2018年8月18日土曜日

2016年11月の107首。川柳10句。付句祭り含む。

いま死なばこんな途中と思うのでそういう終わりも有りとして寝る

太陽は北フランスも赤色かクロード・モネの印象なども

赤紐は50メートル、昨年の黄色を外してその場所に縫う

味噌汁のなかに寄り添うなめこらの無情にもわれは撹拌(かくはん)させる

11月の雨は冷たく土の中で溺れる蚯蚓(みみず)の彼女をおもう

新しい職場の最初の飲み会で詩が趣味と言う新人を避ける

子の愛は老いた親には薄くとも親はよろこぶ子はややさびし

神はもう語りえないと言っちゃって遠い第四ラテラノ公会議

未来とはきっと今よりすばらしい今を生きててぼくら嬉しい

湿度100%の海にいるごとく雨霧らう町わが嫌う町

昼前に起きてゆっくり歯を磨くパスタのたらこまみれの前に

そり返るハゼの箸立てトコトコとおじぎが返事ハゼもばんざい

肯定も否定にもそれは反論し覚めつつもついにいとしく祖国

ドス黒いドス虹色(にじいろ)い工場の川、古き良き昭和が臭う

アニメ好きの友人が言うアニメキャラはいつか神社に住む神となる

気立てってなんなんだよと反抗しあの子が浮かぶ分かってはいて

デカルトは動物と人をくっきりと分けりエコノミックアニマルが読む

生き物が生き物を食うシンプルな事実のゆえにかくまでうまし

なさけない本音がもれた帰り道ひとの未来はかがやいたまま

ピュアなこととピュアなよそおいくらいかなこの詩のどこか届かぬ差異の

ネットワークカメラが映す丸まった悲しい背中は私じゃないよ

年下の特権がもう嫌で嫌で膝枕とか睨んで避けて

テンプラにしようここでのテンプラはきみの美味しいワインの種類

ていねいにふたりの書類を書きましょう筆箱の、まだ午前のペンで

銀色の空の遠くにまで雲が、ああまた終わりは待ってくれなく

レイヤから自由であったアッシジの彼なら好きと鳥たちも言う

捨てていいものなんだろうその人が一番のものを捨てたるのちは

英語なら三句目だけでtime to say good bye言えるんだけど日本語なので

酒の力を借りて今宵もぶ厚かるレヴィストロースに噛みついている

人間に許されうるか一週間カレーばかりの祭りをしても

虚無の奥にかすかに匂う権力ののぞみ、ひたいにシャワー当ていて

太陽が頭上じゃなくて太陽に頭を向けて立つこの昼間

婉曲に運動の話ふるだけで確実に毛羽立ちゆくあなた

何度でもおれは信じる、自分さえ裏切りながら意味持つ生を

風が俺を避けて行くので無風なる街である、やや役に立ちたし

律令制の役職のはるか名残りにて衛門(えもん)と名乗る猫型ロボット

思想いな詩想に肥えているだけの言葉じゃきみに届かぬわいやい

鼻出して泣いているのに求められ今はそういうことがつらくて

卒業後も先生然と振る舞って慕われざりし"カトキチ"さびし

たらればを何百回も考えて今回がたぶん一番近い

いつかなくなる日本のためにつまらない歌のつまらなさを遺しおり

星があって夜なんだからぼくたちはたがいの静寂をいだきあう

電車には幼子びーびー泣いていてその右手にはエノコロ揺るる

彼女から彼女だけの名で呼ばれいる友を見ている目は合わさずに

爆ぜてない銀杏噛んで黄濁の思春期過ぎの純情を食う

さびしさもいつかは乾く、その時の乾いた顔はもうしかたない

真髄は寄り添うこととこうやって教えてくれる小鳥のくせに

そろそろだぼくらに幸(さち)が舞い降りる順序は最初はぼくからでいい?

外はもうどんどんひゃらら、妹は浴衣のことで母と言い合う

この匂いを逃したらもう会えないと必死に必死に走る捨て犬

忘れものしたロケットを追いかけてロケットが飛ぶ試験は明日

永遠は手のとどかない、学寮の踊り場でした口論なども

久しぶりに会うのだとしていきなりでおかしくないか挙動、今日どう?

