺しでこれ終わらせて改めて同じようにてやや違う生へ

娘ひとつ自転車で坂を下ってく、姿勢を変えず流れてゆけり

間違えてからもずいぶん進みたり戻れねばこの間違いを行く

その脚はきれいであるが本当は隠したいところが惹いている

大通りの両端に男子女子分かれ歩くのを見る、見る方が照れる

霧雨が宅配便の兄ちゃんを少しく楽しそうに走らす

慈(いつく)しめば限りなくかがやくほどの不思議をもちていのちとなせり

道もひろくきれいになった町を走るきれいの前の思い出は消え


 ある人と、カレー短歌
カレー食う過去も未来も朝夜も銀河も匙ですくっては食う

初夏なのでたぶんいつかは嫁になる君と食べてもいい茄子カレー

道のような男の作るカレー鍋吹き出る汗のひたい、どこまで

隠し味隠し切られている恐怖、色、香り、味すべてよけれど

しんじつはだいたいダジャレ中村がCMで弾くショパンのワルツ

駄洒落なる中村誰じゃ、ジャガイモの少しパサつくココイチカレー

調べてはならないカレースパイスで調合できる惚れ薬レシピ

木を隠すには森の中あーんとか言いながらわれを試したる匙

迷い込んだカレーの森にもがきつつふと思う、ハヤシライスは林


  パロディ短歌
日本脱出したし皇帝ペンギンもケープペンギンもヒゲペンギンも

10ルピー、5ルピー、2ルピー、1ルピー、目減りしていく我のルピー

二日酔いの無念極まる僕のためもっと電車よゆっくり走れ

ほんとうにおれのもんかよ冷蔵庫の卵置き場で溶けたアイスは

「嫁さんになれよ」だなんて缶チューハイ二本で自分に酔ってもいいの

馬を洗はば馬のたましひ冱ゆるまで人戀はば馬あやむるこころ

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