2017年10月9日月曜日

2015年09月の60首とパロディ短歌2首。

キーホルダーに地球がひとつぶら下がり彼女の名前をひとつ思えり

ひょうきんなぼくは横断歩道にて両手をあげる、姉ちゃんが笑う

あたまごちーんごっこ続けてその次にひたい寄せれば神妙に待つ

宇宙論突き詰めてもうぼくたちは時間がとまっているかもしれ

気がつけばいつもの名物ばあさんもいつものままに老けてゆくなる

一匹だけ遅れてやってきた蝉の鳴いても鳴いてもオレだけらしい

半分は寝たら解決することでそのほかはもう多めに笑う

湯舟にて十匹の鳩と目が合えり十一匹目はもしかしておれ

権力を揶揄するときにどうしても揶揄ゆえにわが性癖の出づ

この夜の街灯やわらかく灯(とも)りちから尽きゆくごきぶりである

ばきばきにびしびしにそしてぺきぺきに割れたスマホで君が告ぐ愛

たたかいの相手は悪いほうがいい不正を憎むオレたちなれば

世界から取り残されるようにして早めに眠る、練習のごと

ビル風にあおられながらキアゲハのつよさのような羽ばたきをみる

漕ぎ出でな漕ぎ出でなとて一日の終わりにはたぶん熟田津が待つ

すべからく思想一周するまでに断言したる過去恥ずるべし

誰にでも長所はあると、惜しまれず去りたる人の次を思いつ

吠え声がしずかにひびく雨の夜、威嚇とはなかば負傷の覚悟

未来っぽい過去のデザインああこれは子供がなりたかった大人だ

止まぬ雨はないことは知っているけれど今ずぶぬれのおれにそれ言う?

ジャンプして彼岸に着地できぬまま落下する見ゆ、遊泳に似て

その犬はきれいに円を描きつつ首輪をつなぐ杭を逃げおり

音楽を聴くよりも耳を塞ぐため両側に垂らす白き銅線

断ち切れば痛みはどこだ、鋭利なる刃(は)がまるで赤き血をしたたらす

生き物に黙って家を出でにけり見届けて消えてゆく死者のごと

ピンチはチャンスチャンスはピンチピチチャプチャプ蛇の目でお迎え来たるのは誰

わが前を野良猫がすこし先導し、人の敷地に行けばさよなら

姪っ子に箴言めいた話して途中から聴いちゃいねえ夢みる

耳の後ろを赤くしてなんと少女とは女より凶暴なるけもの

ゆっくりと生きてぽろぽろこぼれゆく再来世(さらいせ)あたりにみつかればいい

早朝の父子の打撃練習の父子は去りぬ広場静寂

曼珠沙華の歌をいくほど詠んだろう乾いたわれと土に咲く花

救いなどいらぬといえる若さなくやや多めなるカレーをすくう

個室にてトランクスごとずり下ろし汗でめくれているうちは夏

人間界では人間の顔せねばならぬ通勤の朝聴くノクターン

公園の三角屋根のベンチにて雨を見ている永遠である

一日の間に冷えていく風に身をさらしいつ身は冷えていく

戦時中もぼくらは日々の、下手したら相聞なんか書いているんだ

本当はわかっているよなんか妙な敗北感と言って笑って

犯罪者になったあいつはもしかして共食いモルフ、いや感傷だ

中身などアメ玉ふたつほどあればよいとも思うわれのうつわは

コミカルなインベイダーが襲い来て隠れてるだけの怖い夢みる

継承をあきらめた父と飲む酒の心であやまりながら、生意気

NIMBYでないとばかりに正義とは後頭部から声出す感じ

僕と君はたとえば青い、ヤシの木の描かれたシャツで遠くへ行こう

ひとすくいの氷にウイスキーをかけチョコをかじって夜は液へと

びっくりするほど遠い未来で会う君と小さいことで今をいさかう

日常をひきちぎるようにわれだけが感じた別れ、きみよバイなら

自分への関心を待ちおしゃべりの止むのを待って見上げいる犬

ひるがえしOKサインをうつくしく重ねて赤き曼珠沙華咲く

その時は死にたくないと言うだろうさんざん嘆いて嘘はなけれど

作業着のままがっついて食う飯の、余生もまたは作業のひとつ

どこの秋の赤き野点(のだて)の傘のしたあかい影した顔を並べた

なんちゃってアールデコ的絵の象が葡萄をつかむ、食うかなぶどう

鳥よ鳥もいのちささげて悔いのなき瞬間のため二度生まれたる

一瞥に結論ありて、これはもう宇宙をくらくただよえる岩

夕焼けが反射してまるで終わりゆく街に見えおりそんなはずなく

端末でみるおっぱいとベランダからの下着の違いと言えば分か、らん?

ポンチョ着て雨がうれしい少女なり、音楽のようないのちの時期よ

血飛沫の代わりに綿(わた)がはらわたからこぼれて、これって、オレって、もしや


#パロディ短歌
この味がいいねと君が言ったからそれからずっとサラダ記念日  

問十三 前問の解を用いつつまだ赤くない秋を見つけよ

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