2018年5月12日土曜日

2016年04月の61首。パロディ短歌2首。

風景は風のある景、君去りしのちのさびしき砂浜がある

デジタル化してゆくぼくらあいまいな気持ちは消去しますか?(y/n)

ゆきやなぎの咲く石段にきみがいてシーン的には恋の場面だ

この人よりは先に死ねない人を数え幹の小枝にふとさくらばな

ユトリロの白を頭に入れようと次へ進んでまた戻るなり

焼き固めていない器を土に置きもう一度土に還るか尋ぬ

現世の褒美のような桜ふり生前死後のあわいにありぬ

丸々とかわいいきみが痩せてゆく、彼に疲れて美しくなる

三千五百万の同胞と呼びかける明治後期の志賀の書を読む

ガラス玉のようにかがやくまなざしでデビットボウイは人界にいた

たとえば、暁鐘(ぎょうしょう)を乱打する生をおもう、あるいはそれを聞く生

きみのこと隣の部屋で祈りいて隣からくしゃみ聞こえるゆうべ

ルネサンス以降も描かれるイコン、かく拒まれし人間の味

ゾンビとは止まった時間のことなのにどうしてぼくは逃げているのか

イタリア人ばかり描いて文芸の復興は成る、クールイタリー

昨日まで跳びはねていて今日はもう息も荒くて同じいのちが

君といる時のポアンカレプロットが一定なので好きとは言える

おっさんが窓から外を眺めいてただそれだけでキモい、世界よ

時流という真意の見えぬ体積に押されていれば押しつつもある

旅先のホテルのテレビの天気予報のいつもと違う地形の曇り

下弦過ぎて細くなりゆく月のした居場所がなくて飛びゆくからす

わが知らぬ集計データの分析でぼくはあなたのことが好きです

天才はたとえば早さ、夭逝の歌手の歌詞いまさらにおどろく

春の午後だから光が降るように桜がかがやいてまぶしくて

人生は読み終わらない本なのでどんでん返しになるかはたまた

通過するこの特急に何度ぼくは死んで汚して引き上げられき

みな人の好きなものからはなれゆく理由を相手に見出してから

短詩系文学思うより早くAIに負け勝ち負けに醒(さ)む

目も耳も口であるのだ音楽と思想を食べて人は生きれば

このおばちゃんトルクあるなと思わせて電動である、さいばねて来す

思想書のまとめて読みし時期も過ぎ日に一頁めくりて読みつ

この語句の微妙に突き詰められてない感じはあれだ斉藤和義

妄想に勝ちぬいたという妄想が、その後美味しくいただきました

二百年もすれば全部の入れ替わる人類よきみの悩みはなにか

子供の頃父ちゃんと食べた夜鳴きそばのもやしの苦みが父と食べたし

訊かれてもない防災の豆知識を神妙に放つよかれ世界よ

息が止まるのはいいけれど止めるのはこわいと思う止められそうで

深淵をのぞき込まないきみがいて深淵はついに手を出さざりき

弁当のしそおにぎりが濡れているそれを咥えて遅い花見は

道端にポピーぽぴぽぴ、こんな歌前にもたしか作ったっけか

ぼくたちは快感しつつさぐりあう脊椎動物になった理由を(「快感」の題をみて)

キティちゃんのラッピング電車に乗る人を全員ファンとみなして愉快 

災害に人の善意がいっちょかみしたい気持ちよおさえかねつも

脅威より悪意を感ずうつしよのquakeやrainあすのわがみに

濡れている藤とわたしに春の雨ひとつは慈悲でひとつは罰で

ほんとうに黒目が穴になることがあるさ、どうにもできないけれど

公園の向こうに杜(もり)のシルエット夏蝉のSEふさわしく

最低気温と最高気温の同じ日にここは真冬の南国に立つ

軍服のフィデルはおもう、いつか敵が見えなくなっていくさも見えぬ

ネクタイに蜘蛛連れてわれは通勤しわれ驚けば蜘蛛ぴょんと去る

「この曲なに?」「パッヘルベルの」「ヘルデルの」「ベルの」「パッヘルデルのベルノの?」

呼び継ぎの小さいが目立つ模様して一部になってしまうならいい

すこし跳ねて乙女が通話する横を別の乙女が一暼し過ぐ

建物の奥へ電線伝いつつネズ公が消ゆ、奥とは異界

とても怒るぼくに夜中に起こされて昼間は我慢してたのだろう

一生分の容量くらいなる脳の君が上書きされてゆくなり

輪廻など手慣れたものよ、人間の歩道を横切ったるダンゴムシ

終わりそうな関係だからやさしくて引力のもうとどかぬところ

欲望を遠ざけながら読んでいる万葉集は欲望の歌

ネットなどしたことないとツイートしバナナはお菓子に含まれざりき

死神と神がタバコを吸いながら戦後の命の高さをぼやく


#パロディ短歌

サラリーマンが歌よむ時に世の中の新しき歌多くて怒る

「暑いな」とひとりごつれば「暑いよ」とかぶせる奴のいるむし暑さ

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