先日、書店で短歌雑誌をいくつかぱらぱらとめくった。目次を開いて、ふむふむこの人達が書いているのか、と、それから、文字通り、ぱらぱらとめくって、題やら短歌やら文章を目に取らせる。どの界隈もそうなので、驚くにはあたらないが、高齢化している。
正岡子規がホトトギスを創刊して、俳句運動を興し、歌よみに与ふる書を書いたのは30歳だ。子規は34で没したので、晩年といえば晩年だが、高齢ではなかった。
そういえば、短歌雑誌は、昔からの印象として、よく名前や作品を知らない、おそらく高名で高齢な方が、身辺雑記みたいな短歌連作を載せていて、「手紙でやれ」と思っていたことを懐かしく思い出す。今なら、自分のHPやブログでやれ、と思う若者もいるかもしれない。(あるいは、そんな”若者”は、もういないかもしれない)
福島泰樹が、「述志とは〜」みたいな短歌を載せていて、なんかふふっとしちゃった。
自選。
デジタル化してゆくぼくらあいまいな気持ちは消去しますか?(y/n)
ゆきやなぎの咲く石段にきみがいてシーン的には恋の場面だ
この人よりは先に死ねない人を数え幹の小枝にふとさくらばな
ユトリロの白を頭に入れようと次へ進んでまた戻るなり
焼き固めていない器を土に置きもう一度土に還るか尋ぬ
三千五百万の同胞と呼びかける明治後期の志賀の書を読む
きみのこと隣の部屋で祈りいて隣からくしゃみ聞こえるゆうべ
旅先のホテルのテレビの天気予報のいつもと違う地形の曇り
下弦過ぎて細くなりゆく月のした居場所がなくて飛びゆくからす
わが知らぬ集計データの分析でぼくはあなたのことが好きです
みな人の好きなものからはなれゆく理由を相手に見出してから
思想書のまとめて読みし時期も過ぎ日に一頁めくりて読みつ
二百年もすれば全部の入れ替わる人類よきみの悩みはなにか
息が止まるのはいいけれど止めるのはこわいと思う止められそうで
ぼくたちは快感しつつさぐりあう脊椎動物になった理由を(「快感」の題をみて)
終わりそうな関係だからやさしくて引力のもうとどかぬところ
死神と神がタバコを吸いながら戦後の命の高さをぼやく
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