2018年7月28日土曜日

2016年07月の64首。

承諾を押さねば先に進めないわれ無き未来すなわちわが死

枯れそうで枯れない観葉植物よ聞いてくれオレのみどりの嫉妬

毒は愛、残さず食べて横になり手足が勝手にさよならをする

PSG音源で弔われゆくきみのデータが雲(cloud)とたなびく

朝ぼらけおぼろに明けてゆく脳の昨日のDL(ダウンロード)の途中

きみはひとりじゃないって言われAIがそう言うならばいよよスィアリアス

風がなく湿度も高くひょっとして時が止まったひとりのホーム

病みおれば判断も病みておろうゆえ嫌であろうがその逆にいよ

人間性を一度疑われておけば正しいことが軽くてよろし

ガソリンの甘い匂いを嗅ぎながら君の職場を遊びにきたり

ボーカロイド曲歌うとき人間は合成音の真似をするなり

住宅街の立ち飲みバーがカウンターごと食われたように店じまいせり

チキンラーメンの味が美味しくなるたびに酒のつまみにかじるには濃き

おっさんであるからわれは今君のサラッドデイズに目を逸らしおり

一日の始まる前の朝にいてスキップボタンはないのだろうか

旻天(びんてん)はまだ先だなあ、うまくいくはずない最後の夏の白雲

相聞のうまい男がおりました本人はそれを恥じていました

川底の茶碗のかけらが光りいて月夜の川をさびしく見おり

東名道といわれてぼくは空中を走る景色をずっと待ってた

歯を痛み今日は飲めぬがまたいつか、おお、「瀬を早み」みたいな感じ

捨て猫のかわいいドキュメンタリー観つ捨てた誰かの弱さを措いて

雑草は一挙に占めてみどりなりすべての席に後進は待つ

人間のどろどろの善意映しいて不穏と思えど止むを得ぬとも

オールオアナッシングだからナッシング、もうナッシングなし子先生

サングラスの男の席にサングラスの女が座る日常あやし

いまはまだ明るいけれど上弦の月が獲物を追いつめてゆく

人間の架空の森か深海か潜って還らぬままググるカス

脳内の悲しみを夢が捨てていく捨て場所はまだ開(あ)かざるまなこ

落花する始終になにか重大な忘れの生にいるかもしれぬ

増水して駆け抜ける川、生き物は愛別離苦の気ちがいとなり

男って料理よりエサで済むことがあるとか、彼をなぜ弁護する

ザザ降りの車道に割れるクラウンが収まるまでをいつまでも見る

嘘をつく人間といて、許すのか見放すのかは曖昧に笑む

封筒にぱんぱんに日々の想念を書きしが今はやすきツイート

波紋よりはやき四散のアメンボの親子にあらばすぐに分かるか

きみの詩を誰も読まなくなったときやっと自分の詩を詠めるとぞ

月明かりを頼りにのぼる階段の闇にあらねば一段も欠けず

こんにちは外は結構降ってますさようなら外はもう晴れました

只今は星の秩序に大月(だいげつ)が君臨をなす眩しかる夜

掌(て)に包む鳥からしたらそれほどにおまへを信じてやつてゐるのだ

変態がせつない願い持ちて生く人に決して語れぬゆえに

あごひげを生やしたような新車からあごひげのない男出てくる

ごきぶりもせみもみみずも舗道にて力尽きつつ土を思えり

カートゥーンアニメな動き想起してきみが「スマホ歩き」と言うので

お隣りの独裁国家を差し置いて自国を忌みし戦後の論理

若者は信じることに見離され前線と思いおののいていた

人の死はニュースになって生きているものばかりそれを痛そうに観る

真理にも幸福からも拒まれて世界は一見無茶苦茶である

末期癌の妹の治癒を祈りたるブログを読みておれは透明

政治してゲームして次は何をして当分たぶんあの世ならねば

大きなる胸のみ反応する父に娘も妻もスルーの余生

欲望を連結したる陸蒸気(おかじょうき)の白い煙のことか幸福

いい男を釣りたいと意図するような自分のつくりを厭う今朝なる

愚かさへの愚弄を許した瞬間に愚かさはうつむきつつニヤリ

きみからの鳥跡(てがみ)をながく待っている覚悟のコインときどき貯めて

聖賢に酔いてからだは弛緩してこのまま液化して海に行く

老年の居場所は空閑ならざれば知の大なるに徘徊やまず

首がポン、と飛びし絵巻の改新を原風景のように眺むる

ジュリリジュリ ジュリリリジュルリ ジュリリジュリ ジュルジュルジュリリ ジュリリ リリリリ(よのなかのほろびるときはこずえからみていてあげるかわいいままで)
(シマエナガ)

結婚の予定を先に聞いたので手も握らぬが靡けこの街

ずれている蓋を覗くと深淵が自分の顔ととても似ていた

たまきはる命がここで終わるときもともとなかった未来消えゆく

かわいくて面倒くさくてかなしいよいのちがいのちと生きてゆくれば

溶けそうな夏の地球を舐めている宇宙温暖化の対策に
(サーティーワンアイス)

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