2018年8月25日土曜日

2016年11月自選。

自選。

味噌汁のなかに寄り添うなめこらの無情にもわれは撹拌(かくはん)させる

神はもう語りえないと言っちゃって遠い第四ラテラノ公会議

湿度100%の海にいるごとく雨霧らう町わが嫌う町

デカルトは動物と人をくっきりと分けりエコノミックアニマルが読む

生き物が生き物を食うシンプルな事実のゆえにかくまでうまし

ピュアなこととピュアなよそおいくらいかなこの詩のどこか届かぬ差異の

ていねいにふたりの書類を書きましょう筆箱の、まだ午前のペンで

レイヤから自由であったアッシジの彼なら好きと鳥たちも言う

酒の力を借りて今宵もぶ厚かるレヴィストロースに噛みついている

虚無の奥にかすかに匂う権力ののぞみ、ひたいにシャワー当ていて

何度でもおれは信じる、自分さえ裏切りながら意味持つ生を

風が俺を避けて行くので無風なる街である、やや役に立ちたし

律令制の役職のはるか名残りにて衛門(えもん)と名乗る猫型ロボット

思想いな詩想に肥えているだけの言葉じゃきみに届かぬわいやい

いつかなくなる日本のためにつまらない歌のつまらなさを遺しおり

電車には幼子びーびー泣いていてその右手にはエノコロ揺るる

外はもうどんどんひゃらら、妹は浴衣のことで母と言い合う

この匂いを逃したらもう会えないと必死に必死に走る捨て犬

編集もされないままで山奥で雨晒されて残っています

制服を着た少女にて両ひざにかさぶたあらばうつくしからん

面構えがよくなったきみ、実存は本質にもう先立ちたくない

冷蔵庫にもたれてしゃがむキッチンのここできみだけ頑張っていた

冗談を言いあう残り一週間ゆっくり話さないさようなら

ポロロッカにてさかのぼるぼくたちの生は叛逆ポロロロロッカ

また国が敗れるとしてその冬に炬燵があれば少しはさびし

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