編集もされないままで山奥で雨晒されて残っています

痛みにて意思を感じる生き物よ馬鞭(ばべん)の跳ねるたび加速して

制服を着た少女にて両ひざにかさぶたあらばうつくしからん

そう清く正しい男女交際の清く正しい性欲なんだ

人格は自戒しうるか、アニメでは魔法少女が宇宙書き換え

金曜の夜新宿を通り抜けさみしいお前の町へ消えゆく

言い方がきつくなるのは年齢と思うならビブラートに包も〜〜〜

旅先のぼくは軽々たのしくて絵葉書えらぶ飾る場所なく

本当に一億五千万キロの熱か、ふたりを薄着にさせて

経験が物差しでなくて年輪に広がることをおっさんと呼ぶ

わたしたちキックスタートしなきゃと女性シンガーが歌うラジオで

面構えがよくなったきみ、実存は本質にもう先立ちたくない

美人さんときみが言うときほんのりと批評のま、いや、やめておこう

テーブルに冷めたおにぎりちむちむとさびしいようでしあわせな夜

木石にぼくはひとつの悩みなど話しているよ、動かぬ木石

形状であろうがしかしよくもまあこれを竹とんぼと名づけたる

したいことを数えることはしていない出来ないことを認めるようで

サブ垢をきみのひたいに読み取って恥ずかしそうな顔ごとぱちり

くびすじの二次元コードなでながら仮想空間のあなたも愛す

地の鳥もハードモードか残機なく武器もないのに飛ばねばならぬ

脳を他の存在とする倫理観があるらむ略するなら、脳他倫

ミュシャの模写も買わされたけど好きだから彼女の真実なんて、別に

家の外でマナーモードの振動のような鳴き声、休みも終わる

人に会うと生きゆくことがなんとなく肯定されて俯いて笑む

冷蔵庫にもたれてしゃがむキッチンのここできみだけ頑張っていた

マフラーが君の髪すこし持ち上げる時間のことを冬と呼ぶらし

現代短歌の百科全書を作るとき凡庸派などにいようよ君と

冗談を言いあう残り一週間ゆっくり話さないさようなら

生きるから孤独とう滑稽にうなだれてぶくぶく笑う何が沸くのか

ああそうだ歌人は魔術師だったのだ扶(たす)くるときも毀(こぼ)てるときも

一年に一度きらめくことあれば差し引き0でしょう、Frimaire(フリメール)

起きてから爽やかな朝とテンションのギャップがひどいので休みます

次男とはかつてはスペアなりしゆえ歩いたりせずステップに凝る

永遠に悪魔に頭をかじられて忘恩を描き震えるダンテ

みんなまだ鳴きいるなかで先に逝く蝉は目を閉づ、(まぶたはないか)

ごーしちご、しちしちですよと説明すしちしちですかしちしちですね

赤い傘のなかであなたは水玉の影を不気味に貼られ微笑む

ポロロッカにてさかのぼるぼくたちの生は叛逆ポロロロロッカ

食べるのは男が女、食べられる女は男を食べる真夜中

また国が敗れるとしてその冬に炬燵があれば少しはさびし


#都こんぶを取り出す手つき(12首)
幸福論結論出ずに終わる頃都こんぶを取り出す手つき

『モモ』を読む通勤少女がかばんから都こんぶを取り出す手つき

叔父さんてドイツで指揮者してたんだ都こんぶを取り出す手つき

腹筋が残り50のわが上で都こんぶを取り出す手つき

ぐずりだす弟に姉も泣きたくて都こんぶを取り出す手つき

「またお前と戦うことになるとはな」都こんぶを取り出す手つき

ほんとうにうまいの? カルピスサワーから都こんぶを取り出す手つき

じいちゃんの趣味のフィルムも捨てましょう都こんぶを取り出す手つき

雪山の遭難で出しにくそうに都こんぶを取り出す手つき

初デートでネタTシャツは賭けだよね都こんぶを取り出す手つき

子ども会ユウも好きなの選びなよ都こんぶを取り出す手つき

帝都とて入手できない俺の前に都こんぶを取り出す手つき


#あたりまえ短歌(2首)
味噌ラーメンをひとくち口に含むれば味噌ラーメンの味がするなり

あなたへの好意をついに言いきって告白したるかのように見ゆ


パピプペポの川柳
寒い方がパピプペポめくパピプペポ

爆発が五回もくるぞパピプペポ

みどりごがしゃべる前日パピプペポ

ピコ太郎の輪唱の夢パピプペポ

えぐいのかなまぐさいのかパピプペポ

ズレてても指摘されずにパピプペポ

年賀状ソフトも付けてパピプペポ

カレーうどんに勝った瞬間パピプペポ

ありきたりのアドバイスしてパピプペポ

オータムリーブス踏みて二人はパピプペポ

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