2018年5月5日土曜日

2018年03月うたの日自作品31首。

「暖」
思想ひとつ暖まりゆく夜の二階、屋根を跳ねゆく春の生き物

「染」
太陽がひとつしかない場所だからきみも染まってしまう夕焼け

「耳」
この耳が一部始終を聞いていた別れたあとのぶひひぶふずび

「マーク」
分からないマークシートを適当に塗りつぶす時の力で抱(いだ)く

「列」
約束はまだまもられて列島にまぶされてゆく春のパウダー

「いろは」
ことのははかつて「いろ」からよみあげていまも「あい」からはじまるものを

「枚」
デスクトップにそんな私を貼るなんて奇跡の一枚あるんですけど

「せっかち」
ブリンカーがかちかち動くライフゲームせっかちなまでの増殖退(ひ)けば

「何」
サインカーブのように輪廻をくり返し何の理由でまた君と会う

「自由詠」
テレビ通話にしているけれど母親の耳ばかり見て話すやさしく

「ぶどう」
義母と飲むジュースのようにあまあまのワインというよりぶどう酒を飲む

「垂」
画面上から何かが垂れてくるようなゲームオーバーみたいな眠り

「蜂」
プログラムみたいな生を生きてらと菜の花畑を去りて一蜂

「24時間」
それがあと24時間だとしたら会いにはいかぬがどうぞ達者で

「雲」
文学の秘密が次の瞬間に出そうで出ない先生と雲

「亜麻色」
百発百中死ぬ身にあれば恥ずかしいことなどない!(ある)亜麻色にする

「忖度」
自然界になんの忖度されながらヒトぞろぞろと春をうごめく

「コップ」
目の前のコップの中の水だけが揺れてるシネマグラフのわたし

「デニム」
きょう街で君に似ている人がいてブログのタイトルには「春デニム」

「才」
最初から才能なんてないんだよそれから最近肉焼いてない

「欠」
せとものの白い欠片が埋まりたる空き地にいけばよく君がいた

「穴」
もうひとつの穴なんですよ、もうひとつの穴なんですか、しげしげとみる

「キッチン」
ネガティブなこころが今日もキッチンで美味しい味にしかしするのよ

「襟」
なにもない春なんですがきょうきみの襟のあたりにひかりがあって

「ほどく」
怒られてほどけて落ちたひも状のそれらをかき集めて戻りたり

「苗」
新しい知識がきみに入るとき若苗色のその好奇心

「私」
ふたたびに国家主義だな私心なきリーダーもまた推し進めゆく

「構」
時間で起きて外で何事かを動き時間が立てば帰る構造体

「船」
あるじ落ちて船は自由を手に入れたぷかぷか自由また会いたいな

「浸」
人類愛が前世紀より薄味の煮浸しはゆつくり食べませう

「4時」
不可逆の悲しい夢で目が覚めてせっかくなのでもう起きる4時

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